奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737045

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】いまや大学生の半数以上が奨学金を借りている。多い人は700万円もの借金を抱え、卒業後に返済で困窮する。授業料が高く親世代の収入が減ったため、子世代は奨学金とバイトが頼みの綱。「ブラックバイト」と命名した著者が奨学金問題の本質と解決策に初めて迫る。

感想・レビュー・書評

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  • この本は今から6年前の3月の第1刷直後に書店で出逢い購入。4月から次女が大学進学にあたり奨学金の第1種と2種に加え入学時の3つ全てMAX借りることが決定したタイミング。しかしながら入学時に2種の手続きを失念したようで、半期分借り損なう。1種と入学時を借りられていたため事なきを得た。さもなければ退学になるところだった。
     1年休学し、5年かけて卒業し、7ヶ月後から返済が始まる。最初の1,2ヶ月だけは引き落とされたが、本人任せになっていたら、あっという間に3ヶ月滞納。こちらの本のタイトルだけは見ていたので、4ヶ月目にならないよう忠告。そして、財力のない母自身、やっと読み始めることとなる。
    大学はどうしても入学、卒業してほしかったが、奨学金の返済がつきまとううちは、結婚も子育ても厳しいだろうから、読むのが怖かった。
    2人の娘は、何も言わず自主的に奨学金を借りて進学、そして返済。
    責められれば辛いが、一度も責められることはない。しかしながら結婚が破談にでもなったらその時が来るのだろう。
     この本を読書中に、ニュースで給付型奨学金の条件がかなり緩くなり、充分当てはまることがわかり、ショックで寝込んだ。
    あと6,7年早ければ•••
    この6年前は、給付型を促進しようとしている段階だったので、だいぶ前進したようだ。

     【「返せない」人に返済を強制する奨学金制度】が興味深かった。次女は卒業し、早速つまづいている。何処で猶予を申し出るかも悩みどころ。(猶予は10年)

    著者も書かれている通り、延滞金の廃止を最優先を希望する。
    (或いは元金から減るシステムへ)

    奨学生本人も親御さんも必読の一冊だと思う。
    高校教諭及び大学教授にも。

    2023,2,19〜4,13
    7時間26分

    2017,3,16
     東京都千代田区 三省堂書店 有楽町店で購入

  • 奨学金が日本を滅ぼす (朝日新書) 新書 – 2017/2/13

    片道3時間の通学時間を強いられる大学生が急増している
    2019年1月23日記述

    大内裕和(おおうちひろかず)氏による著作。
    2017年2月28日第1刷発行。
    著者は1967年神奈川県生まれ。
    東京大学大学院教育学研究科博士課程をへて、現在は中京大学教授。
    専門は教育学・教育社会学。著書に『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)、
    『ブラックバイトに騙されるな!』(集英社)、『ブラック化する教育』(青土社)など。
    奨学金問題対策全国会議共同代表。

    2013年ごろ日本学生支援機構のかなり乱暴な取立、回収が社会問題化し三宅勝久氏のMyNewsJapan上の記事や著者が共同で書いた
    日本の奨学金はこれでいいのか! ―奨学金という名の貧困ビジネスという書籍を読み、現状に対し憤った事を覚えている。
    それから数年がたった現在、事態は徐々に悪化しているなと思える。
    アベノミクスによって自称最長の景気回復という事になっている我が国ではあるが、社会保障費が年々高くなっていることもあり、手取りは数年前よりも減っている。
    個人的にかなり驚いたのが、三重県の自宅から名古屋圏の大学へ通学する大学生で片道3時間の通学時間を強いられている学生がいるという部分。
    何も何人かの話では無く、どのクラスにも数人以上いるのだという。
    また自動車運転免許の取得にまとまったお金がかかる為、車はおろか運転免許すら持てていない大学生も増加している。
    ある歴史あるサークルで現役生に自動車を用意できないかOBが問いかけ現役が用意できない事に怒る場面がある。
    これは一種の世代間格差とも言える。
    本書の発表から2年経つが、給付型奨学金の動きもまだ不十分であるし東京工業大学や東京芸術大学が国立に関わらず授業料の値上げに踏み切った。
    世の中で求められている事に逆行した政策を取る上記2大学は全くもって日本国の恥である。
    しかし読後感としては本当に我が国日本は貧しくなったという事実だ。
    年功序列型の昇給システムがほぼほぼ適用されなくなった今後の若い年代は更にこの高学費を支払う事の出来ない家庭が急増することが明らかだ。
    (民間や公務員も。昇給があっても出世しない限り大幅な給与増は望めなくなった)
    フランスや北欧のような国家へ日本を改造していくことが求められる。
    また高卒で就職できる機会を増やすべく、不要な規制を取り払う事も求められる(大学生のように複数の企業を受験できるようにすること)

    気になって自分の母校の学費も調べてみたら・・
    2004年入学生は
    入学金30万円。
    文系学費 1年目1,104,000円(入学金含む) 2年目以降 893,000円

    2014年入学生だと
    入学金30万円。
    文系学費 1年目1,150,000円(入学金含む) 2年目以降 936,000円

    2018年入学生だと
    入学金20万円(ここだけ下がっているが・・)初年度授業料959,000円
    文系学費 1年目1,186,000円(入学金含む) 2年目以降 1,016,000円

    他の国際学部、教育学部だと
    入学金20万円 初年度授業料1,212,000円 2年目以降1,320,000円

    文系学費だけ見ても自分の入学した時よりも既に毎年12.3万円かかるようになっている。
    4年間で約50万円も学費が上がっている。
    とてもそれに見合うレベルの高い授業を展開しているとは思えない。
    情報商材詐欺としてイケダハヤト氏がよく叩かれているが大学教育もすでにそれに近いレベルになりつつあるのではないか。
    大学で学んだ事は有意義な事もあった(クラブで得た事や良い授業もあった)
    しかしもう高い学費と見合うものでは無くなっていると思う。

    お金が無いなら国立大学へ行けという指摘に対し・・・
    →私立大学よりも入学難易度の高い国立大学には、塾などの学校外教育費を支払える相対的に豊かな家庭や文化資本が豊富な家庭の出身者が入学しやすいと
    いう事実への認識が欠落しています。

    国立大学でも自宅外通学なら、自宅通学の私立と変わらない国立大の数は全体的に見て少なく、自分の行きたい学部のある国立があり自宅から通えるというのは全国的に見て例外的な状況。
    大まかな計算で、自宅から国立大学に通っている学生は全大学生の約5%。
    私立を含めた全大学生数256万7114人(2016年)

  • ふむ

  • ●小中高の教員が奨学金返済を免除される制度は1998年廃止されました。
    ●結婚相手に多額の返済義務があることがわかり、両親が難色。
    ●国立大学の授業料が安かったのは、60年代の学生運動など。
    ●まずは延滞金の廃止。返済に当てられる順序は、必ず元金、利息、延滞金で変更し、返せば必ず元金が減る制度とするべきである。

  • この秋めでたく結婚しようという若者二人。自分が大学時代に借りていた奨学金が約500万円。夫となる彼氏の奨学金残高が700万円。二人合わせて1200万円。自分の家を持つことはおろか、出産、結婚さえもできない厳しい現実がある。今や大学生に二人は奨学金を借りている。まさにタイトルどおり奨学金の返済が日本の将来を脅かしている。真面目に働けば何とかなる時代はとうの昔に終わっている。自己責任だけでは解決できない日本社会全体が抱える問題であることを今こそ深く自覚しなければならない。

  • 昔のお気楽キャンパスライフを味わっている世代と絞り出すように金を捻出してバイトせざるを得ない世代の差!
    親の格差と自己責任の一言で片付けられない地獄。苦しんだ末に卒業してからも奨学金に悩まされる。私も奨学金を借りた身だからよく分かる。取り立てに全く容赦ないんだよな。

  • まさか日本の高等教育がこんなことになっていようとは。高卒で働くことも就職率の低さや職業資格の点からままならず、高等教育に進学すれば大きな負債を背負ってしまう。そのような事態になっているのに、日本社会でこの問題が認識されていないという深刻さ。

  • 今年2月に、〈「ブラックバイト」と命名した著者が奨学金問題の本質と解決策に初めて迫る〉として紹介。出版された本です。

    多額の奨学金を抱えている多くの学生の存在やそれが返せなくなっている現実、日本学生支援機構の取り立てのすさまじさ(例:北海道釧路市で亡くなった息子さんの奨学金の取りたてを受けた高齢の両親の話し)等々、この間の報道でその一部は知っていましたが問題の大きさや異常さを改めて確認した思いです。

    ちょうど長男(高3)が進路選択の時期、先日学校から説明会資料をもって帰ってきました。我が家も借りてもらわないと進学は難しいです。彼はあまり言いませんが、下に妹がいるのでそのことも意識しながら考えているようです。資料を見ると本にも書いてありましたが、利子なしの方が借りれる上限額が低いのですね。そのことの説明は、支援機構のパンフレットにはありませんでした。安心して勉強ができる環境を整えることは、未来の社会に豊かさをもたらすと思いますが、人間に対する信頼がないのだなと感じます。

    親の所得によって将来が決まるような社会であってはならないと思います。自己責任で、問題を片づけるような社会であってはならないです。〈「生まれながらの差別」に鈍感な日本社会を変えていきたい〉と最後に書かれていますが、奨学金に限らない多くの分野に共通する指摘だと思いました。

    お勧めします。

  • 大学で働くものとして、基礎知識としてこの本は是非読んでおきたいと感じた。

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著者プロフィール

中京大学国際教養学部教授。1967年神奈川県生まれ。専門は教育学・教育社会学。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。著書に『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書、2017年)、『ブラックバイトに騙されるな!』(集英社、2016年)など。

「2017年 『ブラックバイト 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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