毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 144
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023310810

作品紹介・あらすじ

"ブス"をあざける男たち。佳苗は、そんな男たちを嘲笑うように利用した。「週刊朝日」で話題沸騰の著者、渾身のレポート。

感想・レビュー・書評

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  • プロの結婚詐欺師は凡庸な容姿であることが多いらしい。並より美しければ、多くの異性を惹きつけられるがサクラや詐欺の疑いをかけられやすく、醜ければ大多数に相手にされない。

    「木嶋佳苗」は不美人であるが故に、彼女が騙し取ったとされる金額の大きさや容易く騙された被害者の男性たちに対しても、たくさんの疑問が投げかけられている。「美人でないのにどうして?」「出会ってすぐに求婚されるほどの魅力があるのか?」「なぜ被害者たちはすぐにお金を渡したのか?」など。。。

    傍聴記録、ではあるがこの本は著者の主観に因るところが多く、読むうちに被害者の男性陣への同情よりも「木嶋佳苗」という女性に対しての興味がかき立てられてしまう。

    もちろん人の命を奪うことは罪であるし、嘘八百・時には身体も投げ出し、使い捨てるように複数の男性から金銭を騙し取ることは宜しくない。
    だが、長年女性に縁がなかった男性たちにとって、一回りも年下の女性と運命的な恋に落ち、心尽くしの手料理を味わい、騙されたという確証もなく、幸福な甘い夢のなか、「醒めない」永遠の眠りにつけたことは、一種の幸福なのではないか。そういった意味で「優しい」事件のように思えてしまった。

    恋の終わり、愛の終わりを知ることなく、相手の冷たい本心にも気づくことなく。。。遅咲きの幸せのなかで亡くなった彼ら。

    アラサーの女性は大抵、ただ待っていても白馬の王子様は迎えに来てくれないことに気づいている。しかし男性は40を越え50を越え、老年になってもまだ手前勝手な夢を見ている。木嶋佳苗はそんな男性たちの夢を叶え、そして奪った。

    毒婦。私もまた毒されているのか…。

  • 率直に言って、この事件にも木嶋被告にも余り興味はなかった。
    それなのに、この本を手に取ったのは、著者のこの事件を見る「視点」に信頼を抱いたからだ。
    著者は前書きにこう書いている。
    「これまで、女性の犯罪者には、どこか同情できる面が必ずあった。たとえ幼い我が子を殺した女性にだって、もし私が彼女の立場だったならば・・・と想像を働かせるのは難しくなかった。(中略)それなのに、そういった共感や同情を、私は木嶋佳苗に、一切持たなかったのだ」
    私も全く同じである。
    木嶋被告に対し、自分とは全く違う価値観を持つ女性、自分とは違う世界に生きているような女性だと思っていた。
    しかし、本書を読む限り、木嶋被告は紛れもなく私たちと同じ現代の日本に暮らす女性であり、彼女の犯したとされる犯罪は、現代日本の性愛と結婚を具現化したものに他ならないと思えてならなかった。むしろ、彼女に比べ、私はなんと甘ちゃんでロマンチストなのだろう!と打ちのめされさえした。
    著者も書いていることであるが、木嶋被告が裁かれているのは、彼女の犯罪だけではない。彼女の性愛観、結婚観も問われており、そこからの逸脱が裁かれているのだ。
    この本のもととなった週刊誌記事の連載中、著者は「女目線の記事」との批判を浴びたらしい。この本が女目線であるのなら、この事件の裁判は、徹底して男目線ではないだろうか。有罪・無罪は別として。

    この本を読み終わった今なお、私にはやはり、木嶋被告は「理解出来ない」存在である。しかし、読む前よりずっと近くに、彼女を感じている。背筋が寒くなるほどに。

    ところで、この本の帯には「“ブス”をあざける男たち。佳苗は、そんな男たちを嘲笑うように利用した」とあり、マスコミも木嶋被告を散々、「ブス」「デブ」と罵ってきた。
    しかし、この本を読む限り、木嶋被告は自分のことを「ブス」とは思っていないのではないか、という気がしてならない。美人とも思ってはいないだろうが、彼女は「女としての自分の魅力」に揺るぎない自信を抱いているのではないだろうか。

  • 木嶋佳苗の不気味さもさる事ながら、この社会における女性と男性の不均一さの感覚を筆者の視点を通して気づかされた。まるで幸せを噛み締めてさせた上で命を奪うことを義務とされた死神のように人の心を弄んで、それによって自分がすり減ることも厭わない、そこまでの強さをどんなふうに身につけたのか。家庭環境にそれを求めているが、それで説明できるわけでもない。殺された方にも、殺した側にも広がる闇。そう、深く、暗い闇。

  • 『なぜ、男たちは彼女の『毒牙』に次々とかかっていったのか?―』本書は「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告の100日間にも及ぶ裁判の傍聴記録を筆者からの『女性からの目線』で綴った物です。

    彼女の事件については朝や夜のニュース番組で断片的に少し知るくらいでありました。裁判のイラストでの木嶋佳苗の着ている服ですとか彼女の赤裸々なまでの『ヰタ・セクスアリス』についてですとか、『男性からお金をもらうのが、当たり前だと思っていました』などの発言を聞くくらいで、特に関心は払っていなかったのが正直なところでございました。

    しかし、こうしてまとめられたものを読むと事件の裏にある男女の深い『業』といいますかなんと言うのか…。ノンフィクション作家の佐野眞一氏は『名前以外は全てがウソ』と切り捨てつつも『東電OLを超える存在』とうなっていた理由がなんとなく判るような気がしました。事件のあらましは肉体と結婚をちらつかせて男たちから1億円以上もだまし取り、3人の男を練炭で殺害したとして死刑判決を受けた木嶋佳苗被告。本書は彼女の100日間の裁判の様子を傍聴した記録です。

    「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告とは、どんな人物なのか。それを同じ女性からの視点を軸として裁判の様子と彼女の故郷である北海道別海市への取材を重ねた上でかかれており、すらすと読めはするのですが、男女問わず誰かもが思っているであろう疑問『決して美人とはいえない容姿で、何人もの男を手玉に取れた理由』は結局わからずじまいでありました。しかし、彼女に『籠絡』された男たちには同じ男として大いにシンパシーを感じつつも、まるで蟷螂の交尾よろしく『がんばって』いるオスを頭から食い殺すがごとく、自分の性をはじめとして料理のスキルからなにから使える武器は全て使い、『自分を大切にすることとはカネを出すことだ!』といわんばかりにキャッチセールスのクロージングのように自分と交際を迫る(お金を引き出す)手練手管の数々には、正直言って度肝を抜かれました。

    さらに、北海道別海市に飛んで木嶋香苗被告家族及び18歳までの生育暦になると、『保守的で排他的で閉鎖的な環境』からなにが何でも抜け出したいという叫びにも似た欲求と家族や周囲との不協和音。そして早熟な彼女の『性』に関するうわさ…。心底彼女は生まれ故郷が嫌いだったんだなと。そこから抜け出して二度とそこへ戻らないために自分の『性』を商品化して「デイ・トリッパー」よろしく男から男へ…。というなりふり構わない人生へと突入したのではなかろうか…。彼女がとった手段に関して決して同調できませんが、おそらくはこういうことなんだろうなというのが現段階の彼女に対する『思い』です。

    そして、驚いたのが『東電OL』のときもそうだったように彼女の生き方に『共感』を覚える女性が一定数存在してこと。これにはしばらくの間腕組みをして考え込まざるをえませんでした。本書の最後の方で、フェミニストで有名な上野千鶴子女史が彼女の事件を評して『援交世代から思想が生まれると思っていた。生んだのは木嶋香苗だったのね』とおっしゃっていたのがとても印象に残っております。彼女の起こした事件は今後も繰り返し扱われると思いますが、彼女への理解は別として、この本にはぜひとも一度は資料としても目を通す価値はあるかと思われます。

  • ものすごく騒がれた事件。当時はあまり追ってなかったけど、こうしてまとまったものを読むと改めて壮絶な事件だったと感じた。そして壮絶さを感じさせないところがまた凄い。

    傍聴し続けた著者に、上品さを感じさせたり、殺人事件でありながら、被害者からも、その遺族からも怒りや怨念よりももっと安らかな何かが感じられたり、とにかくおかしな話だ。

    北海道の片田舎で、母と仲たがいし祖母の家で暮らし、中学の頃から援交の噂が流れていた。他人のクレジットカードを盗んだり、前科あり。真面目な父は後に自殺。父の頭の良さと、母のずれているところを受け継いだ。

    (こいつ矢に貫かれてスタンド使いになったら半端ないスタンド使いになるぞ。。。)

  • 木嶋佳苗被告の事件には個人的にずっと興味をもち、あらゆる報道を観てきた。中でも週刊朝日の北原みのり氏の裁判傍聴記は、著者独自の目線が光り面白く、毎回楽しみに読んでいた。それが1冊になったのが本書である。

    まったく美しくないのに異性からやたらとモテる人間というのが、男女問わずたまにいる。一方で私は、人様からたまに美人と言っていただけることもあるので、一応客観的に見て十人並み以上くらいの容姿を持っているようなのだが、まったくモテたためしがない。人生に3回あるというモテ期はもう来ないと諦めているほどだ。だからなのか、「美しくないのにモテる人」がすごく嫌いだ。要は嫉妬である。

    もちろん容姿を補ってあまりある他の才能や人徳があるなら別だが、木嶋佳苗はその点でいえば(殺人については否認しているが)勘違いセレブ気取りの詐欺師で、人間的にも最悪である。そんな理由もあって、最初にこの事件について知ってから、彼女のことが気になって仕方がなかったのだ。

    ところが、この本に書かれた裁判での彼女の言動、騙された被害者たちの人柄や行動や言い分、さらには彼女の手書きの手記などを見るにつけ、木嶋佳苗は容姿を補ってあまりある恐ろしい「才能」を持っている女だということがわかる。この才能をもう少し前向きなことに使えば、成功者になれたかもしれない。あるいは、彼女が働きたくないのなら、大金持ちは無理かもしれないが小金持ちの実業家くらいは捕まえて本当に玉の輿に乗れたのではないかと思う。しかし、そんなものでは満足しきれないどす黒い欲望と、虚像の自分を演じることへの快感。それらを捨て切れなかったから詐欺に走ったのだろうか、と私は勝手に解釈した。

    ただ、本書を通して読んでも、彼女が何を考えているのかはさっぱりわからない。また、彼女を嫌悪する気持ちも変わらない。しかし、嫌悪と無関心は違う。ますます木嶋佳苗という人から目が離せなくなったように思う。彼女自身の語る言葉をもっと聞いてみたい。

  • こういう本があるということは以前から知っていたものの、読もうとまでは思ってなかった。今回「読もう」と思ったのは、先日観に行った「"記憶"と生きる」の土井監督が北原みのりさんとトークをするということで、どんな人なのかを知るためにこの本を読み「すごく面白かった」と言ったからだ。「自分が同じものを見ても、こんな風には書けないだろう」と。

    実はこの事件自体、わたしはよく知らなくて、最初は「カレー毒殺の人」と混同してたし(時期が随分違うなとは思って違う事件と認識)、テレビで取り上げられようがネットで話題になろうが、全然興味がなかったので、この人の顔すら知らない。「不美人」「ブス」って言われてたんですね。

    「女の人って分からない」とはもうずっと前から思ってたけど、きっと木嶋さんはわたしから見ると典型的にそんな人だと感じたし、それを見てあれこれ感じて書いている北原さんもわたしは「分かんない人」の範疇に入ると思っている。「分からない」を具体的に言うと「複雑すぎて分からない」のです。もっと具体的に言うと「思考回路が複雑すぎて分からない」のです。要するに同じものを見ても、感じ方が違う。なぜそんな風に思えてしまうのかすら分からない。わたしは、女性に対してずっとそういう風に感じてきて、それをずっと避けてたというところがある。


    といえど、わたしは男性でもないので、男性の感じ方も分からないのだけどね。特に男性の「無自覚な暴力性」はわたしは持つことができないというか、それはどうしてもわたしが「女性」としてこの世に存在しているからだろうけれど、そういう意味ではわたしは「女性の論理」も「男性の論理」も理解することはできないのです。

    木嶋さんが犯行を否認している以上、この一連の事件の犯人だと断定しては語れないのだけど、しかし、もし仮に全部この人がやったのであれば、わたしは「逮捕されたくて」やったとしか思えない。自分が警察から目を付けられているのを知りながら、新たな男性を捜し、その男性と一緒に住み、その家の火災報知器を全部切って新たに練炭を購入する、なんて、わざわざ「わたしが怪しいです」って言ってるようなものじゃん。なんだかよく分からないけど、この人は自分のやってることが自分で止まらなくなってたんじゃないかと思う(この本にも「止められなくなったのでは」とは書いてあるが)。まぁだからといって木嶋さんはその行動を「とめたい」とか「とめてほしい」と思ったかどうかはわたしは分からないが。

    裁判の様子、こういうのが日常なのかなあ。だとしたら、真相解明という方向性なんか皆無に等しいのね。「身体を代償としてお金を稼いでいた」「複数の男性を騙していた」「金の使い方が荒かった」という「常識的な批判」で解決するには複雑すぎる事件ではなかったのか。この人が何を考え、どうしてこのような行動をしたのかが深く問われることは皆無だった。そんな「状況証拠」ばっかりで「表面的」なもので死刑判決が出ちゃうんだね。

    きっと、この木嶋さんは説明するのに疲れちゃってるのかなと読みながら思った。きっと自分の考えは他の人には理解されないだろう、ということを産まれてから34歳になるまでずっと感じながら生きてきたんじゃないかなって。だからこそ裁判での木嶋さんの態度は「自分のこと」とは思えなかったんだと思う。なんかどこかで「自分の虚像」について上でうにゃうにゃ言ってるな、くらいの認識で。「どうせ自分の本当のことは誰にも分からない」「誰にも分からなくてもいい」って思ってるんじゃないかな、ということを、北原さんの木嶋さんに対する描写を読みながら、強く感じたんだよね。

  • 「中出しはいわれたままにするのに、結婚は親に反対されらからダメなんておかしいよ!」という傍聴人女性の会話に尽きる。結婚を夢見て木嶋佳苗を愛したまま殺されたとされる被害者男性。もし加害者と被害者の性が反対であったなら、この事件はどのような差があったのか容易に考えることができる。

  • もう5年も前のことなのかと時間の早さに驚くが、婚活サギなどと言われた木嶋佳苗の裁判の傍聴記。

    そんなにワイドショーもみないし、週刊誌も読まないので当時の記憶はさほどないが、なにかの番組で彼女のブログが紹介されて「朝からシャンパン。これがホントの朝シャン。」と書いていたことに、「もはや滑稽だ」と思ったことは覚えている。ホントのセレブだったら、こんなこと書かないだろうよなぁと思ったのだ。

    それくらいの記憶しかない中で読んだ本書。著者の北原氏は、佳苗がまったくわからない、佳苗を「知りたい」という気持ちで裁判に通ったという。
    本書を読んでも(そして著者自身も)佳苗という女はわからないままなのだが、佳苗をとりまく被害者男性…というよりは、その男性たちが代表してしまったのであろう、日本男性の脆弱さはわかった気がする。
    佳苗の事件は、それをあぶり出したというか。
    ただ、それがあぶり出されたところで、なにか改善されたかというと、多分、なにも変わっていない。

    男性による(ストーカー殺人等の恋愛・結婚関係の)犯罪にストーリーがない一方、佳苗は最後まで夢(もしくはケア)を与えて、恐怖感なく殺している(ように見える)。
    犯罪は擁護されるべきものではないが、ようは、男(社会)が佳苗(女)に甘えすぎたがゆえの代償でもあったのではないだろうか。

  • 控訴審が始まるということで、興味再燃。
    木嶋被告絡みの本を図書館で3冊借り、その第一弾として読みました。

    私の中では「つかみどころがなさすぎる女性」である被告の振る舞いがテレビでは報道されないところまでわかったとはいえ、やっぱり「つかみどころがない」という感想は変わらないままでした。
    逆に、証言にあがった男性や遺族の方々の話に「?」と感じることが少なからずありました。
    だからといって被告に同情したり理解できる部分は皆無ですが、何となく微妙な引っ掛かりを覚えることがちょこちょことありました。

    「デブス」扱いで報道されっぱなしで「確かにどうしてあんな感じなのにモテるの?」と思ってましたが、去年あたりに雑誌でチラッとみた直筆の手紙の綺麗な文字、言葉の選び方に妙にゾクッとしたのを覚えています。
    その手紙から何とも言いようのない「女の匂い」みたいなものを感じ、見た目でないところにあるもっと奥深いところでの「(男性の)吸引力」が半端ないような気がしました。
    知っても知っても表面的な情報だけが増えていくばかりで、謎だけがどんどん深まっていく感じがします。

    • あかりさん
      解ります!
      私も読みました。
      個人的に聞けるなら聞いてみたい。
      「本当はどうだったんですか?」って。
      反対に男性にこの事件を聞いてみ...
      解ります!
      私も読みました。
      個人的に聞けるなら聞いてみたい。
      「本当はどうだったんですか?」って。
      反対に男性にこの事件を聞いてみると、余り女性ほど興味はそそられないらしいです。
      2013/10/22
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プロフィール

1970年神奈川県生まれ。作家。津田塾大学卒。96年フェミニズムの視点で女性のためのセックストーイショップ「ラブピースクラブ」設立。著書に『毒婦。』、『奥さまは愛国』『性と国家』(共著)など多数。

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