- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784023311657
感想・レビュー・書評
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遠藤誉さんからはなにかどろどろしたものを感じていたが、その著書『チャーズ』を読むことでようやくそれが解明した。それは遠藤さんの中国に対する愛憎、あるいは怨念がつねに背後にあるからだった。本書は、あの尖閣をめぐる反日デモを見た遠藤さんが、かつての記憶を思い出し、日中和解を阻害するギャップ、誤解を解き明かそうとしたものである。そのうち、圧巻はルーズベルトから「沖縄はいらないのか」と聞かれた蒋介石がそれをことわったこと、さらに中国のかつての指導者、周恩来をはじめ人民日報、地図帳で尖閣を日本領と認めているところ、そしてそれに対する中国のネットの反響(すぐに削除されたが)である。ここにはもちろんアメリカの沖縄占領に対する反発があり、それゆえ「琉球群島」は日本のものと言ったのだが、アメリカとの矛盾がなくなった今、あれは詭弁だったと言うのだろうか。また、本書ではネット情報を駆使し、日本のメディアが流す情報―たとえば、反日デモは官製であるとかに対する批判も各所でしている。あの反日デモで日本車の持ち主を大怪我させた青年はなぜあのような行動に走ったか、薄煕来はなぜ失脚したかと等々。読みながら、やはりどろどろしたものを感じた。
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遠藤誉節
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[長大な不協和音]日本政府による尖閣諸島の国有化後、厳しさを増した日中関係。噛み合わなくなった日中の歯車の遠因はどこにあるのかを問いかける著者は、先の大戦におけるルーズヴェルトと蒋介石のカイロ密談にたどりつく。歴史の闇に埋もれ、多くは語られてこなかったその密談の内容とは、そして、それが今日の関係にもたらしている影響とは......。著者は、『チャイナ・ナイン』や『チャイナ・ジャッジ』で新鮮な中国観を提示したことで注目を集めている遠藤誉。
カイロ密談、日中国交正常化、愛国教育に領海法......。ねじれにねじれた日中関係の原因がつぶさに明らかにされており、日中関係を俯瞰する上で大変参考になる一冊です。中国(というより中国共産党)がどうしても内包してしまう行動の論理を見事に現実の事象から導き出し、それが歴史的にどのような文脈に置かれるかを正確に指摘する遠藤女史の筆は圧巻の一言。チャイナシリーズの最後を締めくくるにふさわしい、読む側も知恵と精神力を試される力作です。
その後もろもろの変化は見られましたが、個人的に息を呑んだのが中国による領空侵犯を分析した箇所。尖閣諸島が中国のナショナリズムと直結し、いかに中国が退けないところまで来ているかを説得力のある説明とともに明確に指摘しており、感嘆にも似た思いにとらわれました。
〜中国時間の「2012年12月13日午前10時」、日本時間の「午前11時」に何が起きたか。それを読み解けば、中国がいかに「領土問題を政治問題化しているか」ということが明白となるのである。だからナショナリズムに直結し、反日行動に直結することになる。〜
この情報量はちょっと参った☆5つ -
遠藤教授の新作、
愛国主義教育はなぜ始まったのか?
中国革命から文革、凶暴であるほど革命的であると英雄視される、「大地のトラウマ」何千年も続いた封建社会の土壌には一党支配的専制はよく馴染む、「暴力革命」「アメリカ従属」日中感情のギャップ、
親米のルーツ、義和団の乱、清華学堂、清華大学、
尖閣から長春へ カイロ宣言に翻弄された人生、
遠藤教授が暗殺されずに、チャイナギャップを埋める活動を続けられることを期待する。 -
■書名 チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車
遠藤誉 / 朝日新聞出版 / 本 / 2013年02月20日 / Amazonで見る ¥ 1,785
■全体的な感想
チャイナナインで大成功した本の第3弾です。
さすがにネタ切れの感じ。
出版社から無理に書かされたのであろうか?
本人もこのチャイナシリーズはこれで打ち止めとすると言っている。
本当であれば、この本の前に打ち止めにすべきであったと思います。
今回は、尖閣諸島問題がキーテーマとなっているが、あまり面白くなかった。
この方の魅力は、中国に実際住んだ経験があり、中国の要人と実際に交流している経験から中南海の内幕を解説しているという部分だと思うのですが、それがこのテーマでは上手に生かされていない感じがします。
しかしながら、著者の力であれば、毎年1冊ぐらいは中国の政局解説を定番化して欲しいと思います。 -
中国や中国共産党の内部情勢を読み解くことにかけては、著者は第一人者であると思っていたが、本書にはそれまでの著作とやや違うトーンを感じた。
1943年に行われた蒋介石とルーズベルトの「カイロ会談」で話し合われた「尖閣領有権」のついての考察は、著者のネット発信によって概略は知っていたが、本書での全容を読むと、著者の中国への厳しい視線がにじみ出ている。
著者は、少女時代を文化大革命の中国で過ごし、過酷な人生体験を持つが、それを描いた著作を読むと、それを全否定せずに「赤いノスタルジー」を著者自身が抱いているようにも思える。まさに著者にとって日中両国は「ふたつの祖国」なのだろう。
しかし、本書では一転して、中国共産党の「尖閣」や「反日教育」について実に厳しい視線と考察を広げている。
これは、著者が「日中の摩擦と軋轢」が、双方の政府のコントロールを乗り越えて、臨界点を超えることもありえるとの危機感によるものなのかもしれないと思った。
すでにグローバル化によって経済も政治もかつてとは様変わりしている。本書を読んで、政治の深淵をのぞきこむような興奮を覚えた。
本書は、日中の軋轢を読み解くには歴史への考察が欠かせないことが認識できる良書である。
本書を、現在の日中関係を読み解く上で最良の書であると高く評価したい。 -
尖閣諸島問題を題材に中国との考え方の違いをといている。作者が丁寧に根拠を示しているように、論理立てていても、そもそも中国は議論がかみ合わない。男女のケンカで感情論が勝つかのように。
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本書の目玉は新華社が報じたカイロ密談でルーズベルトが蒋介石に沖縄を割譲する提案に対し蒋が断った事実をアメリカ公文書館のHPから見つけたことだ。
尖閣諸島の帰属について例えば孫崎享氏はポツダム宣言受諾により尖閣諸島は中国に帰す地域に含まれる可能性が有るとしているが、このカイロ密談の際に沖縄に尖閣が含まれているというのが日米共通認識であり、蒋介石が尖閣は中国固有の領土と主張していれば間違いなくそうなっていた。沖縄が中国領にならなかったのは幸運だろう、米軍がいかに問題が多くても大躍進〜文革時代に中国の一部になっているよりは遥かにましだ。
題名はチャイナ・ギャップでテーマは何が原因で日中関係がこれほど悪くなってしまったか。例えば昨年のデモの際にも「ガス抜き」などと言う人がいるが遠藤氏はそう言う見方では中国を理解できないと言う。第一次世界大戦で日本、中華民国は共に連合国側であったが終戦の結果、日本は中国に対し対華21か条の要求をつきつけ16か条を飲ませた。この結果起き上がったのが五四運動でベルサイユ条約調印拒否に至りその後共産党が生まれるきっかけになっている。毎年五月四日は抗日デモが起こりやすいのはこういう理由だ。
共産党革命やその後の文革は暴力の肯定という面があり、江沢民が進めた反日教育もあり反日デモが許されやすい土壌が出来上がってしまっている。一方で半日デモはすぐに反政府デモに変わりかねないので暴走しないように押さえつけている面も有る。遠藤氏が「ガス抜き」に反応する理由はこういうことらしい。
江沢民がここまで反日に走った理由は父親が日本の傀儡政権の官吏だったからだ。文革は家族がブルジョアだったり国民党に協力していたなどの理由で「反革命的」としてつるし上げに会う時代だった。北京閥との権力闘争で父親のことを指摘されたため反日を表に出して自分の権力基盤を守ろうとしたのがその後の反日教育につながってしまう。その江沢民もどうやらひっそり引退らしいが習李体制になってもすぐには対日方針は変わらないだろうと分析している。
この本の上梓は2/28だが3/5から始まる全人代でチャイナ・セブンから外れた李源潮が国家副主席になると予想して当てている。この辺りの分析はさすが。チャイナシリーズはこれで一段落だというのが少し残念。チャイナ・ジャッジ、チャイナ・ギャップの連作には遠藤氏の執念を感じた。 -
遠藤さんのセミナーがよかったから買ってみた。資料をもとに尖閣諸島が何国のモノかをわかりやすく解説していておもしろかった。
後半のチャイナセブンのところ未読。要再読。
著者プロフィール
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