木村伊兵衛のパリ ポケット版

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023313347

作品紹介・あらすじ

【芸術生活/写真工芸】撮影から半世紀、アルル国際写真フェスティバル出品を機に、国際的にも再評価の声が高まった『木村伊兵衛のパリ』。現在絶版となり入手困難の人気大型写真集を、より多くの読者が買いやすい価格の小型並製版として刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 70年くらい前のパリ。
    きっと街並みはさほど変わらないのかも。
    行った事ないけど(笑)

    ノスタルジックでモダン。
    その反面、雑然としてる場所も。

    いつの時代もパリは素敵。

  • パリは移動祝祭日だからか、何となくついてくる感覚がある。

  • 「友達の友達は友達」。パリ在住の写真家に案内してもらい、旅行者では撮れない写真を撮ったそう。

  • 一部の写真全体がピンクグレーが乗っている感じで
    昔の写真だからかなーと思っていたら

    「今の色の出方の欠点を逆に生かして使おうと思ったんですよ。
    一番単純なことは、くもり日だと青く写るんです。影も青く写るんですよ。
    夕方になると赤く写るんですね。そういう色に当て嵌まった対象を
    つかんだわけなんです。」ということでした。

    古き良きパリが切り取られていて良かったです☆

  • 普及し始めたばかりのカラーフィルムで60年前に写し止められたパリの街と人の姿が、全く色褪せていない。現像と印刷の技術のことではない。色という点でなら夕日に染まったような赤味がかった色調は、鮮烈な色彩に慣れてしまった眼には、仕舞込まれていたアルバムをたまたま見た時のような「古い」感じだ。しかし、1954年といえばパリの街がドイツ軍の占領から解放されてから10年に満たない時期だというのに、人々は明るくびのびと生きている。一言でいうとこれが本当の「自由」というものだろうか。それを、モノクロでのスナップの名手であり、今日の日本の写真家が街のスナップを撮るときのお手本であり、そうした写真の歴史の原点というべき木村伊兵衛の手により色彩とともに永遠に遺された。そういう意味では記念碑的作品集だ。

    かつてこの写真集の元となった一群の作品が発見され、美術番組や写真の専門誌で話題になった。けれども、直後に出版された写真集は大きくてしかも大そう高価なもので、手が出せるものでなかったから、書店で重たい思いをしながら立ち見するしかなかった。
    それが、2014年も押し迫った大晦日の前日、京都一乗寺の恵文社書店を夜遅くにたまたま訪ねたら、棚に「じゃん」という格好で立てかけてあった。「おう」と思って手に取ったら小さいし軽いし、値段を見たら1600円とリーズナブルじゃないか。しかも、発行年月日をみたら、「2014年12月30日」とある。
    これは、ひとつの出会いに違いない。そう感じて迷わず買った。

    京都を訪れたのは1年ぶりだが、少しがっかりしたのは京都の街にも全国展開しているチェーンの店が一層増えたことだ。宿の真向かいに大きな東急ハンズができていて聞けば半年前に開店したのだという。四条通の馴染みの書店は文具店に商売替えしていた。隣に大きなジュンク堂ができてしまった余波らしい。イノダコーヒーの本店で読んだり書いたりしようかと思って早朝の開店直後に行ってみたら、すでに観光客が長蛇の列を作っていて中には喧しいことで定評のある某国の4人組と3人組が二組も混じって騒がしく順番待ちしていた。外よりも喧しいことが予想される店内にわざわざ入ることもない。そう思って、やはりできたばかりで去年は見かけなかったスタバの新しい店の方に入って小一時間静かに過ごした。

    60年前の自由で明るい人々の笑顔と古い町並みが、じつは今日パリの街を訪れてもほとんどその魅力を損なわれずに今も残されている。それがパリの街の魅力だと思う。数年前、NHKの日曜美術館で紹介された時には、木村伊兵衛が撮影した実際の場所を再訪して今は違う建物が建っていたりして違う風景になってしまった場所を新旧の比較で見せていた。しかし、「新」の方の街の風景も、何百年も前の古き良き街並みの雰囲気を全く損なうことなく今もあるのがパリの特徴だ。「新」が「旧」を駆逐して取って代わることがないのだ。そうして、わが国の国内でなら、それに一番近いはずなのが京都の街であるべきだと私は願っている。

    木村のパリでの撮影の道案内をする予定だったロバート・キャパは、木村の出発の直前にインドシナの戦場でうっかり地雷を踏み落命した。人間臭すぎるこの男らしい死に方だった。そのキャパは、木村のパリ撮影旅行の10年前同じパリで有名な一枚を撮っている。パリ解放の直後のことだ。

    頭を丸刈りにされた若い母親が赤ん坊を抱き足早に歩いている。無慈悲な群衆がそれを取り囲み口々に罵声を浴びせている。占領下でドイツ軍の将校と愛し合い子供をもうけた女性が、ドイツ軍が去った後群衆からリンチされているシーンだ。キャパはいかなる戦場でも、醜さ、無慈悲さ、哀しさ、喜びといった「人間」を撮り続けた。何度この一枚を見ても、いつも、
    「敵を愛してはいけないのか!」
    「この赤ん坊に罪があるのか!」
    というキャパの叫びが聞こえてくる気がする。
    キャパをお手本としたと明言している木村のレンズは(プレッソンのことも手本にしたともいっている)、カフェで自然に語り合うカップルを、露店で花を売るパリジェンヌの自然な笑顔や街を闊歩する彼女たちを見事にとらえている。古い町並みとともに、自由を謳歌するパリの男と女たちの自然な姿は、東京やニューヨークではとっくに失われたか、あるいは元々ないものだが、今なおパリの街の大きな魅力だと私は強く思う。

    やむを得ず入ったスタバの新しい店だったが、会計しようとしたらスタッフの女の子が、388円を、
    「さんびゃく、はちじゅうはちえんです」
    と、二つの「は」を柔らかな京都弁で言ってくれた。
    もしかしたら、何かが失われつつあり何かはいまだ残されている2014年の暮れの京都で、『木村伊兵衛のパリ』に偶然出会った事を私は生涯忘れることはないだろう。

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