京大というジャングルでゴリラ学者が考えたこと (朝日新書843)

  • 朝日新聞出版 (2021年11月12日発売)
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  • 本 ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951502

作品紹介・あらすじ

ゴリラ学者が思いがけず京大総長となった。世界は答えのない問いに満ちている。自分の立てた問いへの答えを探す手伝いをするのが大学で、教育とは「見返りを求めない贈与、究極のお節介」。いまこそジャングルの多様性にこそ学ぶべきだ。学びと人生を見つめ直す深い考察。

感想・レビュー・書評

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  • ここ20年来の大学改革に対する筆者の批判的論考と、本来できた学問、研究とはの筆者の考えが述べられた本。京都という独自の立ち位置ゆえに、今西錦司、和辻哲郎、西田幾太郎らを輩出し、ゴリラ研究者が総長に就くという事態も起きた。

    ゴリラなどの細かいエピソードに関しては他の本でも何度も出てきており、新味はないのだが繋がりの上では不可欠なのだろう。教育はとてもかけがえのない人間だからできる営みであり、その原点を考えるのにはよかった。

  • 京大総長、国大協会長、日本学術会議会長という三足のわらじを履いた“ゴリラ学者”山極寿一先生の新書(2021年11月発行)
    「国立大学法人化は失敗だった(p75)」
    と有馬朗人元文科大臣と同様に断言しているほか、
    ・大学設置基準の大綱化…「疑わしい」
    ・大学評価システム…「疑わしい」
    ・大学院重点化…「教養・基礎教育がおろそかに」
    ・大学改革強化経費…「自律的な大学経営など望むべくもない」
    ・学校教育法と国立大学法人法の改正…「大学の力を削ぐ結果に」
    ・3つの重点支援の枠組み…「失敗だった」
    ・期限付きの補助金…「失策と言わざるを得ない」
    など政府・文科省の施策を痛快に論断している。
    他方、自身の教育・研究を大学改革とは違った明るい筆致で振り返り、「大学はジャングルと同じように多様性と総合知によって成り立つコモンズだ(p228)」と“ゴリラ学者”ならではの気づきも述べている。
    「おわりに」のトドメとも言えるフレーズはイチ地方国立大学職員も全く同感である。
    「日本政府はいったい何を考えているのか。学長の権限を強め、学長の任命権を振りかざし、補助金をちらつかせて大学を意のままに操れば、日本の研究力や産業力が高まるとでも考えているのだろうか(p234)

  • 本人としては期せずして、国内トップ大学の総長となってからの教育への取組を攫った内容の本著。

    大学総長の業務の内実に触れることもそうそうないだろうから興味の導線としてはありがたいものだったが、
    霊長類学者の側面との折り合いがどっちつかずというか、
    率直にそちらのあれこれを知りたい衝動のほうが勝る読者の方が多かろうとも思い、ひとまず他の著作を漁ってみようとは考える。

  • ふむ

  • 著名なゴリラ学者が、本質的な思考でもって、教育や大学の在り方について語る。ベーシックではあるが、しっかりと響いてくる。

    人間の進化の戦略の中で、離乳期と思春期が生まれた。この時期を一人で乗り切ることはできない。だから、人間にとって、教育は本質的に必要なものだ。そして、未知への挑戦をする大学という場は、公共財なのだという認識が必要だ。大いに納得。

  • 大学における論点が明確にまとまっている。世界の大学事情もよく分かった。
    「京都大学の知を生かすために」に書かれた、西田哲学と今西自然学(霊長類学の始祖である今西錦司)の共通点、「あいだの論理」、四論(レンマ)、ハレの世界とケの世界、「見立て」などはとても興味深い。
    「古くて新しい思想」を利用して、世界を再構築することこそ、大学の役割ではあるまいか。との筆者の意見に納得。
    この10年で、いまある職業の半分がなくなると言われている。それを見越して、まだ現れていない夢を描き、それを現実にできる能力を磨くためのヒントといえるだろう。

  • 「第5章 私の教育論」で著者が述べている"高い共感力を育む教育"は非常に重要な視点だと感じた.人間の子どもの危険な時期が、長い離乳期と不安定な思春期であり、その時期に適切な教育を受けれるように配慮することが、人間社会の形成に重要である との指摘は的を得ていると思う.示唆に富む提言や、苦労話も含めた広範な活動記録も面白かった.

  • p.2021/12/4

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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