生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 (朝日新書570)
- 朝日新聞出版 (2016年6月13日発売)


- 本 ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022736703
作品紹介・あらすじ
「恥をかくのが怖くてチャレンジできない」「人に嫌われてると思い込む」これらは回避性パーソナリティー障害の特徴である。自尊心が傷つくことへの強烈な不安・心配ゆえに「何もできない人」が、能動的な日々を過ごすためのヒントとは。
感想・レビュー・書評
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生きることを「面倒くさい」と感じる人が増えている。アメリカでは80年代は全人口の1%魅力に満たないのに2010年には5,2%を越えている。日本でも4割の大学生にそうした傾向が見られるという。
これらが「障害」となってくると回避性パーソナリティー障害という。
回避性パーソナリティ障害は、「自分への自信のなさや人から馬鹿にされるのではないかという恐れのために、社会とかかわることや親密な対人関係を避けることを特徴とする状態」である。
確かに生きることは面倒なことばかりだ。自分が大学にはいったとき、「あと4年猶予がある。」とほっとしたことを覚えている。
「就職」は面倒なことの頂点だからだ。
「就職」すると桁違いのプレッシャーにさらされる。ここで躓いてひきこもってしまう人もいる。
現代では更に、人と交わることも避けようとする人がいる。
「 高度な情報処理装置である脳をもつ人間だからこそ、情報革命の前と後では、種が異なるほどの影響を免れないだろう。」
そう、スマホやゲーム、動画などで人と接しなくても楽しい生活を送れるライフスタイルの変化がある。部屋に居ながらにして世の中の様々なことを知ることだってできるのだ。
このことが人に劇的な変化を与えたと思える。自分が卒論で取り組み恐れていたことが現実になってしまったとの感をもつに至った。
また、「回避性」には幼児期の生育歴も関係している。一才半までの時期を臨界期というが、その臨界期に十分な関わりや愛情が与えられなかったことが人に対する煩わしさを産み出していると本書はいう。
まさに社会の変化が「回避性パーソナリティー」をもたらせているのであり、後戻りはできないであろう。
しかし、自らに閉じこもり、新しいことにチャレンジしようとしないことは非常にもったいない。
「回避性パーソナリティー」の人には能力の高いひとが多くいる。
本書にはたくさんのひきこもりの事例がでてあるが、いずれも親との関わりの改善により社会に復帰できている。20代のほとんどを引きこもっていて30代も半ばになって社会復帰できるなんて信じがたい。やはり「自分で人生を選ぶ」ということが生きる力を引き出していくのであろう。
自分で自分の人生を選ぶ。
小さな、できることから一つずつ行っていく。
これが、とても大事であることが様々な事例が教えてくれた。加えて、「安全基地」というカウンセラーなり周囲の人なりその人のことを無条件で肯定し、後押ししてくれる存在が必要である。
極めてタイムリーな課題であるし、希望をもてる要素を示してくれる岡田先生の実践や観察眼には学ぶこと大であった。
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この生きづらさはなんなんだろうと思って、ネットで検索しているうちに回避性パーソナリティが引っかかって、この本を読んでみようと思った。
書いてること全部為になるなと思って、マーカー引きまくった。
回避性パーソナリティっぽい偉人の話や、岡田先生の元にきた患者さんの話を通して、前向きな気持ちになることが出来た。
仕事仲間や家族、恋人が回避性パーソナリティだと思われる方に向けての項目もあるので、気になった方は読んでみてほしい。 -
自分と他人は違う。自分の考えが相手にとって最良だとは限らない。自分の基準や考え方で相手を評価したり批判したりしても、それはあくまでも自分にしか通用しない。何故なら人は一人一人育った環境も違えば、見てきたもの聞いてきたもの触れてきたもの全てが自分(あなた)とは異なるからだ。
それは自分の子供に対しても勿論当てはまる。自分の親と、自分の子供にとっての親は違う。だから自分を育てた親が言ったことが自分の子供に通用するかと言えば、そんな事は無いはずである。それを理解せずに、自分がこうした方が良いという考えを子供や他人に押し付ければ当然違和感が生まれるはずだ。まず理解しなければならないのは、当たり前だが、自分の考えや基準は自分にしか通用しないという事だ。
近年増加傾向にある引きこもりやニートが社会問題化し、私の身近にもその様な状況に苦しむ人々がいる。どうにかして状況を打破しようと、時には厳しく指摘したり、好きな事をやらせてみたり凡ゆる手を尽くしてみるが、それでも状況は中々改善されない。最近私もそういった相談を受け、本人を目の前にどの様に対応すべきか悩んだ経験を持つ。特に悪いことに手を染める事もなく、幼い頃はよく話し、よく遊びどこにでも居る普通の子だった。勿論今でも街でばったり会ったなら何処にでも居る普通の子だし、寧ろ容姿もよく背も高く俗に言うモテるタイプだ。だがとうに20歳を過ぎ、学校に行くでもなく、また働きにも出れず母親の元で暮らしている。私には正直どの様に対応してあげたら良いかがわからなかった。じきに自分から何かするまで待ってあげるのが正解なのか、それとも現状を厳しく指摘して無理にでも尻を叩くのか分からない。そんな状況でも暫く一緒に過ごし話をする事で少しずつ当人の事を理解できる様になった。きっと恐らく、本書に記載される様に自分への諦めや、失敗への恐怖、期待に添えなかった時の更なる失望が本人の動きを止めてしまっているのでは無いかと感じる。それすらも当たっているかは分からない。ただ一緒に過ごし当人にしっかり向き合えばやがては答えが見つかるかもしれないという期待は膨らんだ。話せば普通の子であり、きっと第一歩が踏み出せないだけだと思う。ならこのまま向き合いながら、いろいろ話をして(聞いてみて)本人の中に何かきっかけが出来れば良いのでは無いかと思う。考えすぎだよ、誰でも失敗ばかりだし、恥ずかしいことなど何も無い。本当はそう言ってあげたいが、私は待つことにした。
世の中には多くこうした状況があるのは、私のごく身近にも、会社でする会話の中からも感じ取れる。皆悩んでいるだけで、はじめの一歩が怖いだけ。人それぞれきっかけは違えど立ち上がる日は来る。自分たちが彼ら彼女らを動かそうとするなら、自分から気づける様に優しく近くで見守る必要があると感じる。理解せずに自分を押し付けても恐らくは変えられない変わらない。そして我々が個々に持っている考え方や物差しでは他人は評価出来ない事を十分理解して相対する事が必要だと感じる。
間違いないのは、親が子を心配する気持ちだけだ。いつかは親もいなくなる。大半は親が先だろう。だから子供に1人でも生きていける力を持ってほしいと願う気持ちはどの様な親でも必ず持っている。いつか親の気持ちに応えたいと自らが動き出せるタイミングが来るに違いない。親が子を思う気持ちと子が生きたいと願いその為に動き出した時に本当の親子になれる気がしてならない。
そしてその様な状況を生み出す1つの要因として、情報過多な時代にも問題はあると感じる。大量に入ってくる情報には過剰に人を恐怖に怯えさえ、踏み出す事を躊躇させる様な話に溢れている。その逆にどう頑張っても到達が容易ではない、半ば運任せの成功体験も多い。簡単に堕ちるどん底から、天国まで見せられて夢に溺れてしまう人もいるだろう。現実世界は誰もが人間関係に悩み、恥をかき、無駄とも思える程の汗をかき、頭痛に苛まれ、落ち込む。それが普通だし逃れられない現実世界だ。そしていつでもリセットできやり直しもきく。失敗は進歩の母だから何度でも失敗すればいい。リアルな自分でリアルに味わってみる事が自分を確立する糧となる。スマートに行き交うサラリーマン達も家では1人で悩んでいる。酒を飲んで忘れようとする。現実は泥臭いものだという事を教えてあげたい。
本書は様々なパターンを例示し、それ毎に適切な対応に近づくヒントをくれる。参考にしながら、苦しい状況に悩む人たちに少しでも救いになればと思う。 -
タイトルに呼ばれた気がして読み始めましたが、割と当てはまるを超えて、ほぼ当てはまるのは初めての経験でした。
冒頭の筆者自身の過去話に共感する人は一読の価値ありかと思います。
人間関係や些細であっても何かしらの決断への回避行動、それに伴うひきこもりの例などが多く紹介されており、読んでいる途中「わかる」の連発で、なるほど自分は回避性パーソナリティ障害だったのかと勝手に自己診断したくなるほどでした。
とはいっても、家族のいる家にいたくない一心で立派に卒業と就職を果たした自分には、なんちゃら障害といわれるより、「障害」と「なんとなく生きづらい」の間に余白が欲しくなります。
名前が付くと免罪符みたいで楽なのですが、追い詰めて考えないためにも、色々抱えててもまぁいいじゃない、みたいな鷹揚さを自分に許したくなります。 -
面倒くさがりの私が読むべき本!?
本を読み出すと何もしたくなくなる…メシタキ、ソウジ、ネバナラヌコト…。
回避性…初めて聞いた言葉だった。素人にはちょっとこんがらがるところもあるが、最後の方は具体例もあり分かりやすかった。
筆者の岡田さんは現在メンタルクリニックを開業してらっしゃるが、ご本人も回避性で、大学を卒業するのに10年かかったと書いていた。
世間では多様性、多様性とやたらと聞くが、教育界は相変わらず画一化されたままの印象。そこに大きな歪みがうまれ結局犠牲になるのは子どもなのである。
回避性の人には読書好きも多いらしい…納得2019.6.30 -
読んだことがあるはずなんだけど、登録していない。
どころか、カバーが新しくなったから間違えたのか、購入までしている。
筆者の愛着の話は割と腑に落ちるので、よく読む。
自分の中には、割と強く、親や育て方に対して思うことがあった。
それは「時代だ」とか「自分たちもそうして育てられてきた」と言ってしまえばそれまでなんだろう。
今の世の中は、虐待が事件として目にする機会が増えた。けれど、可視化されたとも言える。
大きな流れが変われば、それぞれの関わりもきっと変わるのだと思う。
全てをそのせいにはしないけれど、自分がうまく適応出来ないなと苦しく感じてきたことには、親の存在がある。
諦めず、自分を知っていくこと、完璧や評価を目指さなくても良いと言ってやることで、少しずつ息がしやすくなっている。 -
自分に自信がなく、人から批判されたり恥をかいたりするのが怖くて、社会や人を避けてしまう・・・・・・。 それが回避性パーソナリティの特徴だ。 「会社に行きたくない」「恋愛をしたくない」といったように、昨今若者を中心とした現代人に増えているパーソナリティ障害でもある。 彼らにとって人生とは、喜びよりも苦痛に満ちている。 こうした特徴を見て、思わず「自分のこと?」と思った人も大丈夫。 面倒くささや無気力な状態を脱し、自由に生きるための方法を提案。
【次の質問に四つ以上あてはまれば、あなたも回避性パーソナリティ障害かも?】
□営業や接客、電話応対やスピーチが苦手
□恥をかくのが怖くて、自分をさらけ出せない □失敗を恐れて、新しいチャレンジを避ける
□好意を感じても、自分からはアプローチしない □人に悪く思われていないか、いつも気にしている
□自分に自信がなくて、親しくなるのをためらう □人といても楽しさよりも居心地の悪さを感じる
自分に自信がなく、どうせ他人は自分を否定する必要としないという思いが強い。
人と交流するにも、相手の評価に気を使い過ぎて気疲れしてしまう。相手を失望させることが怖くて、相手に期待されることがめんどくさい。
自分への自信のなさから、人からバカにされたり否定されることや拒否されることを恐れて、親密な関係になることや新しいことに挑戦することや仕事などで責任が増すことを避けたり、人に助けを求めることが難しかったり自己主張することにブレーキをかけたりすることで社会生活に支障をきたすパーソナリティ障害を、回避性パーソナリティ障害という。
愛情深い世話が不足していたり、過保護や過干渉の家庭では、回避性パーソナリティに育ちやすい。
回避性パーソナリティの人を上司が使いこなすには、居心地の良い仕事環境を整え、本人の主体性を大事にし、いつでも相談にのれるように上司が側にいて安心させ、プレッシャーや負担を下げるようにすること、負担を増やすにも相手の意思を尊重しながら徐々に増やすこと。
他にも、回避性パーソナリティ障害の人の適性に合う職業や交際の心得など、回避性パーソナリティ障害の当事者や家族や支援者や上司に必須の回避性パーソナリティ障害の入門書。