生命の逆襲

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023311954

作品紹介・あらすじ

C0095【文学/随筆】蝶の羽根の美しさに魅入られた昆虫少年の記憶から、驚きの分子生物学の最先端まで。平易な語り口で読者を生命の深遠へと導く。『遺伝子はダメなあなたを愛してる』に続く、AERA好評連載コラム「ドリトル先生の憂鬱」の書籍化第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • AERAに掲載されたコラムを再編したものとのことで、短くて読みやすく、でも自分の知らない世界を覗き見させてくれる本。

    著者の書く本は、スコープの広さといい、その縮尺といい、「縦横無尽」という言葉がしっくりくる。でも、読者に生物学の視点からセンス・オブ・ワンダーを感じてほしいという著者の想いはブレない。

    本書で特になるほどと思ったのは、限られた一生を終えると跡形もなく消え去る私たち多細胞生物は、単細胞生物に比べると非常に儚いものだ、というコラム。

    え?単細胞生物ってアメーバとかでしょ?逆では?と普通思うだろう。著者の話は違うのだ。
    そもそも「一生」の定義とは、という話だが、多細胞生物は、個体の誕生から死までを一区切りの一生と呼べる。一方、単細胞生物は難しい。一回の細胞分裂から生まれた娘細胞が次の分裂を行うまで、と定義するとすれば、大腸菌だと最速たった20分だという。
    でも、単細胞生物には、分裂を繰り返す限り死はない。しかも、もともとの細胞成分のうち半分が次の細胞に引き渡されるので、仮に単細胞生物に記憶があるとすれば、分裂時にどちらかの娘細胞に、あるいは両方に引き継がれる。分裂を繰り返す限り、それは永遠に続く。
    となると、数十年で個体としての生命活動を終える私たちは、とても儚い存在なのだという。
    そんな考え方、したこともなかった。

    遺伝子やらタンパク質の分子構造やら、超ミクロの世界の話をしたかと思えば、次のページでは縄文人は1つの建造物を1500年以上かけて作っていた、などという果てしないスケールの話に飛んでいく。そんな独特かつ広い視野を持つ著者が得た、日常におけるセンス・オブ・ワンダーを書き留めたのが、本書なのかもしれない。

  • 『AERA』に連載されたコラムをまとめたもの。
    なので、ひとつひとつは非常に短い。この量でそれなりの内容を書き上げるのはなかなか骨が折れると想像されるが、そこはさすが著者、昆虫少年だった著者らしい話題から今をときめくiPS細胞の話題まで、ソフトな話題から生物学のツボに迫る記述まで、難しすぎず、かつ興味を引くようにうまくまとめられている。

    一番印象的だったのは、カロリー制限が老化防止の遺伝子を活性化するという研究結果が、最近になってどうもそうでもないらしいとわかったという話。テレビでカロリー制限をした猿と好きなだけエサを与えた猿とを比較した実験を見たことがあったが、その時はそれらしい様子がうかがえたのだけれど…どうやら、同様にエサの与え方を変えた猿たちの20年の追跡調査の結果では、寿命の差はほとんど見られなかったらしい。

    え~、ちょっとがっかり。
    寿命はともかく、制限を受けていた猿のほうが毛艶もあって皮膚もハリがあって若々しかったから、おっこれは!なんて期待してたんだけど。
    ま、でも別に変にやせ我慢して食べたいのを必死で我慢する必要もないってことか。
    まあ、よかったってことなのかな…。

  •  顕微鏡を覗いて、ピントがぴったり合った時のような、明快な文章に出会う。科学の進歩は、生物の生態の分野でも、多くの発見があるのでしょう。それらのさわりを、分かりやすく伝えてくれる。

  • 軽いエッセイ

  • 福岡さん養老先生、頭のいい人は昆虫が好きなのか?

  • エッセイ集ですね。

  • 『動的平衡』という作品を読んでから、福岡さんの著作にハマっています。難しい数式や理科の知識がなくとも読み進めることができる、生物学の知見や、そこから派生した「生き方」にまで及ぶ福岡さんの論考は、自身の勉強にもなると同時に、思想哲学的にも受け入れやすいものがある、と感じています。

    この作品は雑誌「AERA」に掲載されていたエッセイをまとめたもので、一節が長くないので、隙間時間に読むことができたこともとてもありがたかったです。
    なかでも、
    「理系に進みたかったけれど、数学ができなくて諦めた」という文系の学生を見ると、生物学的なセンスがあるのに(生物学ではそれほど使わない分野の数学的素養がなかったからと言って)ちょっとした得手不得手で文理を固定してしまうことは、若い才能の芽を摘んでしまうのではいか、という指摘や、
    子どもの疑問(「なぜ」○○なのか)=センス・オブ・ワンダー(存在の不思議)に対して、大人は適当に合わせて回答するのではなく、「なぜなのだろうね」と疑問をそのまま返すこと、そのことで疑問が開かれたまま子どもの心に残り、いつの日か子ども自身がその疑問を解く(あるいは子どもが答えを出せなくともその問題について考える)というプロセスを経ることの大切さ
    を語る章はとても共感することができました。
    また、ネアンデルタール人と現代人類は、進化の過程でつながっているのではなく(ネアンデルタール人から現代人類が進化してきたのではなく)、全く別の、並行して進化してきた異なる種であることがわかったこと、そしてもし仮にネアンデルタール人が現代にも生きていたら、そこに本当の「人種問題」が発生したこと(現代の”人種問題”はDNA的な観点からは無意味)などの指摘は興味深く読むことができました。

    他にも様々なエッセイが収められていますが、基本的には多細胞生物も、そしてその多細胞生物が生活している世界も「動的平衡」によって成り立っているし、そのバランスを感じながら(あるいはそのバランスに思いを致しながら)生活することの大切さを改めて教えてくれる作品でした。

  • カマキリのオスの事後の振る舞いや、動物の便の色、カニみその話、蚊が血を吸う理由など最近気になっていたことに関して触れていてナイスタイミング。

  • 心をもっているのは、人間だけだ と人間は思って
    いるかもしれないが、生物は「待つ」ことを知っている。
    待つというのは、心の高等技術であると思う。

    という紹介文に魅かれて読み始めました。
    実が熟すのを待って枝から果実を取ったり、
    成長するのを待って捕食したり・・・。
    生物(人間、動物、昆虫・・)がお好きな方へ
    お薦めします。

  • 福岡先生のエッセイ集です。生命の逆襲、というテーマが通奏低音になっていますね。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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