- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022737441
作品紹介・あらすじ
【歴史地理/日本歴史】南北朝の内乱は、古代社会を崩壊させ、封建の新時代を築き上げた。この内乱の推移を、南朝方の結城宗広、楠木正成、後村上天皇、北朝方の足利尊氏、佐々木道誉、足利義満に焦点をあてて平易な文章で綴った「南北朝」入門書の決定版。
感想・レビュー・書評
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南北朝の争乱が長引いた原因は幕府側が優勢になると幕府側に内乱が起きるためである。幕府側の統制力の不安定さが、南北朝の争いを複雑にし、長期化させる要因となった。内乱の連鎖が、南北朝の対立をさらに長引かせる結果となった。
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『応仁の乱』ほか、近年の中世史ブームに乗って復刊されたと思われる一冊。
オリジナルは1957(昭和32)年で、あまり大きな修正は加えずに文庫→新書になったようで、結構、難しい言葉が使われている。が、丹念に読んでいくと、読みどころが多くて、新書とは思えない濃厚さだ。細かい戦の位置付けなど、参考になった。
「北条氏が鎌倉時代を通じて御家人に対して執ってきた態度は、もっぱら対立する有力御家人を自滅させるということであった」など、切れ味鋭いながら、納得感のある評価が本書が名著とされる理由かも。
一回ではとても全部を消化しきれていなさそうなので、何度か読み返してみたいと思う。
それにしても鎌倉~室町時代の歴史は面白い。 -
南北朝といっても二大勢力が相争うといった図ではなく、結局は武家内の争いで、南朝はその受け皿に過ぎない。ただしそれは時代が必要とした受け皿でもあった。足利氏の天下統一までは比較的分かりやすいものの、その後ぐちゃぐちゃな政争に陥る。その根本が、骨肉相食む土地と利権の争いで、社会の仕組みそのものの大変動がこの時期起きていたからでもあった。天皇も将軍も、節操もイデオロギーも無いカオス状態、それが南北朝時代で、(本来の言葉以外の意味を持つ)悪党や婆娑羅は幅を利かせたのはその象徴と言える。本書はその有様を、幾人かのキーパーソンを軸にしながら適確に詳述しており、事態の推移とその背景もバランスが良い。少ないページでこの時代を大まかに知るには最適な内容になっている。感銘を受けたのは、ある歴史的出来事を評価するには前後半世紀(合わせて1世紀)見なければならないというところ。何かを見るにはその要因を辿らねば深く理解出来ないし、後代への影響を追わねばその意義も明らかにならない、そう捉えた。歴史を学ぶ上でとても含蓄のある言葉だし、それこそが、混乱極まる南北朝時代の紐解き方でもあると思った。
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この本の付章 内乱の余波 ということで、以下のように書かれていました。
わたくしは、一つの歴史的事実の意義を評価する場合、いつもその前後の半世紀、通じて1世紀を明らかにすることを主張している。
歴史の移り変わりをながめてみると、半世紀すなわち人間で言えば1世代(ふつう30年をいう)がすっかり変わると、どんな問題でも新しい変化が生まれてくるようである。
そうしてはじめて、歴史的事実に対して客観的な評価ができるような気がする。
と書かれていました。
その上で、この本では、南北朝の内乱は、ふつう4つの段階に分けて考えられるとし、
第一は建武新政府の成立を最後として、王朝権力の没落する過程であって、そこには結城宗広、楠木正成、そして足利尊氏がそれぞれの立場で活躍するであろう。
第二は、武家幕府の中枢部の分裂によって、南山にも天下統一が夢みられた時期であって、そこでは後村上天皇という苦難の人の生涯を点描することにした。
第三は、守護勢力の強化によって権力が分散し、やがて再編される過程であるから、守護の勢力の典型を佐々木道誉に見ることにしたのである。
最後は国内統一の完成期であるから、当然足利義満に登場ねがわねばならないであろう。
こうして、南北朝内乱の推移をそれぞれの人物に焦点をあてながらたどってみたいと思う。
したがっていわゆる人物史というのとは、また異なるであろうが、これも内乱史の一つの試みに過ぎない。
というアプローチのやり方ですが、残された文献を俯瞰する態度で読み解き、読者に説明されている。
楠木正成をただ単に「太平記」で分析しないところが、私にとっては新鮮で面白く読めました。 -
東2法経図・開架 210.45A/H48n//K