海の志願兵 佐藤完一の伝記

著者 : 佐藤さとる
  • 偕成社 (2010年6月10日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784030167100

作品紹介

第一次世界大戦、シベリア出兵、関東大震災、そして…。北海道の屯田兵村に育ち、17歳で海軍機関兵に志願した青年が生きた平凡でかけがえのない日々。明治末から昭和のはじめまで、激動の時代を生きた父を、希代の児童文学作家が書き上げた評伝小説。

海の志願兵 佐藤完一の伝記の感想・レビュー・書評

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  • 童話コロボックルを書いたさとうさとるが大人向けの本を書いていた
    「コロボックルに出会うまで」
    「オウリィと呼ばれたころ」 
    そして この「海の志願兵」
    さとるが生まれてからも 父親はずっと戦艦に乗っており 一緒に暮らした記憶はただひとつ 2歳の頃 明るい戸外で そばにいた父がサッと逆立ちをしたという 父親完一はかなりまめに記録を残しているが さとるが14歳の時に戦死しており 本人に聞きただすことは出来ない あとは親戚知人からの情報でここまでまとめた集中力はすごい 生き生きとした物語りにうまくまとめられているところが さすが  

    1897 明治30年 父 佐藤完一誕生
    1911 明治44年
    1912 大正元年
    1923 大正12年 関東大震災
    1928 昭和3年 父31才 さとうさとる誕生
    1942 昭和17年 佐藤完一戦死 さとる14歳
    1945 昭和20年 敗戦全面降伏 さとる17歳

  • 子供のころによく読んだコロボックル物語の作者・佐藤さとる氏が、父・完一氏の日記をもとに書いた一海軍士官のお話。
    岐阜県の造り酒屋で生まれたが、家が傾き屯田兵として北海道に一家が移ったことから話は始まる。屯田兵は、名前の通り兵士であるが、戦いがないときは、もらった土地を開拓するのが主な仕事だった。
    そう、戦争がなければの話。しかし、日本は戦争の時代へを突入していく。海軍に所属することになった完一は、船酔いに強かったり、絵が上手という特技もあり、いろいろな人に出会って、昇進していく。そして結婚。45歳で戦死をするが、お話は、双子の姉妹、そして長男にも恵まれた33歳までで終わる。逆立ちをする父、それが長男・暁氏の最初の記憶ならば、このお話はの続きはさとる氏のお話に続くということなのだろう。

  • コロボックルシリーズの著者が描くミッドウェイで散った実父の
    若き海兵時代の伝記的青春物語。大正時代の海軍が
    10代半ばの若者の視点でいきいきと描かれていて、とても興味深い。

    よくある、戦場での悲劇や日本史的な視点での戦記モノではなく
    少年の視点、生活者の視点から軍での生活、そして戦争の気配が描かれ
    感情や息遣いが自然とこちらに流れ込んできた。

    佐藤さとるファンの視点でいえば、
    時代的には「てのひら島はどこにある」
    「安針塚のこどもたち~わんぱく天国」のちょっと前を描いた前編として
    読めなくもないかも?(もちろん内容も作風もまったく異なるけど)
    また横須賀で登場する、人物や風景は、「だれも知らない小さな国」の
    登場人物を彷彿とさせる雰囲気があったりしておもしろい。

    僕にとって、とても遠く感じる大正という時代
    まったく別の人種かあるいは、タブーように封印されて久しい
    戦前、戦中の日本人の顔が見えてくる1冊。

    明治末から大正にかけて成長していく若者の、
    今を生きる日本人とそれほど変わらない親近感・・あるいは既視感
    旧友のように、語りかけてくる何かがある。
    戦争そして、日本の歴史や文化の断絶を考えるとき、
    受け継ぐものを見失っている僕にとって、大事な指標となる
    "何か"なのかもしれない。

    認知症が進行してしまう前に
    僕も祖父からこういう話しを聞いてみたかった・・

  • この時代の生き様を克明に表現してくれてあり非常に興味深いものがあった。本人でない息子さんが記述しているということでマイナス面がほとんどないのは少しリアリティに欠けるが。伝記という部分ではおもしろかった。

  • 伝記なのになぜフィクションなのかなと思ったけど、手記からおこしているので正確ではなくノンフィクションなんだそうです。

  • 佐藤さとる氏による父親完一氏の伝記。

    さとる氏マイナスファンタジー、の本、ということで、ほかの作品とは作風がガラッと変わっている。
    正直、さとる氏の作品の魅力とは、豊かな創造性と物語の構成のすばらしさだと思っているので、そのいずれも含まれない今回の作品は、物足りない気もする(さとる氏の父上だと知らなかったら読まなかったかも)。それでいて、やはり語り口は滑らかで読みやすく、最後のシーンに自分を登場させ、あとがきでそれが自身の最初の記録であることをポツリと述べるところはやはりさすがだと思う。史実が十分でないため、「20パーセントはフィクション」と述べているが、逆に現実の抜けた穴を想像で埋める(なおかつ現実であるように語る)、という作業は並大抵のものでないと想像する。それだけ、時間もかかっただろうし、非常に丁寧に書かれている印象を受ける。

    これを読んで、再度「わんぱく天国」→「誰も知らない小さな国」と読んでいくと、父から子への家族の歴史のようなものが見えてくる。わんぱく天国に出てくる横須賀の町の様子や、震災で崩れた崖の描写なども、完一氏が海軍の兵士として赴任してくる場面に語られており、つながりが見えて面白い。カオルの父親が海軍にいて、カオルも海洋少年団に入っているのだが、このエピソードの影に完一氏を見ることができると、カオル=さとる氏の、誇らしげな様子もより鮮明になる。そして、せいたかさんが成長する過程で、父が戦死したことがほんのちょっと語られ、若くして一家を支えることになったせいたかさんのもとに、コロボックルが現れるわけだが、さとる氏自身のつらい青年時代、空想し、物語を書くということが、戦争の傷から立ち直る術だったのかとおもわせる。

    さて、本の内容の方は、明治から大正にかけての日本の状況、特に、太平洋戦争前の軍隊の内情がわかって興味深かった。厳しい軍規の下で、上司への絶対服従を強いられていたのかと思いきや、意外と人情味あふれる上司の様子や、軍隊の中で勉学に励む青年たちの姿など、今の時代の人間から見ると窮屈そうな一方高尚な雰囲気が伝わる。20代そこそこの青年たちなのだということを思えば、尊敬の念はさらに増す。こういう人たちが現代日本を形作っていき、尊い命を落としたのだ、ということ、しっかり踏まえて後世にも伝えたい。

    私の持っている30年前の「わんぱく天国」の版のあとがきに、長崎源之助氏が「いつか父上のことも」と述べている。父上に対し、父上を知る人に対し、そしてさとる氏の文学を愛する私たちに、さとる氏自身だけが長年守り続けてきた父上の思い出を共有するために書かれた本なのだろう。

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