さくらの谷

  • 偕成社 (2020年2月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (32ページ) / ISBN・EAN: 9784033330006

作品紹介・あらすじ

かつて、わたしが一度だけ行ったことのあるふしぎな谷のお話です。
まだ山が枯れ木におおわれる春の手前、林の中の尾根道を歩いていたわたしは、のぞきこんだ谷を見ておどろきました。そこだけが満開の桜にうめつくされていたのです。
聞こえてくる歌声にさそわれてくだっていくと、谷底で花見をしていたのは、色とりどりの鬼たちでした。鬼なのに、ちっともおそろしいという気がしません。まねかれるまま、わたしは花見にくわわります。目の前のごちそうは、子どもだったころ、運動会の日のお重箱に母がつめてくれたのとそっくりです。
「かくれんぼするもの、このツノとまれ」
ふいに、一ぴきの鬼がとなえると、鬼たちはたがいのツノにつかまって長い行列になりました。列の最後の鬼のツノにつかまったわたしは、かくれんぼの鬼をすることになります。わたしは、林の中をかけまわってさがすのですが、なかなか鬼たちをみつけることができません。
そのうちに、だんだんふしぎな気持ちになってきました。わたしがおいかけているのは、ほんとうに鬼なのでしょうか。だって、いま、あの木のうしろにかくれたのは、わたしのおばあちゃんのようでした。こっちの木のかげには、おかあさんが。そこの木のうらには、おとうさんがかくれました。それは、みんな、みんな、もうこの世をさってしまった人たちなのでした。
でも、そうか。みんな、ここにいたのか。桜の谷であそんでいたのか──。
そうわたしが思ったとき、風がふきわたり、谷じゅうの桜がいっせいに花びらをちらします。
気がつくと、わたしはひとりぽつんと雑木林の中に立っていました。満開の桜はきえていましたが、ヤマザクラの枝さきに、大きくふくらんだ花のつぼみが見えました。どこかで、あの鬼たちの歌声が聞こえるようでした。

みんなの感想まとめ

不思議な世界に迷い込む体験を描いた物語は、桜の満開の谷で繰り広げられます。主人公は色とりどりの鬼たちと共に花見を楽しみ、かくれんぼを通じて亡くなった家族や友人たちとの再会を果たします。この幻想的な体験...

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な世界に迷い込んでしまったお話。
    桜に化かされたのかな?
    でも亡くなった人に会えたかもしれないのなら、私は化かされてもいいや。
    おじいちゃんにも、おばあちゃんにも会いたい。
    この間亡くなった友達にも会いたい。
    夢に出てきたの。
    普通におはようございまーすって入ってきたから、私抱きしめて良かったよーって大泣きして、友達はどうしたのー?って困って笑っている所で目が覚めた。
    目が覚めてしばらくボーッとして現実を思い出して悲しくなった。
    会いたいよ。

  • 幻想的でおとな向けかなと思う絵本。

    さくらの花にうもれたふしぎな谷。
    谷底から ひびいている楽しそうな歌声。
    歌声に誘われて、谷へとくだると…
    鬼たちが、うたっている。
    鬼の手まねきに誘われ、ごちそうを食べ、かくれんぼをしていると…
    あの木やこっちの木やそこの木に隠れているのは…
    おばあちゃん、おかあさん、おとうさん
    みんな亡くなった人たち
    みんなさくらの谷で、あそんでいたのか…

    桜の命は、短くてあっという間に散ってしまう。
    せめて亡くなった人も桜を楽しんでくれたらいい。

  • さくらを見ていたら 不思議な世界に入ってしまった
    鬼が宴会をしている中に入ってしまった 鬼とおにごっこをする事に
    沢山いる中 自分が鬼になる?
    鬼を探しているのにふと 見ると
    鬼ではなく 亡くなった人たち・・・

    来年も又会いに来るかも?

  • 「わたし」が迷い込んだ、桜咲く美しい谷。読者も一緒に幻想に誘い込まれてしまいそうです。花見の宴や鬼ごっこに誘ってくれた、鬼たち。全くこわくなく、寧ろ懐かしいのは…。
    来年の桜は、亡くなった親しい人たちを偲びながら見ることにしましょう。

  • 美しい絵本
    富安陽子さんの文が好きだ。
    完結でやさしい。

    おにたちのかくれんぼ
    なつかしいかくれんぼ

    かくれんぼって なんか切ない

    さくらの谷では よけい……

    そうか みんなここであそんでいたのか

    ≪ さくらちる みんなであそぶ さくらちる ≫

  • 富安さんの講演会で、富安さんが読み聞かせしてくれた絵本④富安さんのお言葉

    富安さんのお父様が亡くなった日の夜に見た夢。まだ春手前の冬の様子の山を見て、もう父と桜を見ることはないんだと思うと、とても寂しく思っていたそう。
    自分に寄りすぎて欲しくなくて主人公を男の人にしてもらったが、内容はそのまま。最後、皆ここにいたんだ、と楽しくなって笑って起きたとのこと。

    2時間の講演の間、まったく座らず水も飲まず、物凄くパワー溢れる方でした。お子様の話から今後創作される予定のお話までとても面白かったです。お話上手でたくさん笑わせてもらいました。とっても楽しかったです。

  • 富安陽子氏の講演会で本人に読んでいただいた。
    『感想』
    〇本人が夢で見たことをもとに作られたそうだ。

    〇おにごっこすることも、隠れているのがもう亡くなっているご家族であるところも夢のままらしい。

    〇子どもは同じ本で中身がわかっていようとも、何回でも驚けるし、何回でも喜べる。その気持ちを忘れたくないな。

    〇読む子どものことをたえず考えている、絵本作成に関わる仕事は素晴らしい。

  • 富安さんは箕面在住
    今は車で遠くまで行けるけど昔の人は
    雲が沸いて見える池田の方とかには行けなかった
    そこには桜が咲くような谷があるかもしれない
    …というのが創作の原点
    お父さんが亡くなった3月にふとそんな夢を見たそう
    ラジオ深夜便 明日への言葉

  • ブックデザイン/タカハシデザイン室

  • 実際に富安さんが読み聞かせをして下さった印象に残る絵本。

  • 1ヵ所だけ桜が咲いている谷に行き、
    宴会をしている鬼たちにまじって
    おにごっこをすることに。
    しかもたくさん鬼がいるのに、
    自分が鬼になる。
    ふと気づくと不思議なことが…
    いかにも富安さんらしい、不思議で楽しいお話。

  • 凄く好き。手元に残したい。

  • 富安さんがお父さんを亡くされたときに見た夢から生まれた作品。
    夢のようでいて、現実と続いているような気がする。
    悲しさのなかに、懐かしさと、これまで幸せであったことの感謝や、これからも生きていこうという希望がうかがえる。

    富安さんの文章から生まれた松成真理子さんの絵が美しい。どうやって2人で作りあげるのだろう。2人で作ることで、チカラが何倍にもなったように感じられる。

    春が近づけ枯れ木の山、谷間の桜という色の変化。色とりどりの鬼たちの鮮やかさ。鬼たちの表情に惹きつけられる。

    桜の木の下でかくれんぼ。姿が描かれていないのに、鬼や人の気配が感じられることに圧倒される。

    そうか、と気がついたときに、桜の花びらがちる。
    気がつくとヤマザクラのつぽみ。

    見事!



    偕成社のウェブマガジン
    父を送った夜の、“幸せな夢”から生まれた絵本『さくらの谷』
    https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/s/osusume/osm200210/

    エッセイ「ききみみずかん」からお父さんのエピソード
    ランドセル
    https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/kikimimi/kkm2/

  • こんな谷があるといいと思った。会いたい人に会えるかな。懐かしいお弁当があるかな?

  • 2021.3.8 3-3

  • 大人向け、若しくは小学校高学年以上に向けた絵本かなぁ。
    ちょっと思い描いていたものとは違った。
    物悲しい、寂しい中に一筋ほっこりする感じ。

  • 読み聞かせさせる親のほうが、次のページはどうなる?!とドキドキしながらページをめくりました。
    不思議な雰囲気のある、展開が読めない絵本。親のほうが読んでいて楽しめるのかも。
    4歳の息子は「どゆこと?」と言いながら聞いていました。想像力を掻き立てられた様子。
    感想をたくさん話してくれたのでよかった。

    「俺、もう一回読んでみる」「青鬼はどうやって隠れたんだっけ」「鬼のみんながおうちに帰って、めーっちゃ遠いところに行ったんだよ」「それで、いーち、にーって数えたとき、鬼がみんな逃げちゃったのかな」「さみしそうだった」

  • さくらの花にうもれたふしぎな谷

    いちどだけいったことがあるその谷では
    おおぜいの人たちが、たのしそうにお花見をしていました

    よくみれば、それは人ではありません
    色とりどりの鬼たちでした

      ・

      ・

      ・

    去った人たちと残された人が出会うところ

     父を見送った夜、
     なんだか幸せな夢を見ました。
     その夢をずっととどめておきたくて、
     この絵本をつくりました。 富安陽子 ──帯より

    異形のものをやさしく描く富安陽子ならでは奇跡のものがたり
    松成真理子の描くさくらがうつくしい、お弁当がおいしそう

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著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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