使える地政学 日本の大問題を読み解く (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022736659

作品紹介・あらすじ

【歴史地理/歴史総記】複雑化する国際情勢の中でますます重視される地政学。戦略的思考を養う上で欠かせないのが、歴史理解を加えた地理の読み方だ。本書は地政学の入門書として、基本となる考え方とアプローチを情報のプロが伝授。ビジネスシーンにも役立つ!

感想・レビュー・書評

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  • われわれの記憶に残る人類の歴史がはじまってから、これでほぼ千年になる。が、この間に、地球上の重要な地形はほとんど変化していない。(29ページ)

  •  根源的であるがゆえに幅広い実践知識で「文明」を解体統御し続ける優ちゃんの膨大な出版物の中から、いまとりあえず挙げるとしたら、これと「資本主義の極意」かなあ。

  • 今年(2016)になって興味を持って読書をするテーマが一つ増えましたが、それは「地政学」です。私のアンテナが立ったせいもあるかもしれませんが、地政学、というフレーズの入った本が目につくにようなりました。

    その中でも、この本の著者である、佐藤氏が解説した本は私にはわかりやすいです。昔から地図帳を見るのが好きだった私は、せっかく頭に入った世界地図を何等かの形で生かせればいいなと、高校生くらいから思っていましたが、ようやくその道筋が見えてきた気がします。

    この本では、日本のみならず、ロシア・中国・EUが今後どうなっていくかを予想しています。この数十年で、多くの国が独立・分裂して、世界地図が変わってきました。これが各々の国の将来をどのように影響するのか、地政学的な考え方が大事にになってくるのかもしれませんね。

    以下は気になったポイントです。

    ・アゼルバイジャンと、アルメニアが対立する原因は、アゼルバイジャン共和国の中にある自治州(ナゴルノ・カラバフ)をめぐるもの。当地の人口の7割はアルメニア人であるが、アルメニアの飛び地ではないので管轄権はない(p19)

    ・国家の振舞は、地理的諸条件に制約され、イデオロギーに先行する。つまり、地理的諸条件にもどづいて導かれた選択肢の中から、国家は最も利益にかなう行動を選ぶ(p29)

    ・地政学の思考に基づいて民族の物語を引きはがせば、紛争の構図が見えてくる。民族問題は、たいていの場合、民族浄化か暴力によって解決される(p39)

    ・ムハンマドの死後四代のカリフに正統性を認めたのが、スンナ派、第四代のカリフのアリーの子孫に正統性を認めたのが、シーア派。ISは、イスラム国を名乗った同じ日に、カリフを名乗っている。これは全世界のイスラム教徒にISに対する忠誠を求めている(p49)

    ・ISが発生した原因は、第一次世界大戦の、サイクス・ピコ協定である。イギリス、フランス、ロシアの三か国が、オスマン帝国の領土分割を取り決めた秘密協定。ソ連が崩壊した時点で、賞味期限切れとなった(p51)

    ・シリアやイラクは、3つの小国家に分裂するだろう、どの小国家も覇権的な力を持つことができず、分裂したグループ間同士の武力紛争は続くことになる(p68)

    ・大企業がタックスヘブンを利用して税金を払わなくなると、そのツケは、国民の中間層が払う事になる。税金は源泉されるので、租税回避しようがない。(p95)

    ・沖縄の最初の切り捨てとは、1945年3月26日に始まる沖縄戦、12万人の沖縄県出身者の命が失われた、二回目の切り捨てが、1945年7月、日本の領土から沖縄放棄の方針が示された、1947年9月、昭和天皇が宮内庁を通じて、米軍による軍事継続を希望したこと(p128)

    ・3回の強制として、1)1872年の琉球処分、1879年沖縄県設置、2)沖縄戦における民間人の集団自決、3)戦後、米軍統治下で行われた、民間人が所有する土地の接収、がある(p131)

    ・1954年、日本本土に駐留していた、キャンプ富士・キャンプ岐阜の米海兵隊が沖縄へ移転した。こうして在日米軍専用施設の74%が沖縄に集中した(p132)

    ・在沖縄米軍の兵力のうち、最大が海兵隊(1.5万人)、空軍は6千人程度、海軍3千人、陸軍1.5千人程度。上陸作戦を行うための揚陸艦は、佐世保に配備されている(p146)

    ・UKは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4地域で構成されている。それぞれ独自の議会を持っているが、その権限は地域ごとに異なる(p165)

    ・英国がEUに残っていれば、スコットランドの加盟申請を拒否できるが、離脱すれば阻止する手段がなくなる(p185)

    ・地政学とは、国家や民族の特質を、地理・空間的条件から説明しようとする学問である(p199)
    ・複数のシナリオを想定することは、物事を相対的に考えることになるから、自己中心的な思考の罠から逃れられる(p214)

    2016年10月10日作成

  • EUの話、勉強になりました。ちょうどイギリスがEU離脱を投票で決める…という時に、その報道の言ってることはわかるんだけど、それまでの背景を全く知らなかったから理解出来ない部分が多くて。沖縄の話は最近興味もって本読んだりしていたおかげ?で、知ってた事柄が繋がるように理解を深められたかなと。

  • 中東問題についての、欧州の思惑を含めた解説を読みたい、というのが、氏の著書を買い続けるモチベーションかな。

    日本のメディアの、中東に関する報道は事実を伝えるだけで精一杯、という感じがある。

  • 地政学がブームと言ってよい状況であるが、
    皆さん納得感のある説明で分かりやすい。
    読後、その先を読めるかとなると、
    なかなか難しいものがある。

  • 「何千年も変わっていない」地形のような要素を前提に、「政治の動き」を考えるというのが“地政学”と呼ばれるモノである。ここで言う「政治の動き」には、「“歴史”が造られて行く際に作用する何か」というようなモノが色濃く入り込んで行くことになる。それは「紛争の種」、「文化」というようなモノということになる。最近は、それらに「情報インフラの発達がもたらす、質的な変化」というようなことも含まれるのかもしれない。
    本書では、1980年代後半から1990年代初頭に旧ソ連諸国や諸地域の行方を考える中、各地の地理と歴史を慮る“地政学的”な考え方を見出したとする筆者が、最近の様々な問題を考えている内容が綴られている。
    こういう本のような「少しだけ違う角度」という考え方…或いは非常に大切であると思う。一読の価値は高い…

  • ロシア、中東、パナマ文書、アラブの春、沖縄の問題、スコットランド、英国のEU離脱(この本自体は離脱決定の前)、ISなど、なんとなくわかっていた問題が、とてもよくわかりました。
    佐藤優さんて怖そうな顔しているけど、とてもわかりやすく説明してくださるのです。

    ここで浮上したのが今シー・パワーでもって暴れているように私にはみえる中国、
    佐藤優さんに言わせると「近未来において、中国の海洋への膨張が止まる日が訪れるかもしれない」。

    「中央アジアと中国・新疆ウイグル自治区をまたぐ形で、『第二イスラム国』が誕生したときが、その日だ。」
    佐藤優さんは昨年半ばからこの「第二イスラム国」誕生の可能性を指摘してきたそうです。

    中国は基本的にランドパワーだと言えるのだから、第二イスラム国あるいはそれと一体化した武装勢力が蜂起すれば、海洋進出を切り捨ててでも、大陸における安全保障を優先させるだろうと考えられる、と。
    そうすると日本に対しての尖閣諸島や南西諸島への問題がおさまるということではないかと、それはいいのですが、第二イスラム国というのは恐ろしいです。

  • 2016年4月執筆の本。地政学の考え方を説いているが、著者の有り余る知識が整理されずに盛り込まれていて、分かりにくかった。

    冒頭の、トランスコーカサス地域のアゼルバイジャン、アルメニアの紛争の解説は、馴染みがない地域だけに興味深かった。

  • 使える地政学は結局は自分で考えろと。但しそこにはプレ・モダン・ポストといった流れがある。グローバライゼーションとローカライゼーションは一体として起こる、グローカル

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著者プロフィール

作家・元外務省主任分析官。1960年東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア連邦日本国大使館勤務等を経て、本省国際情報局分析第一課主任分析官として、対露外交の最前線で活躍。2002年背任と偽計業務妨害罪容疑で東京地検特捜部に逮捕され、512日間勾留される。09年、最高裁で上告棄却、有罪が確定し外務省を失職。05年発表の『国家の罠』で第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。翌06年には『自壊する帝国』で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

「2018年 『宗教と生命 シリーズ:激動する世界と宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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