どろどろのキリスト教 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951991

作品紹介・あらすじ

全キリスト教史、超入門。教会誕生から21世紀現在のキリスト教までの2000年間を、50のどろどろの物語を通じて描く。キリスト教初心者でも読めるように、素朴な疑問からカルト宗教、今日的な問題まで盛り込んだ教養を高める読みものです。

感想・レビュー・書評

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  • 初代教会の誕生から現代に至るまで、キリスト教の変遷を辿る一冊です。
    信仰だけでなく政治や愛憎による理由で揺り動かされてきた宗教ですが、特にキリスト教においては戦争や内乱へ発展する事案が多いようです。
    カトリックは受けた迫害の苦しみを反動にして強固で敬虔な体制を貫いたために、他宗教との争いや同胞との分裂を引き起こしてしまいました。
    プロテスタントの増加が何よりもカトリックの力を削ぐこととなり、伝統を重んじる余裕がバチカンから失われていったのです。
    しかし公会議によりカトリックも時代に合わせて刷新されるものとなり、その姿勢は今も尚受け継がれています。
    無宗教ですが、歴史としてのキリスト教がどんなものかを知る上で役立った良書です。

  • 読みやすく面白かった。

  • もはや歴史の教科書です!
    世界史がどれだけキリスト教の分派に影響されているかがよく理解できます。プロテスタントの予定説が資本主義の発想に繋がっていく時代背景とともに読みとれて面白い。
    全知全能の神が定めたのだから現世の行いによって天国にいけるかは関係なくもともと決められている。→金稼ぎは卑しいけとだとしていたカトリックと違い、勤勉に働いて得た財は神からの恵みである。
    むしろ現代社会の成立が一神教抜きには考えられないと思わせる教養がかなり詰まってました。

  • 著者は推理小説を書いている作家。約2000年に及ぶキリスト教の歴史を、重要なエピソードごとに整理して、わかりやすくまとめている。著者はカトリック信徒であるが、プロテスタントを否定する論調に走ることなく書かれているのも、とても良いと思った。「無宗教」を自認する多くの日本人について語られている「あとがき」も共感するところが多く、とても興味深い内容だった。

  • 高校で世界史選択の方も宗教という視点から読み直してみると、
    歴史はめちゃくちゃ面白いというか「は!?」とか「なんでやねん!」「めちゃくちゃやろ!」と突っ込みながら読めると思います。

    新約聖書の成立には、教団内のグノーシス主義やマルキオンの偏りすぎた考えに対抗するために編纂された過程があったり、
    ローマで国教になったら、清貧を失い、それを嫌った人たちが隠遁して修道院を作ったら、またそれがブームになってしまって収拾がつかなくなったり、
    密接に、政治的なゴダゴダがいつも絡んでいたり、
    教皇が次々と暗殺されまくったり、
    十字軍で、同じキリスト教国滅ぼしてしまったりとメチャクチャです。
    免罪符(贖宥状)は手法がカルトそのものやけど、民衆もそれを望んでいたし、いわば「愛する人の先祖供養」のために心を込めて免罪符を買ってたんだなと思うと、また、そのお金でルネッサンスを後押ししたとなると、なかなか考えさせられます。
    30年戦争では、ドイツのカトリックvsプロテスタントの争いに首突っ込んだカトリックのフランスが、プロテスタントを支援して戦争を長引かせたり。
    そんな笑えるほどドロドロの負の歴史の中でも、
    アシジのフランシスコを筆頭とし、蛮族と対話だけで和解した教皇がいたり、十字軍の最中にイスラムと友情を結んだ皇帝がいたり、
    感動で涙の溢れるエピソードも。
    ドッロドロの中で、キラキラ輝く聖人たちの存在の尊さ。
    もともとは、アブラハムというたった一人の男から始まったユダヤ教、
    そこから出てきたナザレ派はいつのまにか、中東から出て、ローマを乗っ取り、ゲルマンに受け入れられ、紆余曲折の愛憎劇を2000年やってきて、
    それでも、滅びずになんとかやってきました。
    律法学者ガマリエルはこう言います。
    「彼らのことは放っておいた方がいい。もし彼らの計画や行動が人間の思いつきならすぐに自滅する。だがもしそれが神から出たものであったなら、あなたたちに彼らを滅ぼすことはできない。それどころかあなたたちは神に敵対することになる。」
    キリスト教の歴史は、控えめに言って、KUSOです(汗)
    でも、逆に、それで歴史の審判に朽ちずに残っているということは、その腐敗も耐え忍びながら神が支えてくださっていることの何よりの証左かも知れません。
    そして、それでも残ってきた「本物」は確かにあるのです。
    たぶん、世界の終わりまで、カトリックもプロテスタントもイスラムも仏教も神道も存続し続けると思いますし、残ってきた本物だからこその迫力もあります。
    自分は歴史の外側に出ていってしまって、安全で汚れのない立場から、自分とは異質のものとして批判するのは簡単で、そして卑怯だとも思います。
    人は歴史から切り離された存在ではあり得ないからです。
    大切なことは、「歴史の流れにいながら、歴史を背負って、少しだけでも良いものを次の世代に繋げていく」ということだろうと。
    まだまだ、二千年。まだまだ「初代教会」。
    「これから」です。

    西宮神社の宮司の家系に生まれ、カトリックとプロテスタントもどちらも筋が通っているためどちらを選ぶかに3年かかって、2020年に前者を選んで洗礼を受けたという著者。
    信仰を持つ者が書く歴史であるがゆえに、小説や劇のようにイキイキと登場人物の感情が伝わってきそうです。
    世界史学ぶ際にはこれ一冊あれば事足りる、、、かも。

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著者プロフィール

一九九六年、『コズミック』で第二回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。以後、小説だけでなく、ビジネス書、ノンフィクション、英語学習指南書など著作多数。小説執筆の息抜きとして始めた英語学習にハマり、独自のメソッドでTOEIC(現TOEIC L&R)テスト満点を五回達成。二〇〇九年から二〇一七年まで主宰していた「社会人英語部」では、のべ六五人の部員をTOEICスコア平均九〇〇点台にまで導く。日本人作家の小説を英訳して世界中の電子書店で販売しており、著者、英訳者、編集者として手がけた英語作品は一〇〇を超える。作家としての近著に『感涙ストーリーで一気に覚える英単語3000』(明日香出版社)、『きみと行く 満天の星の彼方へ』(リチェンジ)などがある。

「2020年 『三日坊主でも英語は伸びる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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