新書610 正社員消滅 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.14
  • (5)
  • (7)
  • (13)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 106
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737106

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】非正規雇用が4割に達し、日本の労働環境は過酷さを増す。重い負担と責任を押し付けられる非正規社員。低待遇なのに「正社員なんだから」とブラック労働を課される「名ばかり正社員」の激増。安心・安定の象徴だった「正社員」が危機に瀕している。緊急警告!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 正社員がいなくなっている。正社員自体がいなくなっているのと、正社員ではなく契約社員が実務を担う企業が増えていることが実感として分かった。
    個人的には正社員というシステムが時代に合わなくなっているようにも思う。

  •  正社員の待遇悪化に向け露骨に政策誘導されている実情を改めて知ることができた。労働者も数ある生産財の一つとみなし、欲しいときだけ、かつできるだけ安く使いたいとの動機は資本主義の必然的な帰結である。サントリー新浪の「在庫」発言にそれが良く表れている。原材料や機械とは異なる血の通った人間だからこそ、先人たちは知恵を絞り資本家の搾取に対抗してきたのだが、資本家サイドの手口も巧妙になってきて、最近では労働者自ら望んで隷従したり、労働者同志が反目したりするようになってきた。本来我々庶民が戦うべきは「上級国民」といわれる高給サラリーマンではなく、資本階級の利害を代表する竹中平蔵のような悪党であろう。

  • 正社員と非正規社員との待遇差、正社員追い出しの拡大など事例を豊富に紹介しつつ、問題点を指摘している。

    企業側も利益の最大化を求める中で、今後もせめぎ合いが続くことが予想される。その中で働き手は何をすべきかを提示している。

  • メンバーシップ型雇用(濱口)という無制限型無期契約雇用=正社員という言説は、ここ最近の話でありしか昔の正社員ではなかった。

    というのが印象的である。

  • 「正社員」の捉われ方を探りながら、今後の雇用について問題提起している本。内容は少し(世の中、政策への)批判目線です。
    雇用側と被雇用側とで見方が違う、ものすごく難しい問題だと思います。

  • ■「我が国の労働市場においては,正社員とパートタイム労働者との間に「職務」と「賃金」の連結を認めるための社会的基盤が成立していない」「その最大の要因は,正社員が企業に対して負っている拘束の大きさにある」(水町勇一郎の「同一義務同一賃金」論)
    ■水町によれば日本の正社員はパートにはない様々な
    義務を負っているとされる。残業命令・配転命令に従う義務,退職後に元の会社と競合関係にある会社に就職してはならない競業避止義務,業務命令への服従義務などがそれ。ドイツやフランスでは正社員に相当するフルタイム社員は,パートと同じくそうした義務がない。日本の正社員の賃金の高さは,そんな思い義務からくる高負担の見返りであり,欧米型の「同一労働同一賃金」ではなく「同一義務同一賃金」という固有の平等原則に基づいているという考え方。
    ■正社員の三つの錯誤
    ①経済の変動で会社も大変なんだから我儘はいけないという自虐的にも見える我慢
    ②働き手の生存権なんてのんきなことを言っている時代ではないという訳知りの態度
    ③自分だけは大丈夫という奇妙な自信

  • 「正社員消滅」
    思わずドキリとするようタイトルだ。既に派遣社員が4割というのが現実であり、派遣社員と言っても昔のパートとは違って正社員並みに働いているのだから事態が悪い。そして、既に派遣社員無しでは業務は成り立たない。
    そもそも正社員とは何なのか、戦後の国際社会の中で働き方の標準として正社員と言う考え方が生まれてきたらしい。つまり、経営者の勝手な判断で解雇できないという、労働者の生きる権利を守るという観点からの労働者保護である。
    しかし、グローバル化が進み人材派遣が解禁され非正規社員と言われる人たちが増えてくるに従って、正社員というものが改めて意識されるようになってきたと言うことである。
    確かに産業構造の変化で働く場所、必要とされる人は変わってくるし、グローバル化による競争はとどまることを知らないように見える。労働者は一体どうしたらいいのだろうか。労働者の権利や保護はどんどん縮小し、会社オーナーの都合の良いただの労働力として存在するだけになってしまうのだろうか。
    本書を読むと日本の労働問題の問題点を改めて思い知らされる。しかし、解決策はあるのだろうか。社会全体の問題であり、身近な問題でもあるがなかなか難しい。
    少なくとも所得配分や税率を見直して累進課税を元に戻し、法人税を元に戻し、格差を是正していくしかないように思えるが、それだけでは根本的な解決にはならないだろう。意識を変革し、最終的には経済を脱却できない限り無理なように思える。

  • 衝撃的なタイトルにひかれて購入しました。

    いまや、日本で働く人の4割が非正規雇用(福祉現場も同様)であることは知っていたつもりですが、丁寧な取材のもとに語られる実態に改めて驚きました。グローバル経済と新自由主義に基づく経済政策のもと、一億総活躍社会の実現や「働き方改革」などを打ち出しながら、大企業優先で働き手を守る政策を国がとっていない事実も解明されていました。もっと私たちは、怒らないといけないですね。「正社員」とは何かと問われると確かにはっきりしないわけですが、その意味をとらえ直すことが必要だと思いました。

    「働く」ことの本質的な意味(労働が人間の発達にとっていかに大事なことであるか)から考えていくことが大事だと思います。

    来年から就職する長女にも読むことを勧めたいと思います。
    みなさんもぜひ、どうぞ。

  • 現代が厳しい状況だということは認識できた。もう少し、未来に向けて前向きになれるような示唆があればよかったのに。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジャーナリスト

「2021年 『POSSE vol.47』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹信三恵子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンデシュ・ハン...
トマ・ピケティ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×