ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.73
  • (10)
  • (18)
  • (10)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 181
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022736765

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 小学校の時、保健室は逃げ場の一つだった。
    周りより少し大人びていた私は、放課後に、休み時間に、そこに駆け込んだ。
    話を聞いてくれる大人がいることに安心した。
    中高ではそんな少女たちがたくさんいた。
    追い返されたこともあったが、今考えればある程度見極めていたように思う。

    本書に登場する子供たちは、当時の私よりずっと過酷な状況である。
    私と同じ、などとは言えない。
    発達障害が疑われるのに、保護者や教員の理解を得られぬ子、虐待を受けている子、貧困に喘ぐ子......。
    見えない、見ようとされない子供たちを必死で支えているのが養護教諭たち。なのに彼女たちも理解されず、孤軍奮闘を強いられている。
    この需給のミスマッチはなぜ起きるのだろう。

    「困った子は困っている子」という言葉が印象に残る。
    一般の大人が考える以上に子供たちは困っている。
    しかし彼らは、表現方法も、発信力も、何もかも未熟で、うまく自分を語れない。
    それを補って汲み取ってあげる側の大人も、余裕がない、知識がない、いろいろな理由で十分に向き合えていない。
    そのため、「できる人」に負担がのしかかる。

    すでに提言されているようだが、本当に今、必要なのはチームを組むことだ。
    スクールソーシャルワーカーを入れたり、複数配置にすることが子供のためにも、支援者のためにも重要なのだ。
    善意だけでは人を支えることなどできない。
    本当に、この社会を持続させていきたいのなら、もっと子供に予算を使わなければ、間違いなくこの社会は消滅する。

    「まちかど保健室」の提案は魅力的だ。
    子供食堂と合わせて解説できれば、より適切なフォローができるように思う。

  • 自分が小学生の時のいわゆる「保健の先生」は、ちょっとすりむいたくらいで来るな!と追い返す年配の女性だったから、気軽に行くことはできなかった。しかし子供は、ちょっとした怪我でも絆創膏1つ貼ってもらうだけで安心するのだと、大人になってから気がついた。本当に欲しいのは手当てではなく、構ってもらえた充足感なのだと。
    学校だけでなく地域にも保健室を、という活動はとても素晴らしいが、それだけ心の拠り所を求める人が増えているのかと思うと、メディアによる社会や家族の在り方への警鐘はほとんど無音に近いのかもしれない。

  • 学校関係者の方ではなくても、読んで欲しいです。私の家族には、私がどんなことをしているのか、話すよりも読む方がずっとよく解ると思います。

  • <図書館の所在、貸出状況はこちらから確認できます>
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=320085

  • 普通に面白かった。タイトルから想像したもの以上の事が書かれていた。子どもの貧困、児童虐待、LGBTなど、近年注目されている内容について、保健室の養護教諭の方の取り組みと実際のケースを細かに記すことによってリアルに描かれていた。美談だけではなく、残念ながらバッドエンドとも言えるその後となってしまったケースもしっかり取り上げており、現実味があった。
    最後には日本の現状を踏まえ解決策の提案と今後の展望についても綺麗にまとめてあり、心に留まった。
    まちかど保健室の設置およびそれの公的補助、養護教諭のスクールカーストの根絶、複数の養護教諭を学校に配置するなど、現実的には難しいかもしれないが良案が豊富で、現状を打開する可能性を感じた。
    長々と書いてしまったが、緻密な取材と問題提起や着眼点の鋭さに舌を巻いた一冊でした。福祉関係に興味のある人は是非読んで欲しいです。

  •  元『朝日新聞』社会部記者で、2013年からはフリーのノンフィクションライターである著者が、朝日時代からつづけてきた取材をまとめた本。

     各地の学校(おもに公立中学)の保健室に通いつめ、養護教諭と保健室にやってくる子どもたちを密着取材したルポだ。
     家庭の貧困や保護者からの虐待など、さまざまな困難を抱えた子どもたちが、オアシスのように感じて通ってくる保健室。そこでくり広げられる、養護教諭と子どもたちのふれあいが、ていねいに描き出されている。

    〝いくら家庭的な温かみにあふれているようでも、やはりここは、子どもの生きづらさと闘う最前線なのだ。〟

     ――という一節が印象的だ。
     学校にも家庭にも居場所がなく、自ら命を絶つことを選びかねない子どもたち。彼らにとって、優れた養護教諭は最後の命綱になり得るのだ。
     深く傷つき、心を閉ざしていた子どもたちが、養護教諭の粘り強く献身的な「寄り添い」によって蘇生していくプロセスが胸を打つ。

     秀逸なルポ。全国の養護教諭はとくに必読だと思う。

  • ■困った子は困っている子
    ・教師から見て問題行動の多い「困った子」は見方を変えると,様々な困難を抱えて助けを必要としている「困っている子」である。
    ■養護教諭は日本独自の教育職。
    ・養護教諭のツールは1905(明治38)年,岐阜県の小学校に配置された「学校看護婦」にある。
    ・トラコーマという目の感染症が全国的に大流行していたため,当初は子供たちの洗眼を役割として各地で公費採用されるようになった。
    ・1941(昭和16)年に公布された国民学校令で,学校看護婦は「養護訓導」に変わり,教育職員となった。
    ・1947(昭和22)年,学校教育法の制定により,養護訓導は「養護教諭」へ改称された。
    ■養護教諭が差別的な位置にある原因(「養護教諭の社会学」すぎむらなおみ氏)
    ①教壇に立たない教員であること
    ②職務内容が他者に理解されにくいこと
    ③養成課程が統一されていないため学歴がまちまちであること
    ④前身が学校看護婦で「病院」から「学校」への移民であること
    ⑤ほとんど女性であること

  • 保健室登校という形の学校とのつながりの存在は知っていたが、保健室にこれほどまで現代社会のしわ寄せが来ているとは思っていなかった。単純な心の問題では片づけられない複雑な思春期の悩みを受け止めきれるのは、スクールカウンセラーというより養護教諭なのだろう。性の相談をできそうな人は学校には養護教諭しかいない。大学入試改革は、ここに出てくるような生徒たちにとってかなり酷なものになるので、改革に反対する気はないが、そこからの脱落者をいかに出さないようにするのかということも考えていかないと現場は困るだろうなと思った。

  • これを読んだら次は子どもの貧困について興味がわいた。
    自分ははずれの養護教諭しか当たってないので保健室にお世話になったこともないが、こういった子どもにきちんと目をむけて気づいてくれる養護教諭もいるんだということが知れた。
    文章がなんか読みづらかった。内容も少し薄いなと感じた。

  • 洋の東西、時代の今昔を問わず、社会の歪みは全て子どもたちに表れる。いつもどこでも、犠牲者は子どもたち…。

全21件中 1 - 10件を表示

ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル (朝日新書)のその他の作品

秋山千佳の作品

ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル (朝日新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする