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Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784022952752
作品紹介・あらすじ
日本人が愛してやまない世界遺産。書店には世界遺産を扱った書籍や雑誌がたくさん並んでいる。しかし、よく知られていないことも意外に多い。そもそも、どのようなプロセスで世界遺産は選ばれるのか。どんな時に取り消されるのか。どんなカテゴリーがあるのか。選ばれることのデメリットはないのか。50年の歴史を持つ今、どんな問題点が発生しているのか。管轄するユネスコとはどのような組織なのか。ユネスコに20年以上勤務し、日本人としては唯一の世界遺産条約専門官である著者が体験してきた、アジア、アラブ諸国、ヨーロッパ、アフリカでの多くの現地査察や開発途上国の人々との協働。「すべては体力あってこそ」と思わず述懐するそれらの体験を通して、世界遺産が直面する問題と、ユネスコの知られざる真実を語る。世界遺産の世界に身を置いている著者による、国際文化政治の内幕。●著者略歴林菜央(はやし・なお) 日本人唯一のユネスコ世界遺産条約専門官。上智大学、東京大学大学院で古代地中海・ローマ史専攻。フランス政府給費留学生としてパリ高等師範学校客員研究員、パリ第四大学ソルボンヌ校で修士号取得、ロンドン大学で持続的開発も学ぶ。在フランス日本大使館で文化・プレス担当アタッシェを経て、2002年よりユネスコ勤務。ユネスコ・博物館プログラム主任などを経て現職。直接担当してきた世界遺産・博物館のある国はアフガニスタン、カンボジア、ベトナム、ラオス、スリランカ、バングラデシュ、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、イラン、エジプト、シリア、イラク、チュニジア、モロッコ、イスラエル、パレスティナ、サブサハラ諸国、ジョージア、ウクライナなど。●目次よりまえがき 「未来への贈り物」としての世界遺産 世界と個人をつなぐ物語としての世界遺産 なぜ日本人を惹きつけるのか? 1章 世界遺産の本当の魅力は「多様性」デスクワークだけでは終わらない仕事 ミッション遂行のため、巨大な洞窟をひたすら歩く 死がすぐ近くにある3日間 「水没の危機にあるアブ・シンベル神殿を何とかして救いたい」 採択からわずか3年で発効した「世界遺産条約」 映画キングコングの撮影場所となったベトナムの世界遺産 富岡製糸場、石見銀山は「産業遺産」 鉄道好きにはたまらない「インドの山岳鉄道」 自然遺産の一分野「海洋遺産」 保存と開発の問題を抱える「歴史的町並み」 「文化的景観」に選ばれた農地 世界遺産リストから抹消されたドレスデン・エルベ渓谷 危機にさらされている世界遺産(危機遺産) バーミヤンの大仏の復元は「正しい」ことなのか 「負の遺産」ではなく「記憶の場」 国境紛争のきっかけになった世界遺産「プレアヴィヒア寺院」 「その建物を除去したい」というリクエストに応えるべきか否か 日本がリーダーシップを発揮した「無形文化遺産保護条約」 世界遺産とは異なるシステム「世界の記憶」 2章 世界遺産はどのように選ばれ登録されるのかどのような流れで世界遺産は決まるのか 新規登録手続き―ギリギリで間に合
感想・レビュー・書評
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著者、林菜央さんは、日本人唯一のユネスコ世界遺産条約専門官です。
で、本作の内容は、出版社によると、次のとおり。
---引用開始
日本人が愛してやまない世界遺産。書店には世界遺産を扱った書籍や雑誌がたくさん並んでいる。しかし、よく知られていないことも意外に多い。そもそも、どのようなプロセスで世界遺産は選ばれるのか。どんな時に取り消されるのか。どんなカテゴリーがあるのか。選ばれることのデメリットはないのか。50年の歴史を持つ今、どんな問題点が発生しているのか。管轄するユネスコとはどのような組織なのか。
ユネスコに20年以上勤務し、日本人としては唯一の世界遺産条約専門官である著者が体験してきた、アジア、アラブ諸国、ヨーロッパ、アフリカでの多くの現地査察や開発途上国の人々との協働。「すべては体力あってこそ」と思わず述懐するそれらの体験を通して、世界遺産が直面する問題と、ユネスコの知られざる真実を語る。世界遺産の世界に身を置いている著者による、国際文化政治の内幕。
---引用終了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本人唯一のユネスコ世界遺産条約専門官である著者が、世界遺産への申請、登録、維持管理などに関する現状や課題について述べた一冊。
個人的に、世界遺産検定3級、2級を取得し、興味を持っていました。世界遺産に関する本は何冊か読んでいますが、これまでは世界遺産とは何かを述べた上で、その著者が薦める世界遺産を取り上げ、その歴史や成り立ちなどを紹介する内容がほとんどでした。それはそれで面白いのですが、本書のように、実際に世界遺産に関する仕事をしているかたの著書はひと味違う面白さがあります。
日本人が世界遺産を好きな理由、実際の現場の苦労を詳細に紹介している点は非常に興味深く、世界遺産を守る姿勢からは、都市開発にまつわる課題や、観光・経済との両立する際の課題など、身近な課題と共通点があります。世界遺産を訪問する際の心がけ、世界で働くことの意義、世界から日本人はどう見られているか、世界に出なくなった日本人に対する意見などは、このような仕事をしている著者ならではだと感じます。世界遺産が好きな人はもちろん、いろいろな人が読んでも楽しめる一冊だと感じます。
巻末のお薦め世界遺産もなかなかマイナーなものばかりでますます世界遺産の奥深さを感じられます。
○わたしたち一人一人ができること
・なるべく地元の、環境をいつくしむようなスタンスの事業者の経営する宿舎を探して泊まること
・地元の味を進んで紹介したり、ローカルの製造者を支援しているお店やレストランでサービスや商品を買うこと、食事をすること
・数日間一ヵ所に滞在して、地元にお金を落とすこと
・壊れやすい古い遺跡に立ち入る時は公式ガイドを頼むか、当局の出しているガイドラインに沿って訪問し、落ちているものを拾ったり持ち帰ったりはしないこと
・ごみは持ち帰ること
・滞在国によっては街中でもふさわしい服装を心がけ、宗教的施設や移籍や町の中で静かに行動すること
このような心遣いをしてくれる訪問者を、その国の人々は良く見ているもの
▼現代世界と未来にとっての世界遺産の価値とは物質的、美的なものには決してとどまらない、それを超えたところにある
▼世界遺産が、これほどまでに日本人の心を惹きつけるのはなぜでしょうか?
景色が美しいから。建物が素晴らしいから。珍しいから。世界遺産のブランドが付いているから。だけでは決してないと思います。
日本人は古代から、外からくるものを柔軟に受け入れ、生活や技術に取り込んで、より優れたものとして磨きました。また、万物の中に神々を感じ、和を重んじ、自然を抑圧することなく人間の技の精緻を極めてきたと私は考えています。
そのような在り方が、世界遺産を尊ぶという理念への共感を通じて、伝統を重んじつつ、新しいものを受け入れる世界各国の方法を知りたい、という好奇心を育んでいるのではないかと思います。
▼遺産管理担当の組織や政府当局が地域社会と協力しながら、保全に十分配慮することができれば、観光は遺産にも市民にも、貴重な財源となります。
保全に必要な経済収入を獲得しながら、地域全体の経済成長に貢献し、地域社会のアイデンティティと住民の生活を工場させることもできるのです。持続可能な観光とは、遺産周辺に住む人々に社会的、経済的、環境的な利益をもたらすような方法でデザインされる必要があります。だからこそ、世界遺産の保護に取り組む人々の責任は大きいのです。
▼世界遺産条約は、ご存じの通り政府間の約束事であり、条約の批准やそれに関係する活動を推進するのは究極的には独立国家の責任です。
しかし、これまで見てきたように、世界遺産の保全や活用は、そういった法律的な枠組みによって支えられている面もありますが、毎日遺産を管理するにあたってさまざまな問題に直面する当局や、遺産のある地域に居住する共同体や住民の皆さんなど、多くの利害関係者の生活を切り離しては考えられない面があります。
登録されることによって、周辺やより広範囲な地域に住む人々の経済状態や教育、慣習に大きな影響を与えている例がいくつもあります。それらのケースをひとつひとつ見ていくと、解決にひな型はなく、地道に共同体との対話を進めたり、建前でない本音の部分をどれだけ理解できるのか、ということも重要だとわからされます。
また、多くの国際的な問題への取り組みの上で、地域住民の存在が重要視される一方、政府間の枠組みを主体とするプログラムがどのように参加型のガバナンスを実行していけるのか、興味深い課題です。
▼その周辺にすんでいる人々に、どんな利益や幸福を生むことができるのか。また長期的視野で見て、世界遺産保護の義務を果たすことにどのように意義を感じていただくことができるのか。
それは、この地域を守る担い手である人々に関する大きな課題として、これからも世界遺産の挑戦であり続けると思います。
▼日本人に対する世界の認識は総じて良いものだと感じます。
それは、日本の国際協力や企業のお金が投下されているという以上に、仕事で、観光で、直接に関わった日本人への印象がそのまま、彼らの感じ方に反映されているからでしょう。
▼「最近日本人の若者はあまり外に出たがらなくなった」というような報道を読んだりすることがあります。それはけして悪いとは思いません。
自分のいるところに価値を見出し、できることをし、毎日を大切に生きることが、すべての基本にあると思います。
▼あらゆる文化や人間の営みの根本は、出会い、取り込み、形成され変容していく、そのダイナミズムと多様性にこそある
<目次>
まえがき
1章 世界遺産の本当の魅力は「多様性」
2章 世界遺産はどのように選ばれ登録されるのか
3章 世界遺産のメリットとデメリット
付録 私のお薦め世界遺産 -
世界遺産
全て巡ってみたい
1200あまり
SDGsに関わって、メリット・デメリットがある
それはそうだ
何事にも表と裏がある
世界遺産登録に関わって、たくさんの方の尽力に敬服する -
本の帯に書かれている表現からは、もうちょっとドロドロした内容を想像していたんだが、著者がユネスコ勤務の在職者であったせいか、まるでユネスコの広報誌を読んでいる感(どこからも文句を言われないように角を立てない表現)の内容であった。
世界遺産であることの必須条件とされる「顕著な普遍的価値」についても、本書の中で何度も出てくるが、それぞれの世界遺産に
対し、何がその価値に該当するのか、俗人にもう少し具体的なわかりやすさが欲しかった。 -
世界遺産の本当の魅力=多様性:
アンドレ・マルロー「人類全体の財産」
1975年世界遺産条約
世界遺産登録→主権国家にとって利益大
3分類ー文化・自然・複合遺産
圧倒的に多い文化遺産ー理念が文化遺産保護
意外と少ない自然遺産
日本には複合遺産なし
複合遺産ーメソポタミア文明の古代都市
保存と開発の問題ー歴史的町並み
負の遺産<記憶の場
どのように選ばれ・登録さるか:
暫定リスト・候補の9割が認定
基準ー顕著は普遍的価値・10の具体的基準の少なくとも1つを満たす・神聖性/完全性を証明&保存管理体制が万全
世界遺産とSDGs -
自身の体力自慢とか、調査に行ったことがあるとか、世界遺産と無関係な自慢?が見え隠れして不快。
また、説明不足で素人には意味不明な箇所も多かった。
客観的、網羅的な解説を期待していたが、著者の思いつきをダラダラ書いているだけの印象。読む時間がもったいなくて途中でやめました。読む価値なし、お金返して欲しい。
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