紫式部のメッセージ

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022920874

感想・レビュー・書評

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  • この作品が書かれたのが、1991年であることにまずびっくり!筆者の男女差別への怒り、憤懣は2024年現在のわたしたち女性たちの怒りとピッタリと重なる(逆に、30年以上経っても女性差別が厳然として存在する日本社会に絶望を感じざるを得ないが。これでも、少しずつ良くなっているとはいえ)。

    作者によると、紫式部が源氏物語で伝えたかったのは<女ほど不自由であわれな存在はない>ということだという。
    女が結婚をありがたがってはいない、結婚したくない女もいるということを示したくて書いたのが宇治十帖であるとのこと。

    平安時代、構造的な男女差別社会に苦しみつつもそこに順応して生きた女性がほとんどだっただろうが、紫式部は違った。その構造に気づき抵抗しようとした女性だった。その紫式部のメッセージは現在でも強く女性たちに響く。

    源氏物語は「あさきゆめみし」で履修したものの、最初から最後まで、こんな男のどこがいいんだよ?!と光源氏にむかっ腹が収まらず、当時の女性たちが源氏物語に夢中だった(らしい)ことが全く理解出来なかったのだけど、この本を読んで目からウロコが。
    源氏物語がこんなフェミニズム小説だったなんて知らなかった!なんで誰も教えてくれなかったんですか?!

    紫式部はずっと「源氏物語」の中で一貫して女性差別を描き、身勝手な男として光源氏を描いているという。
    藤壺が嫌がり心を病んでいるのに無理やり押しかける、夕顔を無理やり連れ出して死なせてしまう、紫の上を無理矢理攫う…。兎に角、しつこい!無理矢理!人の話を聞かない!
    「あさきゆめみし」だと、激しい恋心故と擁護されていた光源氏だが、原文の現代語訳を読むとただのクズ。女性たちにかなり激しく抵抗されたり断られたりしているのに全然聞かない光源氏…。位の高い女は気位が高く可愛くないから、ちょっと身分の低く自分の言う通りになる女が良い、という思考も男の身勝手さを感じさせる。

    『性差別というものは、いや、あらゆる差別がそうだろうが、差別を受けている者が反抗しないかぎり、露わには見えてこない。差別システムの中にとけ込み、順応してしまっているかぎり、それは<和>であり、<愛>であると見えてしまう。だが、抵抗し反抗したとき、どのように扱われるか、どのように制裁されるかによって、差別の姿が露わに見える』

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