こんとん

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (41ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784033328904

作品紹介・あらすじ

名前がないので、誰でもない。誰でもないから、何にでもなれる。それが、こんとん。六本の足を持ち、六枚の翼を持つけれど、目も耳も鼻も口もなく、いつも空を見あげて笑っている、こんとん。
そんな、こんとんのところに、ある日、南の海の帝と北の海の帝がやってきた。
帝たちは、こんとんに、二つの目、二つの耳、二つの鼻の穴、そして口、あわせて七つの穴を作ってやることにしたのだが──。

中国神話に登場する「渾沌」の伝説をもとに、夢枕獏が語るせつない物語。
その「ものいわぬもの」のイメージを松本大洋が愛しさをこめて描いた美しい絵本。

感想・レビュー・書評

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  • こんとんはこんとん。
    どこまでいっても、こんとん。
    なのに、ね…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「こんとん」という、人間のものさしでは測れない存在がいた。

    あるとき、こんとんのもとに、2人の帝が遊びに来る。

    帝は言った。
    「どうして君には、耳も目も口もないのだろう」

    そして帝はこんとんに、耳と目と口と鼻と…あわせて7つの穴をつくってやった。

    するとこんとんは…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「じぶんの 目で みる きく かぐ 
    じぶんの 口で かたる。
    それは なんだか とてつもなく 
    たいへんな ことだったんだろうね。」
    (引用)

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ふしぎな絵本でした。
    ふんわりしていて、つかみどころのない「こんとん」という存在。
    そんな「こんとん」のことを、人間のものさしで測ろうとしても、測れるものではありませんでした。

    人間である帝にとって、目・口・鼻・耳があるのは当たり前のことでした。
    でも人間ではない「こんとん」には、当たり前のことではありません。
    でも帝は、自分にあるものが「こんとん」にないのはおかしいと感じ、わざわざ、目・口・鼻・耳を「つくってやった」のです。
    …って、なんすかその上から目線(苦笑)
    しかも、この帝の姿が、なんともまた「つくってやった」という感じの顔立ち・表情なので、マッチ具合が絶妙でした。

    人間にとっては当たり前のことも、「こんとん」にとっては当たり前ではありません。
    でもこれって、人間同士にも言えることではないでしょうか。

    自分にとって当たり前のことも、相手にとっては当たり前ではない。
    自分にとっての当たり前のことは、相手にとっては「なんだかとてつもなく、たいへんなこと」だったりする。
    そしてそんなたいへんなことを押しつけられた方は…

    …はて、目・口・鼻・耳を作られてしまった「こんとん」は、一体どうなってしまったのでしたっけ…

    続きは絵本でどうぞ。
    (それにしても、この話を語っている人は、一体、「誰」なんだろう…?)

  • 「じぶんの目でみる きく かぐ
     じぶんの口で かたる。」
    「それはなんだかとてつもなく
     たいへんなことだったんだろうね。」

    松本大洋さんのイラストと夢枕獏さんのコラボ。どこか哲学。混沌ってなんだろう。ひらがなで書くと印象が変わるなあ。言葉にすると響きが変わるなあ。こんとんこんとん。おもしろいなあ。(4分)#絵本 #絵本が好きな人が繋がりたい #こんとん #夢枕獏 #松本大洋 #偕成社

  • なんだか、泣けちゃいました。
    もう、これしか書けません。
    いろんなひとに、いろんな子たちに、読んでもらいたい。
    立ってる場所で、
    心持ちで、
    感じることが変わってきそう。
    そういう意味で、手元に置いておくとよいな。と思う絵本です。

    出版社さんのSNSで、カバーとか本のつくりに、たくさんの仕掛け、思いが込められてることもわかり。
    作り手さんの愛が感じられる本って、ほんとに、ほんとに、よいなぁ。

  • 「こんとんになりたい」
    と誰かが言うかもしれない。

    この世は、
    目を瞑りたくなることや、
    耳を塞ぎたくなること、
    鼻をつまみたくなること、
    口をつぐみたくなることが溢れているから。

    それでも心を奮い立たせて、
    目をそらさず、
    耳をそば立て、
    匂いを嗅ぎ分け、
    声を出す。

    生まれる時に与えられた穴という穴を開いて、
    空に笑う。
    その強さがほしい。

    「もう目も耳も鼻も口もいらない」
    「こんとんになりたい」
    と、もしも誰かが言った時、
    守ってあげられるように。

    「きみのことがすきだよ」と伝えられるように。


    夢枕獏さんが文、
    松本大洋さんが絵を描いたという、
    とんでもないタッグの絵本。

    中国神話に登場する<渾沌>の伝説をもとにした
    オリジナル作品です。

    絵本だけど、その枠に捉われず、
    多くの人に届いてほしい。

    もんのすごいです。

  • つかみどころがない。まさに混沌。こんとん。

  • <肴>
    夢枕獏のファンである。もうずいぶん長い間のファンである。当然出てくる書籍は全部読む。たとえ絵本でも読む。

    でも「こども向けコーナー」に行くのは少し勇気が必要。まさに混沌だ。いや漢字ではないな。こんとん だ。ひらながだと,なんだか酒の酒のつまみの名前みたいだ。それもまたよかろう ヵ(^^)/カカカ!

    今は暑いし台風なので,外で飲む,なんてのは出来ない。が,こんとんの様に空を見上げて笑いながらおいしいお酒が飲める季節に早くなれなれなってくれ。

  • 中国神話の「渾沌」の伝説

    Wikipediaより
    渾沌(こんとん、拼音: húndùn)または混沌は、中国神話に登場する怪物の一つ。四凶の一つとされる。その名の通り、混沌(カオス)を司る。

    犬のような姿で長い毛が生えており、爪の無い脚は熊に似ている。目があるが見えず、耳もあるが聞こえない。脚はあるのだが、いつも自分の尻尾を咥えてグルグル回っているだけで前に進むことは無く、空を見ては笑っていたとされる。善人を忌み嫌い、悪人に媚びるという。

    他では、頭に目、鼻、耳、口の七孔が無く、脚が六本と六枚の翼が生えた姿で現される場合もある。道教の世界においては、「鴻鈞道人(こうきんどうじん)」という名で擬人化されている事があり、明代の神怪小説封神演義ではこの名で登場している。

    荘子には、目、鼻、耳、口の七孔が無い帝として、渾沌が登場する。南海の帝と北海の帝は、渾沌の恩に報いるため、渾沌の顔に七孔をあけたところ、渾沌は死んでしまったという(『荘子』内篇應帝王篇、第七)。転じて、物事に対して無理に道理をつけることを『渾沌に目口(目鼻)を空ける』と言う。

  • 図書館にて。
    深すぎてよくわからなかった。
    嫌いではないけれども。

  • 弱い、強いという価値観から離れたくなった時に読みたい絵本。
    こどもでもおとなでも、裸の気持ちで読めるのではないでしょうか。すっと救われた気持ちになりました。

  • 生きるって,聞こえない、見えない方がよいことってたくさんあって、潰されてしまうこともあるよね。

    聞こえなくても見えなくても空をみあげてわらっていたこんとんが私もすきだな。

  • むふふ

    いつも
    空を みあげて
    わらっていたっていう
    こんとんのやつ

    おれは
    なんだか
    すきなんだよねぇ

    私も好き!

  • 読み終わって、良い衝撃をうけたなぁって思えた。
    好きだな。こういうの。

  • 【ただ空をみあげて笑ってる、こんとん。好きですよ】こん、とん♫言葉の使い方、リズム♫いいね。ひらがな、それもいい!他人に良かれと思ってしても、本人にとっていいこととは限らない。終わりは切ない。モジャモジャ目も耳も口もない「こんとん」。見る、聞く、口で話す、当たり前にできることでもないのよね。名前もない、誰でもないから、なんにでもなれる。なぞめいて、いとおしい。笑うことは素敵なこと。モジャモジャ、怖くかんじる?それとも愛しく思う⁈捉え方は人それぞれだけど。私は笑顔で過ごすキミが好き。今度は空で笑っててね

  • 何もしないであげることが、
    ただそこにいることを知っているだけのことが
    いいなんてことも、あるんだよ

  • なぜこんとんは死んでしまったのだろう。
    なぜこんとんは死ななければならなかったのだろう。

    うーん。

  • 「こん とん こん とん」と繰り返すリズムが、読み手を物語につなぐキーワードになっているようだ。

  • 松本大洋さんの絵がとても素敵。

    絵本の世界を作る色。

  • 目鼻等がないのに笑ってるのは不気味で怖い生き物かと思ったが、逆にのんびりほんわかしていた。それに人間がお節介をした結果は、絵本ならではの表現で、はっとさせられた。

  • なんで人は余計なことをするんだろう。
    あるがままでいいじゃない

  • 深い。とっても深い。
    まるで哲学のよう。

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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