底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737359

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】今の日本で繰り広げられているのは「下流に転落しないための競争」である。著者による『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)から約20年。アラフォーになったパラサイト・シングルの実情を通し、格差社会の過酷な現実を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  •  中年パラサイト・シングル。親同居・未婚・アラフォー。
     この存在を中心に、そこに至る時代背景や過程、そして今後の見通しを整理している。彼ら彼女らが下へ流れて底辺に至るという状況説明がなされる。そのような人たちが増えているのが今日の日本社会だという。
     彼らは一見豊かに見えるが、実は結婚せずに子育てをしないことで得ている豊かさでしかなく、少子高齢化につながり、経済が行き詰まるという見通しをベースに議論が展開される。就業格差と家庭格差が固定化しがちな社会環境において、それを自己責任だと非難してみても、100人の人間がいてそれが何十人という社会になると、自己責任論は的を得た議論にならないだろう。
     低所得の中年パラサイト・シングルは、既にある一定の社会階層を成すグループとなった。社会的なコストだと非難してみても何も始まらない。
     後半部分での著者の問いかけにあるように、現在の社会システムに適合しないのであれば、それにかわるものを作り出すしかない。あきらめ始める人たちが登場してきている。高齢者シェアハウス、他人と一緒に同じ場所で暮らしていく、こうした何か別の道が必要なのではないかという問いかけがあっていいだろう。
     ところで、日本の社会問題を論ずるところで、「結婚」が持つ役割・機能の大きさには驚くべきものがある。幸せな結婚をしたいというような個人の感情を大きく超える、そんなものではとてもすまされないものが、この「結婚」に含まれていることを自分なりによく理解するようになった。

  • 結婚したくない→結婚デキナイへの変遷を描いているが、昨今は結婚したくないに回帰している印象を受ける。それが、コスパ重視なのか、「デキナイ」を「したくない」と思い込まされているのかはわからないが。

  • 2024年でも(2017年発行)とりあえず現状把握に適した本。新書一冊で社会を把握し、解決策を授けるなんて事は無理な話で、自分自身の“今後”を考えるキッカケになればと思う程度に読んでみれば短絡的思考に向かわなくて済むのではないでしょうか

  • 初めてこういう本を読んだ。将来に対して漠然とした不安があったけれど、少し考えがまとまった気がする。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689567

  • 作家本人の主観によってできている本。
    客観的なデータに乏しく、言葉の誤用も多い。

  • 現代社会を考えるいいきっかけになる本だと思う。リスクは至る所にあるのに、その存在を無視しているのか見えないのか、現状を変えようと動く人があまりに少ない気がする。

  • 雇用格差と家庭形成格差がレバレッジがかかるというが、男性は雇用状況がよければ(安定的に高収入が得られる期待が高ければ)結婚条件に恵まれるという因果関係がそれぞれあるだけで、レバレッジがかかってはいない(少なくとも本書の中で説明されていない)のではないかと思ったが(むしろ(男性の場合)単身のほうがコストが低減して将来の経済リスクが減るのでは)、女性の場合(特に著者の懸念する執筆当時アラフォー世代(女性は雇用状況と家庭形成状況に因果関係がなかった)においては)結婚≒正規雇用なので、社会全体ではそうなるのかな?
    かつて著者が名付けた「パラサイト・シングル」が今や「中年パラサイト・シングル」となっているというのだが、前者は大半が正規雇用で、十分な収入を得ているにも関わらず独立しようとしない、いわばモラトリアムな独身貴族(これらの死語は本書では用いられていないが)だったのに、それがまるで経済状況も芳しくなくて親の年金に依存して結婚したくてもできないと語られる後者に移行したかのように論じられていて、どうしてそうなるのかわからなかった。正社員男性が結婚していないことにより非正規雇用や失業に追いやられるという理屈なりが書かれていればわかるが、そういうことはなし(そもそもそういう現象があるのかも疑問)。
    また、親との同居/独立について、基本的に実家から学校なり勤務先なりに通えれば独立圧力がない、よって、地方から都会の大学等に進学するのを機に独立するケースが多いこととか、一方で地方では親と同居して非核家族(複数世代世帯)を形成することへの伝統的圧力が高いこととかは無視されていたり。
    また、少子化による構造的人手不足により、雇用状況リスクは将来的に減る可能性をどう見るかも等閑視されている。
    また、女性が活躍する社会では女性の間に格差ができるので、「女性の活躍度が高いからといって、決して社会状況がよいとはいえないのです。」とか書いているが(p.144)、このリクツで女性間に格差がないとは、女性がおしなべて下層にいるから格差がないわけで、そんな社会よりは明らかにマシだろうが(それとも著者のような男性には問題ではないということだろうか?!)。

  • 底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路。山田昌弘先生の著書。格差放置社会ニッポンの末路が明るいはずがありません。格差放置を続ければ、いつか必ず格差社会の上層にいて胡坐をかいている人たちがしっぺ返しをされて復讐される、これは世界のいろいろな国の歴史を見れば明らかなこと。それでは不幸。格差放置をしないことが全ての人の幸せにつながると思う。

  • 20年前のパラサイトシングルは、いまや中年パラサイトシングルに。アラフォー世代の格差拡大と抜け出せない固定的な二極化が進行。こうした動向は、とどまることなくアラサー世代にも継承されているという。そして、親から引き継がれる世代を越えた貧困の陥っている子どもたち。あきらめ世代も生まれていると。
    大学生の正社員になるための就職活動の熾烈さ。奨学金という名の学資ローン。一方、過去の標準家庭をモデルとした脆弱な社会保障制度。

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著者プロフィール

大阪府出身。京都大学法学部卒。華々しい英雄伝が好きですが、裏話的なテーマも、人物の個性をあぶり出してくれるので、割と嗜みます。著書に『世界ナンバー2列伝』(社会評論社)など。

「2016年 『童貞の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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