報道されない中東の真実 動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023312920

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会科学総記】シリア問題を契機として、アラブ諸国は合従連衡と離反を繰り返してうごめいている。欧米・日本メディアが報道しない、中東の”真実”とは何か、展望は開けるのか。激変している中東各国の現状を前シリア大使が取材・解説。

感想・レビュー・書評

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  • ・反体制派
    シリア国民連合… 欧米諸国が認めたシリア国民を代表する団体。
    自由シリア軍:…欧米諸国の支援と期待を背負う。
    イスラミック戦線…非アルカイダ系イスラム主義グループ
    (アハラーム•アッシャーム、シャームのタカ軍団、タウヒード大隊、イスラム軍、アルハック軍団、クルド・イスラム戦線、アンサール・アッシャーム)
    ヌスラ戦線…アルカイダ系武装グループ。
    シラク・大シリア・イスラム国家(IS)…アルカイダを見限ってカリフを頂く国家創設をもくろむ。

    ・宗教・宗派対立
    スンニー派シリア人…シリア国民の大半。
    アラウィ派シリア人…アサド大統領一家の宗派。以前は蔑まれていた。異端宗教。非公式民兵組織シャッビーハ。
    シーア派シリア人…少数。イラン人とレバノン人を含む。
    シリア人キリスト教徒…東方キリスト教世界に属する。

    ・アラブ関係諸国
    ロシア…シリア政府を支持。
    イラン…実利的な関係。両政権共シーア派。しかしシリアは世俗国家。
    イラク…フセイン大統領はスンニ派。人口の60%はシーア派アラブ人。マリキ首相はシーア派。
    レバノン…シーア派政党ヒズボッラが有力政党。アサド政権側に立つ。
    米英仏…シリア制裁の推進役。
    カタール…反体制派を支持。
    サウジアラビア…絶対君主制。王室はスンニ派。
    トルコ…反体制支持も政策見直しに踏み切るか。
    イスラエル…民衆蜂起の背後に立つとシリア政府は発言。

    国連…仲介不全。最高級ホテルに宿泊し、使用する車両はトヨタのランクル、防弾車で新車と大金が投じられている。

    ざっと書き抜いたがそれぞれの組織や国の個性を描き分けてあり、大変興味深かった。
    国連の贅沢三昧はウクライナの視察でも見られた光景でもあるな。何台ものランクルで乗り込む様は圧巻だった。


  • シリア内戦が始まった当初、アサド政権は悪であり、民衆が政権打倒のために立ち上がった、という善悪二元論で内戦を論じることが一般的であった。本書は、マスコミが報道しないシリア内戦の実情を、在シリア全権大使を務めた筆者の視点で記述された本である。全体を通して、政権擁護の書きぶりに感じるが、信用たる情報と分析により非常に納得させられる内容となっている。また、客観的なアサド政権批判もしており、とても参考になった。

  • 中東のことを知るために読んだが、複雑すぎてよく分からん

  • 【由来】
    ・東洋経済

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】
    ・ニーモシネ

    ・本書は元在シリア大使による現地レポート。きちんと報道されない中東情勢について、現地にいた著者ならではのレポートを、できるだけ客観的な立場で記している。著者は、アサド政権を全面的に擁護するつもりはないと冒頭で明言しているが、結果としては、アサド政権を巡る報道が、いかに偏向しているかが自然と浮かび上がっている。

    ・本書では、恣意的な報道に対する冷静な検証が展開されているが、アサド政権のこれまでの歩みについても概観されており、その道程は、決して悪逆な専制国家のそれではなく、独裁政権ではありながらも、かなり開明的な側面があったことが知れてくる。なお、この辺りについては、青山浩之の「混迷するシリア」に詳しい。

    ・アサド政権を悪の専制国家として声高に糾弾する側には、どんな内在論理があるのか?例えばアメリカは英仏などと共に、常にアサドの退陣を要求し続けてきたが、その背景は何かというのを知りたかったのだが、本書ではある程度の解を示してくれている。大雑把に言ってしまえば、カタールとサウジアラビアが一番の黒幕なのだ。そして、そんな彼らにも、是非はともかくとして、自分達の国を守るための論理というのがある。この解説はとても参考になった。
     ただし、アメリカに追随するだけで、誠実な仲介者たろうとする姿勢を最初から放棄していたパン国連事務総長に対する著者の評価は厳しい。

    ・本書では、こんな印象的な場面も紹介されている。
    「このような合意ができた結果、(2014年)2月17日には現場での停戦が実現し、バビーラ地区では現場に入った国軍兵士や国民防衛隊の女性隊員らがその直前までテロリストだと叫んで生命を賭して戦っていた武装グループの兵士たちと握手し、談笑する光景まで見られた。(略)この停戦と和解の動きが報道されると、武装グループの上部団体幹部たちはわが目、わが耳を疑い、怒りを隠さなかった。現場の裏切りだとも言って非難した。(略)政府側ではこのような地域単位の停戦を積み重ね、次第に国民和解を実現していくことの意義を強調した。 (P178)」
     本書の表紙に使われているのは、この時の写真だ。この表情を見ていると、それまでの憎悪に満ちた戦闘が何だったんだという気がしてくるが、現場レベルでは、こういう停戦と和解が成り立ちつつあるというところに望みを見出したいものだ。

    ・シリアに対する国際協調(と言うより対米追従か)のため、既定の路線を歩んでいる日本政府ではあるが、現地外交官が、これほどの視点と洞察を持っており、そして、それを本書のような形で世に出してくれたことに対して敬意と感謝の念を表したい。このような知見が、日本の中東に対する外交において有効に活用されたらいいのになあ。

    【目次】
    はしがき

    [第一章 シリア問題の過去・現在・未来]
    ●民衆蜂起第1幕――シリア全土に広がる抗議のデモ
    ●民衆蜂起第2幕――国際社会の介入と悪化する情勢
    ●民衆蜂起第3幕――窮地のシリア政府
    ●民衆蜂起第4幕――反転攻勢に出る政府

    [第二章 反体制派、それぞれの思惑]
    ●シリア軍――欧米諸国の支援と期待を背負う
    ●イスラミック戦線――非アルカーイダ系イスラム主義グループ
    ●ヌスラ戦線――アルカーイダ系武装グループ
    ●イラク・大シリア・イスラム国家――アルカーイダを見限ってカリフを頂く国家創設をもくろむ

    [第三章 宗教・宗派対立の真実]
    ●スンニー派シリア人――割を食わされた人々
    ●アラウィ派シリア人――謎に包まれた存在
    ●シーア派シリア人――殻に籠もる人びと
    ●シリア人キリスト教徒――歴史に翻弄される人々

    [第四章 アラブ世界をめぐる関係諸国の戦略]
    ●ロシア――シリア政府を支援する大国
    ●イラン――シーア派ではなく、国益重視の相互関係
    ●イラク――国家分裂の危機に瀕する、新たな中東の火種
    ●レバノン――アサド政権と運命をともにするヒズボッラ
    ●米国、英国そしてフランス――シリア制裁を先導する国々の不確かさ
    ●カタール――金は力、リージョナル・パワーを目指す
    ●サウジアラビア――老舗の国王が率いるアラブの盟主
    ●トルコ――「ゼロ・プロブレム外交」から「ゼロ・フレンド外交」へ
    ●イスラエル――安全を脅しうる「漁夫の利」
    ●国連――仲介機能不全に陥った事務総長

    あとがき

  • 本は読むペースより買うペースの方が圧倒的に速い。本来なら、
    読める分量だけ購入すればいいのだが、ノンフィクションは
    見掛けた時に買っておかないと、次に出会えるのは古書店の
    棚だったりする。

    古書店で再会出来ればいい方だ。物によっては何年も探求書
    リストに載せっぱなしの作品もある。

    何年も経って読んでも色褪せない作品もあれば、出版当時に
    読まないと内容と現実がいささか乖離してしまっている作品
    もある。

    本書がそうだった。2011年3月の民衆蜂起から始まったシリア
    動乱のレポートなのだが、出版されたのは今年の夏。

    そう、シリア情勢は現在、アサド政権vs反政府武装勢力という
    よりも、イスラム国vs外国勢力になってしまっている。

    ニュースでシリアのアサド大統領を見る度に、「この人は本当
    にそんなに悪い人なのか」と疑問を持っていた。勿論、中東の
    情勢に詳しいわけではないのだが、どうにも報道が言うような
    「悪人」には見えなかったんだよね。

    例えばそれは砂漠の狂犬・リビアのカダフィ大佐や、イラクの
    サダム・フセインについてもそうなのだけれど、欧米のメディア
    の解釈をそのまま垂れ流す日本の報道には常に懐疑的だった
    からかもしれない。

    著者は元シリア大使だけあって、アサド政権中枢の人物にも
    取材をし、実際に自身がシリア滞在中に見聞した事柄を
    踏まえて中立な立場でシリア情勢をレポートしている。

    眼からうろこですよ。ポロポロと落ちる。日本のメディアが
    どれだけ欧米視点で中東を報道しているかも分かるわ。

    アメリカは「リビアの夢よ、もう一度」でアサド大統領を
    簡単に排除できると思っていたようだ。国連安保理決議
    では中国とロシアに反対されて武力行使は断念した。

    尚、第1章「民衆蜂起」は中東やイスラムに対する知識が少ない
    のでかなり辛かったが、第2章以降で反体制派や宗教・宗派、
    関係諸国の思惑等を解説している。

    同じイスラム圏であろうとも一枚岩ではない。そこには宗派の
    対立からの衝突もある。そのいい例がシリアに対するカタール
    だ。

    金の力に任せて中東情勢をひっくり返そうとするカタール。
    こんな酷い国だったのかよっ。そして、アルジャジーラの
    偏向報道に絶望した。シクシク。

  • お勉強がてら読みました。
    ちょっと後半になると予備知識ない私には、ついてけなくなってきたけど。現場を知る人の声、貴重。
    この方の本、他にも読んでみようー

  • 中東各国の現状を元シリア大使が取材・解説ということだが、一般的な報道による、アサド政権は民衆を抑圧する「悪」とか、中東問題=シーアとスンニー派の宗教対立であるといった見方から、もう数歩進んで大きく複雑に掘り下げられており、アラブ諸国・欧米・反体制派の思惑は何なのか等が綿密な解説で述べられていく。
    ただ予備知識のない我等素人には人名・組織名をはじめ余りにもたくさんの名称や歴史の羅列が続き、全体像の理解には遠く及ばないし、読了にも苦痛を感じたというのが正直なところである。
    相関図や時系列の解説図等があれば、なお筆者の言う真実により迫れるのかもしれない。

  • シリア政府はいいがかりだとばかりに否定するが、減z内のシリアには反体制派と称しながら、実は盗賊集団に過ぎないのがたくさんいる。
    シリアのアサド政権がシーア派ではなく、世俗国家。

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