毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 153
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023310810

感想・レビュー・書評

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  •  ブスのくせに「女」を武器にして「ふつうの」結婚観をもった「ピュアな」男性たちを次々とくいものにした、と、男中心の社会規範に訴えるマスコミや検察がつくりだした佳苗像、しかしその公式な物語において語られない側面を敏感に嗅ぎつけて傍聴に通った若い女性たち。この事件と、その語られ方は、たしかに日本の社会における男性と女性とのいびつな関係性を見事に露わにした出来事であった。
     この傍聴記は「女性の視点から書かれたもの」と呼ばれたという。それだけ、世の中にあふれた語り口は圧倒的に男性視点であったということだ。
     この事件について知れば知るほどに、あの東電OL事件が対として思いだされる。あの事件もまた、世間が安心して受け入れられる女性規範から大きく逸脱するものであったが、被害者は徹底的に男の視点によって裁かれ辱められた。だが佳苗の犯罪は、いかに男たちが「ブス」と罵ろうと、彼らの物語によって領有されない得体の知れなさをもっている。
     筆者が書いているように、本書を読む限り、佳苗に「同じ女として」共感できる部分はほとんど見いだせない。にも関わらず、あたかも女に期待される矛盾した役割や規範を、矛盾のままに実体化してみせたモンスターのように見えてくるのであり、それこそが女たちをひきつけてやまない理由なのかもしれない。男たちがいかに否認しようと、このモンスターがまさにわれわれの落とし子であることを、矛盾した役割期待を日々生き抜く女たちはもっとも深く理解しているのだ。

  • 上野千鶴子 信田さよ子 北原みのりの対談「毒婦たち」を読んで
    この裁判傍聴記に興味を持ち 佳苗のブログと並行して読み進めた

    対談で語られていたとおり 男性目線の裁判のやりとりは非常にこっけいだった
    著者の意図が含まれているので そう見えるように仕向けられてはいるだろうが

    あとがきの「男はとても安全な世界で生きているのだなと思った」
    著者が繰り返し述べていることは この言葉に集約される

    佳苗にあこがれる女たちがいるらしい
    女であること 容姿がよくないことで不利益を蒙り 
    怒りややるせなさを感じつつもなにもできず 
    こぶしをふりあげて戦う同性にもあまり共感できない 現代を生きる女たちにとって 
    執拗に男の常識で佳苗を裁く者たちを手玉にとったかに見える佳苗像は 
    胸がすくような一面があったのかもしれない

  • 木嶋佳苗、獄中結婚したそうです。

  • 薄々感じてはいたけどこの一文「男性たちにあなたが感じた苛立ちの根源を、描いてほしい」でゲンナリ。
    著者の持論を展開するために、事件も犯人も利用しているように感じた。
    フェミニストってこんなに厄介なんだなあ。
    関わりたくない女ということで、木嶋佳苗と著者と、二重構造ととらえて読むと、それなりにおもしろい。

  • 女性にしか解らない視点で中立的に書かれていました。「性別が違うだけで事件の印象も大分違うんだなぁ」と感心しました。
    本件は、まだ裁判中ということもあり殆どが謎のままです。木嶋佳苗が女子力に長けていたことなどは解りましたが、一番知りたかった「殺人の動機」や「お金に執着する理由」などは解らず終いでした。何が彼女をそうさせたのか、一歩踏み込んだ取材をして欲しかったです。

  • 木嶋佳苗の裁判傍聴記録。
    かなり女性目線、著者の感情が入っている部分が多く、
    面白いがけっこう偏りのある見方かとおもった。

  • 326.2

  • 最近ノンフィクション系を読んでないなあと思い読みました。女性ならば一気読み必至。週刊誌っぽい切り口(^_^;)
    練炭女、木嶋佳苗。料理はプロ級の彼女、何故か壇蜜さんが被る。女子力高いなあと…つくづく女って業が深い。

  • とどのつまり男は入らねどお金は欲しいってことか?
    「援交世代から思想が生まれると思っていた。生んだのは木嶋佳苗だったのね」
    これは本書で紹介されている上野千鶴子の言葉です。著者の北原みのりは世代的にフェミズムの洗礼を受け、セックス・トイ・ショップ「ラブピースクラブ」を主宰しているコラムニストである。彼女は未だ男目線の日本の社会にあって、それに寄り添うことも内面化することもなく女性が自立していくには?という問いに物書きかつ組織のリーダーとして運営に関わりながら常に向き合ってきたと思います。
    幼い子供を殺したりDV夫をバラバラにした女性に対しても北原は「もし私があなただったら」とシンパシーを禁じ得ないと書いています。そんな彼女をして、今回の事件の容疑者木嶋佳苗には共感や同情を一切持てなかったそうです。

    飽くなき目的意識、佳苗の場合、それは美味しい物を食べ、ブランド品で身を着飾り、温泉などで体を労わること、女というセックスをむき出しのままに、「私は、セックスにおいて長時間快感を持続させながら、トランス状態でオーガズムを感じトリップすることを求めていました…」などと法廷でのたまり、「整形よりもベンツ、ダイエットよりも料理教室」にお金をかける、婚活サイトで標的の男性を見つける際には、物理的に扱いやすい自分より体重の低い、背丈が小さいという特徴を重視したのではないかということ、結婚を前提にお付き合いを始める男に対して、まず体の相性を確かめたいと避妊具なしでセックスを誘い、すぐさま援助と称して入学金や学費等を要求すること。
    筆者は計画的と言うよりそうやって男を唆し、お金を貰い、いよいよ行き詰れば排除するといった一連の行動が佳苗の人生、処世術そのものだったのではないか気づいたのでしょう。そこにはセックスとジェンダーの間で未だ揺れ動く女性特有のためらい、生き難さとは無縁の一人の人間。社会が生み出しや怪物というより、お金が欲しかったら何より女として男から貰うという回路が今の社会にはより多く用意され、木嶋香苗はそれに乗ることにいささかも躊躇なく、徹底していたということなんでしょう。

  • 期待して読んだけれど期待ほどではなかった。佳苗がほしいものが私のほしいものと全く違うから、ということもあるけれど何より北原みのりと価値観が違いすぎるんだと思う。私はきっとフェミニストじゃないんだろうな。

著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。作家。津田塾大学卒。96年フェミニズムの視点で女性のためのセックストーイショップ「ラブピースクラブ」設立。著書に『毒婦。』、『奥さまは愛国』『性と国家』(共著)など多数。

「2017年 『日本のフェミニズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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