安倍三代

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023315433

作品紹介・あらすじ

【社会科学/政治】母方の祖父・岸信介を慕う安倍晋三首相には、もう一つの系譜がある。反戦の政治家として軍部と闘った父方の祖父・寛、その跡を継ぎ若くして政治の道に入った父・晋太郎だ。彼らの足跡から「3代目」の空虚さを照らすアエラ連載に大幅加筆。

感想・レビュー・書評

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  • 作者青木氏は、サンデーモーニングのコメンティーター。

    あの暗殺事件の記憶も新しい安倍晋三と

    父、安倍晋太郎、そして晋太郎が敬愛してやまない祖父、安倍寛。
    この3代にわたる人物リポルタージュ。

    暗殺事件後一般人が口に出していう印象「感じがよかった、フランクだった」

    ニュースで出ていたが、私は何か腑に落ちなかった。



    その祖父「安倍寛」

    平和を希求し、国民の生活を問題視していた

    選挙活動時、家には官憲が何人もいて、いつもプレッシャーを感じていた

    そんな父を尊敬し、同じように平和を希求し、

    毎日新聞に務めた経験からグローバルな視点を持ち

    人種を超えて誰からも話が聞ける「安倍寛」の一人息子晋太郎。

    その逸話は、青木氏も興奮を覚えるほど魅力ある人物で

    人々が手弁当で応援したくなる人物だった。



    安倍晋三は多くの人々から聞き取りをしても

    子供時代から政界に入るまで、政治的指向もはっきりせず、

    なおさらそんな発言は皆無。

    成績も全て可もなく不可もなくで過ごす。

    人々の印象も影が薄く素直ないい子どまり。



    3期にわたり、国民を戦争の危険に向かわせている主張は後天的に、

    付き合う人々によって培われたものであったという。

    国会答弁に関してもど素人の私がみても、

    ただ時間を浪費し論点の軸を遠回りに無関係な文章をつらつらと述べるあの姿。

    信念や相手を敬う心もない空虚な言葉のつらなり。

    故郷山口に帰省する父親や母親との接点は少なく、

    周りの大人にはただ素直でいい子の印象。
    祖父岸信介には猫可愛がりされて育つ。
    そして、東大、早慶などの入学は、はなから諦め、

    成蹊で小学から大学まで過ごし、

    政治、憲法の第一人者を持つ成蹊大の教授陣は、ほぼ印象がない。

    それどころか「何を勉強したのか?私たちの言葉は届かなかった」と嘆いている。

    こんな、政治家が長期政権を持つ日本の政治の仕組みは

    きっと間違っているのだろう。
    国民は既に危険な道程のトロッコに乗せられているのだ。

  • 安倍晋三氏が2022年7月8日、参議院選挙応援演説の最中に銃撃され67歳で亡くなったのが衝撃的でかねてより気になっていた本書を読んでみる。父方の祖父、安倍寛氏の人物像や選挙区での慕われかたなど、チームの取材は緻密で初めて知ることばかり。それにしても晋三氏は子どもの頃から今に至るまで「何か」を期待する大人に囲まれ、難儀な人生だったろうな…と同情もしてしまう。(立派な葬儀も終えたのに国葬にするとかしないとかで誰かに何かを期待されているようだし)
    政治家として好きではなかったし、数々の疑惑はきちんと解明すべきであると思うが野蛮な犯行によって命を奪われる結末は許されない。今はただ静かに冥福を祈りたい。

  • ノンフィクション作家である著者は安倍晋三を指して、公表する。
    ”哀しいまでに凡庸で、何の変哲もない。全でもなければ、い強烈な悪でもない。取材をしていて魅力も感じなければ、ワクワクもしない。取材するほどに募るのは落胆ばかり。正直言って、「ノンフィクションの華」とされる人物評伝にふさわしい取材対象、題材では全くなかった。”(P.253)

    しかし、内閣総理大臣としての彼は確実に名を残すだろう。負の方向で。
    彼は日本という国をガタガタにした。
    それは否定のしようがない。彼の政策を支持する・しないとは別としてだ。

    小中高大と16年間通った成蹊大学名誉教授・加藤節は「『INNORANT』という意味での無知。『SHAMELESS』という意味での無恥」というふたつの「ムチ」を彼に伝えたいという。(P.284)
    基本的な知識が欠如しており、それを恥じることがない。

    これは全くいまの社会の大衆の姿、そのものではないか。卵が先か鶏が先か。いみじくも、まさに、まさに”この国の代表”ではある。

  • 父・祖父の学歴・人望へのコンプレックスもあって、現首相は過激な方向へ向かっているのかもと思った。

  • 世襲政治家には人間としての魅力がない。

  •  「3代」の評伝を書く場合、間に挟まれた「2代目」をうまく描けるかどうかが鍵を握ると思うが、本書の「2代目」安倍晋太郎については、子息安倍晋三の凡庸さを強調するためにやや過大な評価を与えているとの印象を受けた。タカ派派閥の清和会にあって、それに背反する「バランス感覚」を称える証言を多く採用しているが、これは取り巻く状況によっては確乎たる識見がないとも言え、「平和主義者」「リベラル」という形容も1980年代までの思想構図の中では疑問が残る。1980年代にポスト中曽根を競ったいわゆる「ニューリーダー」のうち、実務派の教養人だった宮澤喜一や老獪な世話人タイプの竹下登に比べ、晋太郎はひ弱な「坊ちゃん」とみなされ(その点は現在の安倍晋三に通じる)、「所詮は岸信介の娘婿だからな」とよく周りの大人たちが談義していた記憶が個人的にはあるので、余計その感が募る(本書によれば岸を引き合いに出される度にムキになって反駁したというが、そのこと自体が性格的な脆弱さを示している)。

     安倍晋三に対しては、政界入り前は、小器用だがおとなしく目立たない腰の軽いボンボンで、岸信介を敬慕している以外は右翼色の片鱗さえなかったことを明らかにしているが、これはある意味極めて現代的・普遍的で、著者は意外に思っているようだが、私がこれまで実際に見てきた「右翼学生」「右翼青年」「ネット右翼」などにはむしろこのタイプが多かったので、安倍をそうした傾向の先駆と位置付けられると思った。「所与の秩序」に「良い子」として積極的に順応しているからこそ、それを乱す「異分子」に対する被害意識が肥大化する点に、現在の「右傾化」の本質の1つがあると考えられ、安倍を含め政界における「ナイーヴなタカ派」の増大を単に「政治の劣化」「民度の低下」と切り捨てるのではなく、現代社会の構造的変化の反映として分析する必要を痛感した。

  • 安倍晋三のルーツは山口県大津郡日置村蔵小田、現在の山口県
    長門市油谷蔵小田にある。しかし、安倍晋三自身が口にするのは
    母方の祖父・岸信介に関することが多い。

    「私は安倍晋太郎の息子だが、岸信介のDNAを受け継いだ」

    「昭和の妖怪」と呼ばれる政治家については没して以降も研究が
    続けられている。それだけ政治家としてのスケールも、存在感も
    大きい。

    では、「安倍家のDNA」はどこへ行ったのか。本書は安倍晋三の
    父方の祖父である安倍寛(「ひろし」ではなく「かん」)からの安倍家
    のルーツを辿る。雑誌「AERA」連載の記事に加筆した作品だ。

    この寛氏が途轍もなく凄い。寒村の素封家に生まれ東京帝国大学
    を卒業し、政治家を志し、その資金を稼ごうと起業するものの関東
    大震災によって打撃を受け、故郷の村に戻る。

    肺結核から脊椎カリエスを発症しながらも、村民の強い要望により
    病床に就きながらも村長に就任。そして、村長を兼務しながら国政
    に打って出る。

    特に戦中の1942年に行われた選挙が圧巻。既に日本の政治は軍
    部に独占され、大政翼賛会が幅を利かせていた時代だ。選挙自体も
    翼賛選挙と言われ、翼賛協議会の推薦候補以外には憲兵や特高が
    目を光らせていた。

    その選挙に非推薦で立候補し、当選した数少ない議員のひとりが
    寛氏である。この時、やはり非推薦で当選しているのが三木武夫
    がいる。

    金権腐敗を糾弾し、軍閥のやりたい放題を批判し、戦争に反対し、
    早期の戦争終結を主張した人である。満州国を「私が設計した」
    と豪語し、敗戦が色濃くなると戦争責任回避の為に東条英機に
    反旗を翻した岸信介とは正反対に位置する政治家だった。

    なのに、安倍晋三には岸信介のDNAを受け継いでいるらしいのだ。
    それは、寛氏が晋三誕生の遥か前に亡くなっており、地元での活動
    に忙しい両親に替わり、母方の祖父である岸信介が遊び相手になっ
    てくれたのもあるのかもしれない。

    だが、安倍晋三の父である晋太郎氏は「俺の親父はエライ人で」や
    「俺は岸信介の女婿ではない。安倍寛の息子だ」と言っていたの
    だけれど、そこは安倍晋三のなかでは「なかったこと」になっている
    のだろうか。

    晋太郎氏には戦争体験があり、終戦が遅れていれば特攻で命を
    落としていた可能性もあったという。だからこそ、平和主義者であっ
    たのだろう。この父方のDNAを受け継いでいたのなら、今の政権
    はどうなっていたかを考えてしまう。

    本書は祖父・寛、父・晋太郎、息子・晋三の生い立ちを章を分けて
    書かれており、晋三の章を描く筆はかなり辛辣でもある。著者では
    ないが、大学卒業後、社会人になってからも政治的な思想は抱えて
    いなかった晋三が、何故、岸信介に依存するようになったのかは
    大いなる疑問である。

    やはり政治家になってから岸信介を知る先輩政治家から「岸先生
    はすごかった」と刷り込まれたのかな。

    尚、父・晋太郎氏の章で彼の異父弟であり日本興業銀行の頭取を
    務めた西村正雄氏が亡くなる前に雑誌に発表した論文が掲載され
    ているのだが、この内容が甥である晋三への貴重な警告になって
    いるのに驚く。読んだかな?晋三は。

    「寛さんも晋太郎さんも立派な人だった。だが、晋三は…」

    地元の人々の多くがそう口にしたという。地元にも三代目に関しては
    危惧を抱く人がいるんだね。おまけに大学で晋三を教えた教授陣も
    かなり辛辣な評価を下している。

    安倍晋三を評して「安倍首相は岸信介教の熱狂的信徒」と言ったの
    は、なかにし礼だった。しかし、いかに心酔してもうわべをなぞった
    だけで、非常に薄っぺらい劣化コピーでしかないと思う。

    思い出してくれないだろうか。安倍寛のDNAを。

  • 安倍晋三首相と父親である安倍晋太郎、おじいさんである安倍寛の安倍三代を描いたドキュエンタリー。とは言え、面白いのは安倍2代までで、現首相である晋三氏の伝記は至ってつまらない。

    よく言えば、項羽と劉邦の、ちょっと劉邦に似たところがある点か?

    先代2代の強烈な個性はないものの、空気のような敵を作らないおぼっちゃまなのが、現首相。強烈な個性でリーダーシップを発揮するのではなく、強烈な無個性でリーダーシップを発揮するタイプ。

    こんな首相がいてもいいとは思うのですが、青木氏は批判的です。

  • 安倍晋三の男系ルーツを掘り起こしながら
    世襲政治の是非、安倍晋三の今のあり方を問う本。

    AERA連載で版元は朝日新聞出版。

    非常に面白いんだけど、
    安倍寛、安倍晋太郎を反戦政治家として
    絶賛気味に持ち上げながら
    ただし晋三、てめーはダメだ!という
    結論ありきな感じが強いのが難点。

    安倍晋三に関して、語るべきエピソードが
    どれだけ探してもなかったという書き手としての
    恨み節がすごい。

  • 面白い。朝日新聞出版というのを差し引いても文句なく面白い。三代各々のコントラストと最後に桐野夏生まで出して、現首相の空疎さを炙りだす。本当に現首相には映画監督になって貰いたかった。
    しかし、政治の貧困と一言で政治家を断罪しても全く無意味で、要はこの国の民度の低さ・劣化度の表出そのものだと思う。改善するには将来の子供たちへの教育しか無いと思うが、こんな現世代がまともに教育を考えられるのか。悲観的になる一方です。どこから改善すればいいんですかね?
    安倍寛については全く知識が無かったのでとても興味深かったです。
    著書には今後も上質なルポルタージュを期待しています。テレビのくだらないワイドショーでコメンテータなんかしないで。

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著者プロフィール

1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。慶應義塾大学卒業後、共同通信に入社。社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、2006年に退社しフリーに。テレビ・ラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『日本の公安警察』(講談社現代新書)、『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ―徳田虎雄 不随の病院王―』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査―暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、『誘蛾灯―鳥取連続不審死事件―』『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)、『青木理の抵抗の視線』(トランスビュー)などがある。

「2015年 『ルポ 国家権力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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