私たちの国で起きていること 朝日新聞時評集 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022950178

感想・レビュー・書評

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  • 2011年4月〜2019年3月までの論壇時評。①社会変動という世界に普遍的な傾向の日本での表れ偏りが②戦後日本の国のかたちの揺らぎと次の時代の新合意形成という二視点から震災後の日本を振り返ると、自民党の基盤の弱体化、戦争被害者意識、排外主義と外国人労働者により「古き良き日本」が守られている矛盾、災害への対応策の前提のずれによる箱物増設と集落の孤立化と原発への幻想、人権意識の希薄と格差、対話不在とSNSによる断片化と炎上等、目指すべき未来のなさと堕性・思考停止による閉塞感に満ちている。この現状認識から出発し新しい国の形をいかに合意していくか、ということが我々の投票活動や政策重視の対話にかかっている。つい最近のことなのに、安保法制、集団的自衛権、STAP細胞、天皇の生前退位など、この時評を読み返さなければ記憶の彼方に行きそうな出来事が多々あったと思い出し、こうして何かが起きても記憶が薄れていくことへの危機感を抱く。書物は偉大だ。その時々の出来事を不変な形で残してくれているのだから。

    一つの時評が6頁以内にまとまっており、毎日少しずつ読み進める。まとまった読書の時間が取れない時はこういう単話を読んでいきたい。

  • 参院選の投票日がせまった。誰に票を投じようか、今回はいつも以上に迷っている。安倍政権の信任投票と考えるのか、でもそうすると今まで絶対にあり得なかった候補者を支持することになるし、残る一人はNHK云々とまあ・・・。てなことを悩みつつこの本を読めば、自分自身も思考の停滞に陥っていると自覚する。減税と福祉を並行して求める矛盾、脱原発の機運の衰退。スウェーデン人の多くが、税とは社会への投資、将来への貯蓄と考えてるって、すごいな。椎名誠のエッセイを学者が著すならこのようになる、って感じ。

  • 2011年~2019年まで朝日新聞時評集
    二つの国民論や「枢軸国日本」と「日本」を区別する視点等面白い(T.N)

  • 2019.11―読了

  • 思ったよりエッセイだった。

  • 途中まで。こういうものに自分は面白さを見いだせないことが分かった。内容も古いものになっている。
    戦後=建国、という見方は面白かった

  • 遡る形でその時々の評論をまとめた本です。
    しっかり声を上げること、対話をすること、民主主義の原点だと思います。

  • 概ね面白く、というか、考えさせられながら読んだ。

    ただ、一つだけ強烈に違和感があったのが、P240からの「世界の解雇規制」だ。
    このトピックスでのテーマは、日本の解雇規制は、世界的にみて厳しいのか、という点である。
    全体的には、日本の解雇法制と欧米のそれとは、ベースが異なるので比較が難しいのではないか、という、なるほどそうだよね、という主張。これに違和感はない。
    違和感は、筆者が「整理解雇の四要件」に触れないまま、日本には、解雇に関する社会的ルールがないと主張している点。企業で、人事の仕事をしている人間なら、日本における解雇に関する社会的ルールはこれだと、ほとんどの人は答えると思う。解雇を扱う新聞記事にも頻繁に登場する。
    この四要件を知らずに解雇法制について論じているのであれば、単純に勉強不足。知っていて触れていないのであれば、不誠実。筆者の他の論考や著書を読む限り、前者だと思うが。

  • 「日本社会のしくみ」に続けて読む。
    この時評集に取り上げられている時評と縦糸で繋がっていると実感。

    横糸として「私たちはいまどこにいるのか」「私たちはどこへ行こうとしているのか」「論壇日記」辺りと通して読むと著者がその時々何を考えていたか感じる事が出来るのではないか。

    気軽に小熊英二の思索・文字の海に触れたい人にオススメ。

    ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。

  • (中略)その変動とは、人々の個人化が進み、関係の安定性が減少していく流れである。
    それは、人々が固定した関係を嫌い、自由になろうとすることで促進されている。

    この一文に喚起され、購入しました。
    著者は、この変化のプラス面とマイナス面を踏まえた上で、
    その変化そのものを批判しても、止めようがないと指摘しています。
    それよりも、そうした変動を前提とした上で、プラス面を活かしていく道を考えた方が、
    よいといいます。それは、過去の人々は、社会の制度や国の形を作り替えることで、
    「変化」に対処してきたからです。
    そして3つの、することを提起しています。

    ①現状のしっかりした診断が必要(何を、どう客観的に見るか(WHAT))
    ②その現象がどういう背景で起こり、どういう変化を示唆しているか
    (何が、どういう背景で起こったのか(HOW・WHY))
    ③今の変動そのものは、世界的に普遍に見られる。
    日本では、それがどう表れているか(Compared)

    情報が毎日洪水のように溢れています。
    何が時代を左右するのか、象徴するのか、また自分に大きな影響を与えるのは、
    どんどんわからなくなっています。
    そういう時に、やはり知識人の視点は、
    非常に参考になります。
    こういう大きな視点を持っている人は、どんどん少なくなっています。
    学問の専門性のさらなる細分化による弊害です。

    歴史社会学者は、社会変化を、言語化するプロです。
    やはり素人とは違います。
    その言葉を自分の生活に当てはめたり、
    今の変動やこれからの変化を予測したり、
    その原因の構造を勉強するのは、非常に有益です。

    現代は、個人が簡単にSNSで発信できるようになりました。
    ただ、それは、思考を伴った他者にとって有益なものかというと、
    そうではなく、単なる自己満足です。

    で、何か問題でも?の社会環境です。
    自身の生理的な反応(うまい、楽しい、凄い、悔しい)を、
    映像・言葉で発信するだけになっています。
    それを共有することを「シェアする」と言いますが、
    それをやり過ぎると、思考力を失うような感じがするのは、私だけでしょうか。

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著者プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授。
専門分野:歴史社会学。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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