歴史なき時代に 私たちが失ったもの 取り戻すもの (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 126
感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951236

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦、大震災と原発、コロナ禍、日本はなぜいつも「こう」なのか。「正しい歴史感覚」を身に付けるには。教養としての歴史が社会から消えつつある今、私たちはどのようにしてお互いの間に共感を生み出していくのか。枠にとらわれない思考で提言。

感想・レビュー・書評

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  • 『平成史』を読んで、興味を持った與那覇さんの著作。インタビュー、書評、時評を集めたものなので、歴史学界隈の人々や状況への怒りのような通底するものはあるものの、一冊の本として一貫したロジックや各章は薄い。一方で、公開された文章の集まりから、鬱病から回復し、教員職を辞して学会から距離を取り、文筆家としてポジションを確立しようとしているのはとてもよくわかる。歴史学の業界からは相当に煩さく思われているのではないかと思うのだが、こと「歴史学」に関しては、単なる古文書の解読に過ぎない実証主義を批判し、歴史学を現在の社会や個人の行動において過去の学びから何を提示すべきかを問う学問であるべきと規定する。そこに嫉妬や個人に対する先入観が混じっていないかは疑問ではあるが、そのポジションを敢えて選び取り、強く批判する側に回っているように思う。そのベースとなるのは、鬱病となるまでに突き詰めて考えたという経験と、『平成史』という世に問うた大作であるのだろう。

    ひとつ本書で繰り返し論点とされるのが、コロナ禍において行動の制限を躊躇いなく行った政府と、唯々諾々と受け入れたメディアを含む日本社会に対する、それでいいのかという怒りを伴う問いかけである。日本は人口当たり死亡率などコロナの影響度が相対的には少なかったにも関わらず、過度に政策を安全側に振り、それでいて誠実な説明と備えもなく経済活動を含む社会面で後々まで悪影響を与えるものを今だけの雰囲気で受け入れたというのだ。もちろん、この本はコロナにおいて最大の影響があった2021年夏の第五波の前に書かれたものではあるが、それでもなお與那覇さんは同じ主張を繰り返すことだろう。

    コロナ対策においては、たらればの話も含んでしまうし、戦力の漸次的投入を避けるべきだという戦い方の選択の問題でもあるし、いつまでもマスクを外さないという日本の社会的特性の問題もあり、単純な答えもなく万人にフェアな結論もない問題ではあるが、歴史学者としてひとつの確固とした主張を行っていることは評価できると思う。

    実際にコロナに罹って重症化してICUで人工呼吸器につながれた身としてもし言うとすると、それでも日本の自粛対応は過度であったとも思うのである。それでもなお、あれ以外の方法はなかったのかもしれないとも思う。もし今やるべきことがあるとすれば、きちんとこれまでの対応を検証することと、日本の医療環境や地方自治体・政府のDX化も含めて見直すことではないだろうか。

    敢えてお薦めする本ではなく、與那覇さんの本を読みたければまずは『平成史』など他の本を読むべきではないかと思う。ただ、與那覇さんの強い個が見える本ではある。

  • 歴史を考える場合に、時間軸を捉える意識が重要だとの主張が非常に心に響いた.コロナ禍に対処する学者の欠点を上げ連ねているが、人文系・理科系を問わず、視点が定まっていないことを嘆いている.その通りだ.第6章の対話、これは與那覇潤と浜崎洋介・先崎彰容・大澤聡・開沼博がそれぞれ議論しているのだが、登場する人物が凄い.柄谷行人、浅田彰、大澤真幸、福田恆存、山本七平、内田樹、高橋哲哉、上野千鶴子、江藤淳、加藤典洋、竹内洋、原武史、東浩紀、佐伯啓思などなど.それぞれの著作に目を通して議論しているのが素晴らしい.

  • 歴史なき時代とは、現代を生きる我々独自のものなのか。
    インターネットという21世紀の社会領域が、それを歴史上初めて作り上げてしまったのか。

    著者の嘆きやそれへの共感が内的感情の殻を破れないままでは、「歴史なき」という歴史自体も雲散してしまうはかない時代なのかもしれない。

  • 社会に対する視点はまず中庸ではあると感じた。

    ただ躁状態にある時の独善性と鬱状態にある時のぼやきには辟易する。YouTubeの配信等なら聞く気も起こるかもしれないが、今後も独善とぼやきが随所に出てくるのであればその著書を読むのはつらい。病状次第だとは思うが。

    後他の方も書かれているが、書評は掛け値なしにいい。読み返すのは書評かな。

    谷島屋書店本店にて購入。

  •  歴史の記憶が忘却されるスピードがあまりに速い。
     歴史が活かされていない。
     
     「共感の基盤」をという指摘は、確かに世の中を見る手がかりになる。

     「平成史」とともに読みたい。

  • 鋭い指摘が多く同感するが、少しボヤきすぎではと感じる筆致が多い。書評は大変参考になった。

  • 学んだ歴史をどう活かすのか、その本質を教えてくれる一冊。與那覇さんの文章は大変読みやすく芯がある。今読むべき本であり、今後も読み返す本となりそう。

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著者プロフィール

評論家

「2022年 『過剰可視化社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

與那覇潤の作品

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