秋葉原事件―加藤智大の軌跡

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著者 : 中島岳志
  • 朝日新聞出版 (2011年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023309227

作品紹介

なぜ友達がいるのに、孤独だったのか?何が加藤智大を歩行者天国に向かわせたのか?青森から秋葉原までの全行程-。

秋葉原事件―加藤智大の軌跡の感想・レビュー・書評

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  • 「悪人」と「俺俺」を彷彿とさせる小説を読んでいるようだった。但しというかだからこそ、いろんな事実や環境・状況をつなぎ合わせて、著者の筆力をもって見事にストーリー化されており、著者の思い込みや決めつけもないとは言えないような。
    前日に被告の手記を読んだが「なぜ動機を盛るのか?」という項目で、本書や巷で言われている動機(母・学歴・外見・女・雇用等々)を本人はことごとく否定している(それはあんたのコンプレックスでしょ?と切り返しているのは見事)。ここは被告の言っている事もわからなくはない。なんでも平均からちょっとズレて不遇な人間だからって考えがそもそもオカシイ。そんな人間はいくらでもいるし。が、本人が真実を語ってるとは限らないし、かと言って犯行の遠因や影響は誰にもわからないし、本人が気が付いてないのかもしれないし。結局は外部がああだこうだと分析するだけなのかもしれない。
    事件当初は被告への共感があるという事が理解できなかったが、この本を読んで何となくわかった感じ。話としてはたいして珍しくもないやや不遇な孤独感・疎外感を抱えた青年(と言っても人間関係には平均以上に恵まれているような気さえするのでそこは逆に驚きでもある)であり、太宰治や尾崎豊的共感に近いのかな?という印象を持った。

  • 浦沢直樹の「MONSTER」と似た感覚を受けた文章があった。(後で引用登録する)

    幼少期の捻じ曲がった母親からの教育、愛情がここまでの人間、怪物を作り出してしまうことの恐ろしさを感じた。

    自分がこういう人間になる可能性があるような感覚は在特会とかよりは全然薄いけど、でも感じないことはない。

    でも、やっぱり自分の流れの何処かが違う方向に流れていたら、家庭もなく家族も疎遠になり、不安定な雇用、本音を言えない友人、戻れない地元、色々そうなっていたかもしれない。

    でも、どうなるかなんて、本当に分からない。

    何が突然自分の人生を変えて、そちらに向かってしまうのか…

    もっともっと彼を知る必要が、社会にはあるような気がする。

    P161とP200。

  • 2012.9.30読了。図書館で借りる。

    彼の闇は何だったのか知りたくて。確かに、母親からの虐待が彼を作り上げた原因の一つなのだろう。犯罪者の多くが親からの愛情を受けていない。人間を作り上げるのは絶対に親だと私は思う。だけど、その先を見た気がした。親が子を育てる前に、夫婦がどう向き合い、そして子供を育てるか。人を一人世に生み出すって凄い責任なんだと。
    加藤が事件を起こした日、自宅前で会見した両親がとにかく印象的だった。泣き崩れる母親を支えるようで支えない、父親の行動がとにかく気になったのだ。
    読んでみて、なるほどこういうことだったんだな、と。

    びっくりしたのは、彼には友達なり先輩なり、心配してくれて、声をかけてくれる人がいたこと。
    人との付き合い方がわからないのか、誰も信用していないのか。
    ただ、やっぱり残念なのは、彼には帰る家がなかったこと。

  • こういう若者いっぱい知ってる。つらいなぁと思う。わからない部分も含めて真摯な本だと感じた。母親の存在の大きさ、友達の存在、ネットのつながり、派遣という働き方、だれだってこの人になる可能性は0じゃない、と同世代として思う部分もある。

  •  幼少から事件を起こすまでほぼ正確に彼という人間が描かれている。
     読み終わって、ネットで彼の写真を検索して見たら悲しくなって泣きそうになった。
     日本中に彼の抱えていた孤独に共感する人たちがいる。私もその1人だと強く感じた。日本の社会には孤独を感じる要素がたくさんある。感じない人の方が少ないのではないか。重なる部分があるから共感する。事件を起こすほどの孤独はもはや病気の一種ではないかと思った。



     彼は根は悪い人間じゃない。性根が悪ければ昔からの友達は離れていっただろう。そばに理解者がいなかった・・彼が心を開けなかったことが問題か。本音をぶつけていれば、昔からの友達は理解者になった可能性が高い。自分以外の人間に心を開くのは難しい。答えがあるなら私にも教えてもらいたいくらい。        


     人間の人格を形成する最も身近な存在は親。やはりそこなんだ。親の子どもへの接し方で大部分決まってしまう。固まってしまった性格から脱却するのは簡単じゃない。親のありかたはすごく大切。    


     依存は人にしちゃいけない。心あるものに依存したら絶対自分という人間が壊れる。依存するならモノにすればいい。心の無いもの。趣味が1番いいと思う。人は嘘をつくし裏切る。あくまで依存しては駄目だということで、本音を見せたら駄目ってことではない。依存は駄目。

  • どこまで加藤の動機を描けているのか
    わからないけれども
    テレビの「動機の見えない犯罪」といった説明より
    はるかに説得力がある。

    ひとひとりが
    異常な犯罪に走るには
    本1冊分の説明が必要ということだ。

    犯行前に
    感じのいい店員のいる店にわざわざ出かけ
    何かを期待して雑談をする加藤
    風俗店にひととのつながりをもとめて
    2度出かける加藤に
    共感を覚える人間がたくさんいることは
    さほど不思議なことではない。

    この本の感想というわけではないけど
    本というメディアは
    なににも代えがたい。
    そう思った。

  • 淡々と事実を積み上げていくことで、加藤容疑者がどうして事件を起こしたのが読者に考えさせる内容になっている。
    一読して感じたのは、加藤容疑者が事件を起こさない可能性も幾ばくかはあったということ。そして、引き留める可能性があったのは、(やはり)人と人のつながりであることに深く考えさせられた。どんな人にもチャンスはある。でもそのチャンスをチャンスととらえられるかどうかはまた別であるということに言葉がない。

  • 読んでいてジェットコースターに乗るような、そんな気分がした。親、友人とのわかちあいがあり、そこからハッピーエンドに終わらない人生の激しさ。この本の中には人のストーリーは実際に肯定で終わらない恐ろしさをはらんでいる。
    実際に起きたこの事件を、自分のなかでどのように噛み砕き、そして飲み込むのか、問われる一冊であることは間違いない。

  •  秋葉原の歩行者天国で無差別殺傷事件を起こした加藤智大の事件までを追った内容。Webで好まれる短文や単語の羅列、体言止めを多用したテンポのよい文章で、事件報道っぽく事実とするものの輪郭が描かれている。

     で、本著で描かれている加藤智大の輪郭が確かだとするなら、そこにはハンニバル・レクターのような人物ではなく、母親に愛されなかった、わりとよくいそうなネクラな男がいることになる。著者は加藤智大について、リアルとネットが反転した人物ととらえるが、おそらくそこは違う。著者が描いた加藤智大の輪郭は、リアルでもネットでも母親を求めている子供であろう。リアルとネットでは、他人との距離感や他人の反応の仕方が違うので、加藤智大自体の行動も異なるものの、本質的に求めている部分は同じに見て取れる。

     考察部分やどうしたら事件はなくなるか? といった話については疑問は残るものの、輪郭を描くという地道で労力のかかる部分はシンプルに興味深い内容と思う。読んでいて面白かった。

     そうした一方で、読みながら絶えず頭の中でモヤモヤしていたのは、犯罪者を理解しようとする人の心の働きだ。読み手に、凄惨な事件を起こした犯人への同情を抱かせるような感覚が残る。恣意的にそういった内容になっているわけではないが、人を理解しようとすれば、どこかしら共有する部分に出くわすからかもしれない。

     加藤智大は秋葉原で7人を殺し、10人に傷を負わせた。「7人を殺し、10人に傷を負わせた」の短い文章の中に、17人の人間とその家族、恋人、友達がいて、犯人ほどには詳細に描かれることのない、人間の“強制終了された人生”がある。割り切れないし、やりきれない気持ちになる。

  • 秋葉原の歩行者天国で凄惨な事件を犯した加藤智大。彼について、断片的ながらもプロフィール(派遣切りなど)を知るにつれて同情心が自分の中に生まれたことを思い出す。その同情心はどうして生まれたのだろうとずっとそのことが心の中に疑問として引っかかったままだった。
    そして出会ったこの本。なぜ加藤はこのような事件を犯さなければならなかったのか?加藤の成育した家庭(特に母親との関係)、社会に出てからの経歴、と著者は丹念に取材を重ねる。読み進めるうち、疑問を解明すべく著者と一緒に旅をしているような感覚になる。
    家庭が人格形成に及ぼす影響力の大きさ、ネット空間と自己表現、孤独、生身の人づきあいから生まれるかも知れない治癒力…読書の間、そんな言葉がテロップのように脳裏をよぎった。

    読了後も著者との旅を続けたいと思う。(W)

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