ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.47
  • (4)
  • (10)
  • (13)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 144
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023316881

作品紹介・あらすじ

DNAのメス、クリスパーの全貌とインパクトがわかる!中学生にもわかる、生命科学最前線。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【メタバースがかわいく思える】
    遺伝子組換えとゲノム編集は異なるもので、リスクも異なること、自然・天然は危険が少なく、人工物は危険であるという盲目的な理解を打ち破ってくれました。
    マイナスリスクの限りなく少ない植物工場で、色・形・品質のそろったさまざまな野菜がつくられることもまじかに迫っていると感じます。

    クリスパーというはさみを使用することにより、狙った箇所を切断できるようになったとはいえまだまだ確率が低い状態です。しかし、今後はどんどんよくなることは明白です。

    受精卵で単細胞の状況でゲノム編集を実施することは容易と言いますが、遺伝要因の疾患があり、人として成長する前にその疾患を取り除くことに異論はないです。
    しかし、太らない遺伝子、頭のいい遺伝子、運動能力の高い遺伝子などを操作しはじめると、とてつもない人間を創り出してしまう可能性があります。すでに技術的にできるところまでは来ています。

    すでに創られている可能性もあります。

  • これまで何冊か読んできたライフサイエンス系の書籍の集大成として、
    最近話題の?クリスパーに関する本にチャレンジしてみました。
    生物が苦手な自分にも結構分かりやすく書かれていて、
    細かいところはあまりよく分からなくても、
    全体感を見失わない程度に理解することができてとても助かりました。

    クリスパーだけでなく、すでに実用化されているGMOについても言及されており、
    GMOをなんとなくしか理解できていなかった自分には知識のアップデートになりました。
    著者の主張には全てにおいて賛同する訳ではないですが、様々な関係者の思惑が整理されていて、
    自分のスタンスを決める参考になるのではないかと思います。

    こういった新しい技術は、不治の病を治したり、
    食糧問題を解決したりする可能性を秘めている一方、
    「絶対に安全だ」と言い切るのが非常に難しかったり、
    より倫理的な判断が求められたりと、
    克服しないといけない課題が山積みではありますが、
    これまでの「薬を作って、病気を治す」という考え方を
    一変させる可能性を秘めていることはよく理解できました。
    クリスパーは、今後も注目の技術ですね。

  • 「ゲノム編集技術」について、かなり平易な言葉で説明されている。一般消費者や専門外の者でも、分かりやすいと思われる。

    ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)というと、まず、遺伝子治療を思い起こすし、ヒト胚への応用(究極は、デザイナーベビー)について議論されるケースが多い。しかし、本書は「食」について詳しく説明しているのが特徴的だ。既存の技術である遺伝子組み換え食品(GMO)が消費者に受け入れられなかった歴史とともに、ゲノム編集食品の普及の可能性が詳しく説明されている。
    食の分野の関係者(メーカー、消費者団体等)の他、特にGMOに懐疑的な消費者には、ぜひ読んで欲しい。

    また、ノーベル賞の有力候補とされるジェニファー・ダウドナ氏の著書(「CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見」)と比べると、フェン・ジャーン博士との特許争いについての記載も多い。

  • 「科学道100冊2021」の1冊
    ゲノム編集の入門本。
    2018年刊と、進歩の著しい分野の本としては若干古いが、コンパクトに読みやすくまとまっている。

    扱っているのは、ゲノム編集、クリスパー(CRISPR-Cas9)技術に関する話題。
    本書刊行後、2020年にクリスパーが化学賞を受賞したのは周知のとおりである。
    1章はクリスパーの基礎知識、2章はその陰の特許紛争、3章は農業分野へのクリスパーの応用、4章は医療との関わりである。
    副題にあるように、「ビジネス」の視点があるのが本書の特徴で、そういう意味では2章・3章あたりが主眼か。

    ノーベル賞を受賞したのは、カリフォルニア大学バークレイ校のダウドナとその共同チームのシャルパンティエだが、実は、同テーマで受賞を有力視される研究者は他にもいた。クリスパーの特徴的な配列を最初に発見したのは大阪大学の石野らだった。また、ダウドナらと同時期に精力的にクリスパーの機能について研究していたのはブロード研究所のフェン・ジャーンらだった。ダウドナらが試験管内でのクリスパーの機能をいち早く確認した一方、ジャーンらは真核生物での働きを立証した。もちろん、ダウドナらも取り組んではいたが、特許審査のトラックに乗ったのはジャーンらが先だった。
    クリスパーは画期的な技術である。これまでの遺伝子操作に比べて、格段に正確に操作が可能で、しかも簡単・迅速に行える。応用範囲は広く、つまりは莫大な収益が見込まれるわけである。こうした技術では、論文発表より前に特許の申請を行うのは常識となっている。
    本書によれば、ダウドナらの申請の方が早かったが、ジャーンらは出願時に若干の割り増し料金を支払っていたため、先に審査のトラックに乗った。そのため、真核生物に対しては彼らの特許が先行と判断された。
    若干ややこしいのだが、アメリカでは現在は「先願主義」と称される、「先に出願したものが権利を得る」ことになっているが、クリスパー特許の時点では「先発明主義」、つまり「先に発明したものが権利を得る」ことになっていた。そのため、この特許に関しては「先発明主義」が採られる。
    この件はまだ係争が進行中で、UCバークレイ・グループとブロード研究所が争っている。2021年2月段階では(参考記事)、米国出願に関してはブロード研究所が勝利した。これにより、ではどちらが先に発明したかに焦点が移ることになるが、その立証責任を負うのはUCバークレイ側となる。スケジュールでは本年5月以降に審理が行われているはずなので、近いうちに最終的な結論が出るのかもしれない。
    ただ、本件は米国だけでなく、他国にも申請が出されており、ある国ではこちらが勝ち、ある国ではあちらが勝つというような複雑な様相もあるようだ。
    現時点でも訴訟に関して相当な金額が動いており、その金額はさらに膨らむのかもしれない。
    ノーベル賞受賞と特許紛争がどのくらい関わりがあったのか(あるいはまったくなかったのか)はわからないが、なかなかに生臭い話である。

    3章では、農作物に関して、従来のGMO(遺伝子組換え食品)との比較を中心に展望を俯瞰する。GMO食品に対しては反発が大きかった。バクテリアを使うことから消費者によいイメージを与えなかったこと、またリード企業のやり方に強引な点があったことが大きな要因としてあっただろう。「何となく気味が悪い」というイメージがついてしまったことも大きい。GMO以前でも品種改良はあり、それは放射線処理したものであったりしたわけだが、GMOほどの反発はでなかった。ではクリスパーなどによるゲノム編集ではどうか、というところだが。
    正確性が増したゲノム編集では、例えば、「食品の成分をより安全で健康によいものにする」といったものも可能になる。ただそれが消費者に受け入れられるものなのかどうかは未知数で、そもそも「操作する」ことへの抵抗が強い消費者も少なくない。まずは家畜の飼料として使用したり、食品ではなく別の製品として使用したりする形で、水面下での利用が検討されているようだ。いずれにしても、情報の開示、消費者とのコミュニケーションは不可欠だろう。

    4章では医療分野に注目する。
    ある遺伝子のある部分を改変すればその疾患にならないと判明している疾患はある。こうしたものではゲノム編集の手法は有効ではあろう。ただ、多くは受精卵の際に編集を行うことが最も有効である。そうなると、胚を操作することになる。
    また、遺伝的要因があると考えられる疾患でも、ピンポイントで原因遺伝子が判明していないものも多い。そうした場合、どの遺伝子をどのように改変するのか、判断が困難である。
    疾患というより「傾向」や「気質」のような場合はどうか。それは「デザイナー・ベビー」や「優生学」につながるものではないのか。
    慎重な判断が求められる。しかし、一方で、やれる可能性があるのであれば、やってみる者はいずれ出るであろうし、どのように規制をしていくのか、難しいところである。

  • クリスパーがゲノム編集の革新に大きく関わっていることは分かったが、その革新性がオフターゲット効果を完全に克服したものでない以上、今後も新たな技術は出てくるだろう。その流れが読み取れないのが残念。神の技術である以上、唯一の技術というものは存在しないはず。ただ、医療や薬の世界が激変することはよく理解できた。
    著作物としては技術の凄さか、特許紛争の醜さの何れかにターゲットを絞れば二重らせんの発見というドラマと遜色のないものになるかもしれないが、若干ビジネス書っぽ過ぎて残念。

  • 生物学だけでなく、世界の思想を変えてしまう可能性のある、クリスパーCas9について、専門外の人が書いた本。
    専門外ということもあり、理屈などのややこしさなどがなく読みやすかった。

    生物学を少し学んだ身としてはもっと専門的な内容も知りたいが、入門としてはとても良い本だと思う。

    <メモ>
    クリスパー
    細菌のもつ、適応免疫機構
    その部分のDNA配列を見つけ切断
    →ウイルスに対応
    →正確に切断できる

    クリスパーCas9
    ガイドRNAに従い切断
    →RNAなので編集、合成しやすい
    →従来の遺伝子組み換えはタンパク質を使うため難しい
    米国ではクリスパーCas9はGMOではない

    倫理的配慮は必要だが、遺伝子治療が可能になる
    個人に対応し創薬、治療も可能になる
    →少し異なるが、マーケティング3.0

    遺伝子は文字どおり遺伝するため、発生段階で使用すると遺伝子プールが人工的に変化する
    また、遺伝子は個性を生みだしているとも言え、個性を変えることにもつながる。

  • 比較的近々の情報が盛り込まれており大変参考になった。特に食糧関連の3章、医療関連の4章は混沌とする状況を簡潔にまとめられていて関心した。

  • 遺伝子組み換えとゲノム操作の違いについての説明が乏しい。一応わかるが…

    一般向けすぎて簡易に書こうとするあまり、かえってわかりにくい構成。

    ただ、一通りまとまっている。

    読了45分

  • 467-K
    小論文・進路コーナー

  • 科学道100冊 2021 テーマ「未来エンジニアリング」
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 467.25||KO
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/457670

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年群馬県生まれ。KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』『仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実』(以上、講談社現代新書)、『ブレインテックの衝撃 脳×テクノロジーの最前線』(祥伝社新書)、『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるか』(中公新書ラクレ)など多数。

「2022年 『ゼロからわかる量子コンピュータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小林雅一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×