ゆうだち

著者 :
  • 偕成社
4.24
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本棚登録 : 172
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784032324006

作品紹介・あらすじ

みなみのしまにゆうだちがやってきました。ごきげんだったあおぞらがゴロゴロとぐずりだし、やがておおごえでなきはじめると、みえるものも、きこえるものも、あめとかみなりだけになるのです。4・5歳から。

感想・レビュー・書評

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  • トリニダード・トバゴに伝わる【ヤギとライオン】という民話があり、素話にもなっている。
    ただ、それを子供たちの前で披露したことがない。
    お話そのものはとても分かりやすいのだが、ヤギとライオンが交互に歌を歌いあい、それが何度も繰り返される。
    繰り返しのたびに声の大きさと速さが違うという難易度の高さを、なかなかクリア出来ないのだ。
    話の流れからして、最後の方はほとんどパンクばりにシャウトしてしまいそうだしね。

    この【ゆうだち】という作品は、その【ヤギとライオン】を原話にしている。
    野生のライオンはかの国にはいないらしいので、作者のあきびんごさんは【ライオン】を【オオカミ】にして、話の舞台を日本の南の島に移したという。
    なるほど、それで【バイオリン】を弾いて歌うはずなのに、この話では【三味線】を弾いて歌っているのね。
    ということは、奄美か沖縄などをイメージすると良いのかもしれない。
    最初に開いたときに現れる自然描写が、とても素敵なのだ。

    突然の夕立でずぶぬれになったヤギを、温かく家に迎え入れるオオカミ。
    ところが、三味線を弾いて歌っているオオカミの歌はとんでもないものだった。
    恐怖で震え上がるヤギが考え出したアイディアとは・・・?

    挿絵のインパクトが、何しろ笑える。
    初めて家に誘われたときのヤギは、優しい顔立ちをしている。
    それが、だんだん目が寄ってつり上がり、ほとんどクレイジーなまでになっていく。
    びびるオオカミも笑える。
    歌の歌詞も原話とは違うが、こちらの方がいっそ思い切りが良い。
    読みながらどんどんハイテンションになり、はじけて行く自分がいて、笑いをこらえるのがやっとである。
    でも、ヤギの気持ちになって思い切りやるしかない!

    約9分。3歳くらいから。夏のひとときを、小さなお子と楽しんでやってください。
    2013年度産経児童出版文化賞・JR賞受賞作品。

    • vilureefさん
      うわ~、なんだか面白そう!
      子供が喜びそうですね。

      でも歌か~、ハードル高いな(^_^;)
      童謡をベースにした絵本てありますよね。...
      うわ~、なんだか面白そう!
      子供が喜びそうですね。

      でも歌か~、ハードル高いな(^_^;)
      童謡をベースにした絵本てありますよね。
      歌を知っていればまだしも全然知らずに適当に節をつけて歌うともう大変!!
      全く違う童謡になってしまったり・・・。

      でもチャレンジしてみようかな。
      あまりにも素敵なレビューなので(^_-)-☆
      2013/07/18
    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      面白そうと思ってくださって嬉しいです!
      はい、本当に面白いんですよ~

      ...
      vilureefさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      面白そうと思ってくださって嬉しいです!
      はい、本当に面白いんですよ~

      歌がハードル高そうって思うでしょう?
      でも自分のお子さんなら、そこはもう思い切りはじけて(笑)
      お話し会はよそのお子たちの前だし、失敗は許されない一度きりのものだから、
      自然とハードルを上げてしまうのです。
      大人だったら「今日は調子が悪いんだな」とか「アガってるな」とか
      割り引いてくれることもアリですが、子供は見たものがすべてですからね。
      ああ、うちの子たちももっと小さかったら、この本を読んで一緒に笑い転げるのに。。

      出たとこ勝負で、どうぞやってみてくださいな(笑)
      日ごろのお母さんとはちょっと違う姿も見せてあげないとね!
      2013/07/18
  • 南の島にゆうだちがやってきた。
    軒先で雨宿りをしているずぶぬれのヤギに、オオカミが声を掛ける。どうぞうちにお入りなさい。
    はい、ありがとう、とヤギは家に入る。
    オオカミは三味線を手にして歌い始める。
    小さな声で歌っていたが、ヤギは地獄耳。
    オオカミは、もちろん、ゆうだちのおかげでやってきたおいしそうなお客を食べるぞー、と歌っているのである。

    内心、ぎょっとしたヤギだが、オオカミに三味線を貸してもらい、歌い始める。

    狂ったように。何かが乗り移ったように。


    ゆうだちの宵には妖しいものが大気に満ちているのだ。
    そしてそんなときには、誰だって、何だって、依巫(よりまし)になれてしまうのだ。

    急に激しい雨が降ってきたら、雷がごろぴか騒ぎ始めたら、君も楽器を手に歌い狂ってみよう。何だかおかしなものが降りてくるかもしれないぞ。
    そしたらそいつと一緒に踊り狂うんだ。魑魅魍魎に身を任せ、この世の憂さを吹っ飛ばせ。

    雨の後には、何ごともない青空と、嘘みたいにすっきりした気分がやってくる。



    *この物語は元々は、トリニダード・トバゴに伝わる民話とのこと。ヤギとライオンの物語です。南の島のスコールを思い浮かべるとよいのかもしれません。場面ごとに、時計の針が少しずつ動いているのが楽しい。

    *作者は村上潔の名で日本画を制作していた人。還暦を機に「あきびんご」として絵本を制作し始めたそうです。広島・尾道に生まれたとのことなので、安芸・備後、なんですかね。

  • 夕立に遭い、オオカミの家に避難させてもらったヤギのおはなし。
    はじめは怖いおもいをしていたヤギですが…。

    やぶれかぶれになって歌っているうち、だんだんと危うさを孕んでくるヤギがほんとうに可笑しい。
    表情が面白くて絵がすごくいい!
    やはり絵本は絵が命ではないでしょうか。

    この本の読み聞かせ、難しそうですが、成功したら楽しそうですね。
    ブクログのお仲間さんのレビューを見て受験生の娘へのプレゼントに買いました。
    娘も今や18歳。早いものです。
    読み聞かせをしていた頃が懐かしい(*^_^*)

    • nejidonさん
      tsuzraさ~ん、この本を読まれたのですね!
      本当に可笑しな話で、特に絵が可笑しくて、笑っちゃいますよね。
      受験生のお嬢さんへのプレゼント...
      tsuzraさ~ん、この本を読まれたのですね!
      本当に可笑しな話で、特に絵が可笑しくて、笑っちゃいますよね。
      受験生のお嬢さんへのプレゼントだなんて、なんて楽しいんでしょう!
      勉強に疲れたらこれを読んで笑うようにと、お伝えください(笑)
      いや、笑いなんて人に指図を受けるものじゃないですよね。
      私も、まさかまさかなんですが、ついつい大笑いでしたから。

      ところで、シーナさんの本がもう少しで順番が回ってきそうです。
      そちらも楽しみです!
      2013/07/30
    • tsuzraさん
      そうなんです!
      nejidonさんのレビューにワクワクしたので取り寄せました。
      傑作ですよね。
      nejidonさんに感謝です(^ ^)/
      そうなんです!
      nejidonさんのレビューにワクワクしたので取り寄せました。
      傑作ですよね。
      nejidonさんに感謝です(^ ^)/
      2013/07/30
  • とてもおもしろい民話を基にした絵本。

    読み手の腕の見せ所
    私がこの絵本を読み聞かせると、
    子供が泣き笑います。
    腹筋が崩壊するそうです。
    普段のギャップに悶絶します。

    夏の一冊、読み聞かせするのが楽しみです。

  •  南の島に夕立がやってきました。ご機嫌だった青空がゴロゴロとぐずりだし、大声で鳴き始めると、見えるものも、聞こえるものも、雨と雷だけになるのです。
     ヤギが夕立にあったのは、ちょうどオオカミの家の前でした。オオカミの家に上げてもらったヤギは、オオカミの歌を聞きます。「夕立がきたらうちにいるのが一番。美味しいお客が向こうからやってくる~♪」怯え上がったヤギは慌てて歌い返します。

  • 作者のあきびんごさん。本業は日本画家とのこと。
    とにかく、絵に迫力があります。
    とくにヤギがすごいです。
    絵の激しさだけでなく、字体も変わってゆきます。

    ゆうだちに遭い、オオカミの家で雨宿りをすることになったヤギ。
    三味線にあわせて歌いながら、食べる食べられるの駆け引きがはじまります。
    こわーいオオカミ、と思いきや、ゆうだちの激しさとともに、ヤギのテンションがどんどん上がっていきます。
    自分が何をしているのか、自分が何なのか、わからなくなっていく感覚・・・。
    子どもが読めば、ヤギの様子に純粋に怖さを感じるかもしれませんが、大人が読むと、加えて違った怖さを感じるかもしれません。

    最後はゆうだちがとおりすぎ、すがすがしいほどの南の島の風景。
    小学校3年生に読み聞かせをしたら、とても喜んでくれたそうです。純粋に、ヤギが怖い、と感じてくれたみたいです。

    ――さて、このおはなしで、一番怖い思いをしたのは誰だったんでしょうね?

    私は、読んでいた自分が、一番怖かったと思います。

  • オオカミはほんとにびっくりしたんだろうね。やぎのくるいっぷり演技もなかなか

  • 「あらしのよるに」のはなしに似ているスタート、ですが、弱気なオオカミと賢いヤギとのやりとりがドキドキですよ。オオカミの家族思いの様子がよく描かれています。

  • 今年の一番笑った本です。
    やぎの歌がどんどんエスカレートしていく姿が、笑えます。読んであげる私もなんだかどんどんおかしくなってくる。子供たちと一緒に「メ-!!」とシャウトしています(笑)

  • あき びんご (著)

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著者プロフィール

1948年、広島県尾道市生まれ。東京芸術大学日本画卒。絵画や染付などの個展活動をおこなっている。絵本に『したのどうぶつえん』(第13回日本絵本賞、第25回「よい絵本」選定)『あいうえおん』『ぼくとかれんのかくれんぼ』『ででてくるぞ でてくるぞ』『30000このすいか』(第21回日本絵本賞大賞)『ねこだらけ』(以上、くもん出版)、『ゆうだち』(第60会産経児童出版文化賞 偕成社)、教育書に『太陽ママと北風ママ』などがある。また、幼児教育の研究者として、現在もさまざまな教材・教具・文具の開発をおこなっている。

「2019年 『ゴロゴロゴロゴロ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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