IQは金で買えるのか――世界遺伝子研究最前線

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 77
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023312944

作品紹介・あらすじ

【自然科学/自然科学総記】"らせん"をほどいた先に、人類の幸福はあるのか。もはや神の領域ではなくなった遺伝子操作。善意と探究心の裏側でパーフェクトな命への誘惑がうごめく。米国特派員として生命科学研究の最前線を追ってきた朝日新聞記者が見た現実とは。

感想・レビュー・書評

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  • 長いあいだ積みっぱなしにしていたら少し古くなってしまった。第3章で紹介されている「The Dan Plan」も挫折しているし…。こういう本は早く読まないとだめだなあ。

    さて、先天的な才能と後天的な様々な要素とが、人間ひとりひとりの個性を生み出しているわけだけれども、いまの世の中「わかっちゃってる」「見えちゃってる」ことがあまりにも多いわけです。「さとり世代」なんて言葉もありますね。ぼくらは未来にワクワクできない。
    優生思想に近づくにつれて倫理的問題が顔を出すものの、「病気しない子がいい」といった風に、わかっていることはなるべく失敗したくないじゃんという態度を批判するのは難しい。
    でも、問うべきは「失敗」って何なんだ?「成功」って何だ?なのかなと。その物差しは誰がつくってるの?そんなことをちゃんと考えるようにしたいってのが本書を読んだ感想です。

    米国の教授の以下の指摘は、読み過ごせなかった。第7章。
    「将来、ダウン症の赤ちゃんを産んだ両親はどう思われるかを想像してみてください。今なら『どうやってこの子をサポートしてあげられるでしょうか』となる。これが『なぜ中絶しなかったのですか』という感じに、人々の意識が変わるかもしれない。」

    科学技術の進歩のスピードに、人間の理性と倫理観はついていけるのかーー。

  • 現代アメリカの優生思想。

    【内容紹介】
    ISBN:9784023312944
    定価:1620円(税込)
    発売日:2015年7月21日
    四六判並製 256ページ
      ジーンリッチ(優秀遺伝子)階級、誕生前夜。目の色から寿命まで、好みの卵子や精子を選べるビジネスに特許が認められた。理想的な遺伝子の組み合わせが実現すれば、推定IQは1000以上になるという。努力する能力さえも遺伝子のなせる技なのか。治療と能力増強の危うい境界線。揺れる生命倫理。遺伝子覇権の今を追え!
    http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17219


    【目次】
    第1章 「究極の個人情報」の価値と値段――個人向け遺伝子検査ビジネスのからくり 
    優しくて酷な米国式ソフトボール/わずか七つの遺伝子で適性を判定/実際に遺伝子検査を受けてみた/病気のリスク判定に突然の中止警告/結局裏ワザが存在する矛盾/欲しいのは顧客の遺伝子データベース/弱肉強食化する遺伝子検査業界/「究極の個人情報」の取り扱い/遺伝情報による差別は防げるのか

    第2章 遺伝子はだれのものか――遺伝子利権争奪戦 
    もし遺伝子が特許として認められたなら/アンジェリーナ・ジョリーの「告白」/揺れた司法判断/人工的に合成されたものならOK/自然界との付き合い方すら変えた判決/市場独占はなくならない?

    第3章 裏切る遺伝子――才能と努力と遺伝子と 
    害虫と殺虫トウモロコシのイタチごっこ/すたれるクローンペット業界/ヒトラーのクローンは教師か獣医?/孫の代まで受け継がれる記憶/三毛猫クローンの仕組み/コムギは人間より高等?/ネズミにヒトが語れるか/トップアスリートの諦念と孤独/1万時間の法則/努力しないのも遺伝子のせい?

    第4章 天才遺伝子を探せ――IQ最強人間への誘惑 119
    2000人の「天才」募集中/中国発「天才赤ちゃんづくり」/脈々と続く中国の優生学/理論的にはlQ「1000超」?

    第5章 人はいつ人になるのか――生命の定義論争 139
    命をめぐる対立と意識の二極化/奪われる命は「1時間に3人」/消防車が来るまでに救える命/もう一つの「反対」

    第6章 「ジーンスッチ階級」は誕生するか――デザイナーベビーの予感 165
    一番人気は「100%男女産み分け」だが……/米国医師がメキシコで開業するわけ/「狂った科学者」の暴走なのか/デザイナーベビーをビジネスに/『ガタカ』の世界が現実に?/新しい人類「ジーンリッチ階級」

    第7章 妊婦たちの選択――広がる新型出生前診断 
    ダウン症児出産数が示すもの/中国で生まれた高精度の新型出生前診断/「共存より予防」の危うさ/出産後の心構えと準備のために/拡大し続ける「わかること」/日本の中絶選択率は99%

    第8章 人間の「質」に介入する時代――「消費者優生学」の足音 217
    日本も無縁ではいられない/3人の親のDNAを持つ子ども/クラゲの教訓/戦後も残る優生政策の爪痕/個人主体の「消費者優生学」/治療と増強の「線引き」/あるがままを受け入れる美徳/「犯罪遺伝子」は刑を軽くするか

    エピローグ(2015年5月 行方史郎) [249-255]

  • 遺伝子検査ビジネス、遺伝子組み換え、クローン、デザイナーベビーなど、最近の遺伝子研究とそのビジネスについて、科学医療部の記者である著者がアメリカでの取材をもとにその実態を書いています。

    「妊婦たちの選択」では出生前診断について書かれています。妊娠中に染色体の異常について知ることについて、子どもを持つ母親としてとても考えさせられました。遺伝子研究の発展によって、救われる命もあれば失う命もあります。研究者の意図しないことに使われてしまうこともあるそうです。答えは出ないでしょうが、宗教、倫理、経済、哲学などあらゆる面から議論を続けるべき問題だと思いました。

    著者の思いが感じられるエピローグが良かったです。本書を読んで遺伝子研究に興味がわきました。とくに「エピジェネティクス」について、もっと知りたいと思いました。

  • アメリカを中心に遺伝子研究、遺伝子ビジネスの現在がわかりやすく、コンパクトにまとまっている。
    本書にあった「社会が技術のスピードに追いついていない」ことを実感する。
    「エピジェネティクス」というらしいが、生まれたときに持ってた遺伝子が全てでない、ペットのクローンを作ってもそっくりではない。自然の奥深さとともに、遺伝子万能でないことに少しだけホッとした。

  • 朝日新聞記者である著者の遺伝子ビジネスの最前線報告。遺伝子レベルの取捨選択が技術的に可能となり、それを生業とする企業が登場し、その責任者たちへのインタビューは貴重であろう。遺伝子操作の最前線を、記者らしい多様な視点かつ幾許かの批判を基に構成されている。

    興味深いのは話題になった遺伝子関連の後日談だ。遺伝子解析の「23アンドミー」サービスのアドバイザリーは終了となり、「スポーツXファクター」は倫理性ではなく採算面から撤退し、羊のドリーは遺伝子的にはクローンながら性格の異なる羊となったりと、倫理以外にも遺伝子そのものの効用と環境が与える影響範囲の解析という今後の課題が見えてくる。

  • 読みやすく、簡単に生殖遺伝学とその周辺がまるっとわかる本。

  • 2015年 10月新着

  • 不妊治療、着床前診断、遺伝子に関わる生殖医療の進歩が進む中で倫理的な問題が大きくなっているけれど、倫理的な一線が曖昧になり、崩れて行く危険を感じる。何処までが医療で、どこまでが個人の権利として認められるのか。SFの世界で語られていたことが、既に現実になりつつある。

  • タイトルからはデザイナーベイビーに関する本を予想していたが、遺伝子改変に関する話題はさすがにまだ時期尚早なのかほとんどない。現時点での遺伝子ビジネスについてはUpToDateでよくまとまっている。

    まずは遺伝子検査ビジネスの現状から入り、例えば筋肉のタイプがスプリンター(ACTN3という速筋を作る蛋白に変異がない)か長距離型(変異している)の判定ビジネスなどが紹介される。

    タイトルにもある知能の問題は、これまでの双生児研究の結果からも相関係数が0,8を超えるような強い相関があることが知られていた。養子に出されたものとの相関係数も0.7を超えているが、逆に血縁関係のない養子同士が同じ親の元で育てられても知能指数の相関係数は0.3程度の弱いものであったことから遺伝子の影響は大きいと考えられている。
    ただし、知能に関する遺伝子は少なくとも数百はあると考えられており、決定的なものはまだ分かっていない。
    これらを全て解明し、理想的な遺伝子変異の組み合わせが実現すればIQは1000以上になるという推定もあるらしい。

    出生前診断の話題も多い。ダウン症の推定出生率は1989には5633件であったが、実際には4474で、約2割が人工中絶を選んでいたと推計される。高齢出産の増加に伴い、ダウン症の推定出生率も高まっているが、2006の推定出生数が8014件であったのに対し、実際の出生は3989件で1989よりもむしろ減っている。約半分が人工中絶を選んでいることになる。

    出生前診断はやはり倫理的にも難しい問題で、仮にダウン症を間引くことが許容されるのであれば、アレルギーはどうか、また、遺伝子改良で病気を治療することが許容されるのであれば性質の改良はなぜだめなのか、明確に一線をひくことは誰もできないだろう。が、先日報道された中国グループによる受精卵の遺伝子改変のニュースのように、技術的に可能なものは誰かがいずれやるのだろう。

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