タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!

制作 : 藤井清美 
  • 朝日新聞出版
4.09
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本棚登録 : 250
レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023310025

作品紹介・あらすじ

タックスヘイブン(租税回避地)が、犯罪の世界と金融エリートたちを、外交・情報機関と多国籍企業をつないでいる。紛争を促進し、金融の不安定を生み出し、大物たちに莫大な報酬をもたらしている。それは、まさに世界を支配する権力の縮図なのだ。

感想・レビュー・書評

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  • ユーロドル市場の意味が目からウロコのようにようやくわかった。シティがなぜ今も金融の中心なのか、ケイマン諸島という言葉だけしか知らなかったオフショアの世界が、歴史や背景を知ることで実感できるようになった。

  • 歴史の嘘がまかり通るのはカネの流れを明かしていないためだ。人類の歴史は「戦争の歴史」といってよいが、戦争にはカネが掛かる。武器を購入し人を集めるには融資を必要とする。その負債の流れを辿らなければ歴史の真相は見えてこない。
    https://sessendo.blogspot.jp/2016/07/blog-post.html

  • 世界の貿易取引の半分以上が、少なくとも書類上はタックスヘイブンを経由している。全ての銀行資産の半分以上、多国籍企業の海外直接投資の1/3もオフショア経由だ。タックスヘイブンと言うとケイマン諸島のような産業のない島国が思い浮かぶ。本書の原題はTreasure Islands、宝島だ。しかし現代の宝島があるのは意外な場所だった。

    税率が低いと言うことだけがタックスヘイブンの要件ではない。むしろ法人の設立が容易で「誰が」その法人の実質的な持ち主なのかわからない守秘法域であることが金を呼び寄せている。世界の守秘法域で中心的な役割を果たすのは3つの地域で1つめはスイスに代表されるヨーロッパ、2番目はシティ・オブ・ロンドンと大英帝国につながるネットワーク、3番目がアメリカでそれ以外の地域はあまり重要ではない。多国籍企業はタックスヘイブンに利益を落とし、租税条約にもよるがタックスヘイブンの低い税率を払った後で配当金を送れば企業にとっては合理的で合法的な税金対策になり、配当に課税されるとしても少なくとも送金しなければ税金の繰り延べ=政府からの借金と同じ効果を持つ。銀行もオフショアを利用して準備金規定や他の規制を回避し借り入れを増やし信用を拡大した。オフショアからの借り入れと利息の支払いがプライベート・エクイティのビジネスモデルの根幹になっている。コスト(利息)はオンショアで課税所得から控除し、利益は税金のかからないオフショアにおちる。

    スイスは大戦中英米の反対をよそにナチス・ドイツとの取引を続けた。戦争資金を貸し付けるだけでなく、アウシュビッツで殺されたユダヤ人やロマから略奪した金塊を保管し秘密を守った。1938年エステル・サピールと言う女性が収容所内で亡くなった父親の預け入れ伝票を持ってクレディ・スイスに行った際に言われたセリフがこうだ。「お父上の死亡証明書を見せてください」。サピールが遺産を手に入れたのは98年だ。スイスは依然としてアングラマネーの世界最大の保管場所の一つであり2007年には3兆ドルを受け入れたがヨーロッパからの資金の80%が申告されていない金だ。

    第二次世界大戦終了時に7億人以上の外国人を支配していた大英帝国の領土は1965年にはわずか500万人に縮小していた。経済の中心はアメリカに移るが57年の時点ではポンドは世界の貿易の40%を占めていた。イングランド銀行の外国為替部門の責任者ジョージ・ボルトンがやったことは傍目にはわかりにくい。55年頃からミッドランド銀行(現HSBC)が為替管理令に違反する米ドル預金を受け入れていた。政府が銀行に対してポンド建て国債融資に制限をかけられるように規制をかけた際、銀行は単に融資をドルに切り替え、そしてイングランド銀行は規制をせずなおかつ他国からの規制も防いだ。これがユーロ市場というオフショアの誕生だ。1986年の金融ビッグバンはこのビッガーバンの付け足しだというほどだ。そして大英帝国が崩壊した後に残った海外領土は守秘法域としてシティのネットワークにつばがり、金融帝国がひっそりと生残った。

    アメリカの銀行は2005年まで海外の犯罪資金を自由に受け入れることが出来た。マイアミは中南米向けのスイスだった。アメリカは従来貸し出し金利を厳しく規制していたのだが78年に新しい時代が始まる。州ごとに決められた上限金利に関して税率18%のネブラスカの銀行が12%のミネソタ州の住民に貸し出す、つまり金利を輸出することが合法だと裁定がおりたのだ。つまり一つの州が上限金利規定を廃止すればそれは事実上全米に波及することになる。これに眼を付けたのがデラウェア州知事のピート・デュポン、80年に再選されたデュポンはデラウェア記入センター開発法に署名し(レーガンの大統領選の争点にはならずデラウェアの民主党も協力した)クレジットカードやローンの上限金利は撤廃され、住宅差し押さえの権利を手に入れた。事務所はオフショアの守秘法域に守られさらには逆進的な税制度も受けられる。アメリカの公開企業の半数以上、フォーチュン500企業の2/3がこの州で登記されている。つまりデラウェアの州法に従って社内のしくみが作られ得ていると言うことだ。アメリカで2番目に小さな州のデラウェアは1899年の時点でデュポン一族の圧力を受け寛容なビジネス規定を制定している。

    自由貿易に賛成しながら資金の自由な移動には規制が必要だと考えていたのがケインズだ。アメリカがお膳立てしたブレントウッズ会議でケインズはIMFと世界銀行を自分の望む姿ーグローバルな金融不均衡を自動的に是正するしくみを監督し、政治(アメリカ)の介入を排除するーには出来なかった。会議では国際記入から高利貸しを追い出すことには成功し、国境を越えた資本の移動への規制は70年代までは守られた。1940年から70年まで途上国での金融危機は一度もなく、16回の通貨危機に見舞われただけだった。73年以降では金融危機は17回、通貨危機は57回におよぶ。アメリカの平均的な労働者の賃金はインフレ率を補正すると2006年には70年より低くなっており CEOの年収は30倍から300倍に跳ね上がった。金融の自由化が経済成長を支えたという証明は出来ていない。資金逃避はOECDではなく実際には発展途上国で起こり、ODAの一部はオフショアに消えている。タックスヘイブンのブラックリストも自主的な改善目標の公約だけで骨抜きになっている。

    結局のところ現代の宝島の所在地はシティとマンハッタンだった。中国は上海に続いて天津、福建省、広東省にも自由貿易区を作ろうとしているが実際に進められているのは金融の自由化だ。この本を読むと汚職の金を送金しやすくするのが目的のように思えてくる。

  • とりたてた産業を持っていないイギリスが、何故これほどまでにグローバルマーケットで力を持っているのかがようやく理解できました。
    その理由は、ロンドン中心部のたった二キロ平方メートルに位置する「シティ・オブ・ロンドン」を中心とした世界に広がるタックスヘイブンネットワークにあります。
    シティでは企業に投票権が与えれれており、それは住民の9,000票をはるかに上回る23,000票であり、しかも従業員の意思を考慮に入れる必要がないことが法律で決められています。
    シティは金融企業によって運営されている世界最古の自治都市なのです。
    グローバル企業の有価証券報告書(M銀行とか、Sバンクとか)をみてみると、非課税である「英国領ケイマン諸島」に所在する関連会社がいくつも存在していることが分かります。これらが、「シティ・オブ・ロンドン」の収入源になっているのです。

  • ケイマン、バハマといったエキゾチックな島の話ではなく、イギリス、スイス、そしてアメリカといった先進国が作り上げた巨大なシステムであり、文化である、といった主張を具体的な(推計ではあっても)データ・事例・インタビューによって裏付けている。そのシステムの根幹が「守秘」であるという事実は、「タックスヘイブン」という言葉にボンヤリともっていた「ルールの裏を書いて節税」というイメージを根底から覆した。(原著をダラダラ読んでたら翻訳があることに気がつき図書館で借りて読んでしまった)

  •  タックスヘイブンの仕組みなどに触れた本はいくつもあるが、この本ほどその実態に切り込んだ本はないだろう。それでも全貌は皆目分からず、闇と題しているのだ。
     大金持ちと一般人の資産格差が広がるのも、大金持ちほど税率が低いのも、すべて合法的なタックスヘイブンを利用しているからであるという。ときどき、海外の資産把握を高めたとか、スイス銀行の悪人の口座を明らかにさせたなどの報道が出て、タックスヘイブンが解消ないしは内容を把握する方向にあるのかと思いもあったが、資産格差の広がりがさらに進む現状は、実は逆に闇が広がっていると考えるべきなのだ。
     富を貧しいものから富んだ者へ流れるこの仕組みは、外国貿易の頃から始まり、先進国も途上国も政府高官が得をするので解消するのは容易ではない。この本でもその方法を提案しているが、実現できるのだろうか。
     これほどに内容が充実していて興味深いにも関わらず、読みにくいというか、頁が先に進まないのはどうしてだろう。慣れない言葉が多いせいだろうか、自分に縁のない世界の話だからだろうか、それがマイナスポイントである。

  • もしこの世界が何百年も前から「あるシステム」の下で、「ある一定の人たち(一族)や利害関係者」によって、動かされている世界であると考えれば、納得出来る事が多い。資本主義そのものについて考えられるし「そもそも」という観点から金融以外の物事も考えられる。

    現代の金融、世界経済、政治動向、貧困、戦争やテロリズム、その他を語る上で、タックスヘイブン(オフショア)を知らずに語られると実にチープに聞こえるし「あぁ、この人は何も分からず目先の事だけを語ってるんやなぁ〜」という印象を持つことになる1冊。

    直近のG20でも議論されたタックスヘイブンについて記述されている。ジャーナリスト視点からの本なので、書き方がアンチタックスヘイブン。

    善し悪しはあるものの、少し穿った見方がされているなぁ〜という印象。タックスヘイブン自体は合法で、そこを活用するかどうかは企業や個人、投資家の判断にしか過ぎない。また、これは歴史が証明している事で、「歴史的に」連綿とタックスヘイブンは続いているという事実。

    また、日本の投資家が日本の投資信託で運用しているものも、元々はタックスヘイブン(オフショア)を経由してきているので、タックスヘイブンそのものを無くす無くさないという議論自体は実に不毛である。

  • オフショア取引やタックスヘイブンに関する知識がなければ、この読みにくく分かりにくい膨大な文章は、結構キツい。このシステムが世界の富裕層をさらに富ませ、貧困国の窮状を助長していることは、なんとなくわかったような気にはなるのだけど。

  • あらゆる形で抜け道があり富が収奪されているのはわかったけど、全部整理するのは難しい。。話題の本にしてはとっつきにくすぎる。必要になったらもう一度読めばいいかなという感じ。

  • 日本経済新聞社エコノミストが選ぶ2012年経済図書ベスト10 第六位

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