ぼくは川のように話す

  • 偕成社
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本棚登録 : 417
感想 : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (42ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784034253700

作品紹介・あらすじ

「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
苦手な音をどもってしまうぼくは、クラスの朝の発表でもまったくしゃべることができなかった。放課後にむかえにきたお父さんは、そんなぼくを静かな川べりにつれていって、ある忘れられない言葉をかけてくれた。

吃音をもつカナダの詩人、ジョーダン・スコットの実体験をもとにした絵本。
デビュー以来、作品を発表するごとに数々の賞を受賞して注目を集めるシドニー・スミスが、少年の繊細な心の動きと、父親の言葉とともに彼を救ってくれた美しい川の光景を瑞々しいタッチで描いている。

感想・レビュー・書評

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  • 胸が張り裂け、涙がとめどなく……
    この本は、障害のあるカナダの詩人ジョーダン・スコットさんが、自身の事を書いたものです。
    そして絵は、カナダの画家シドニー・スミスさん。
    翻訳は、原田勝さんの手によって私の手元に来ました。

    ジョーダン・スコットさんは、小さい頃から吃音(きつおん、どもり)で苦しんでいました。言葉が、出てこないのです。そんな時には、お父さんが川に連れて行ってくれます。そして「ほら、川の水を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ」と教えてくれます。
    川は、あわだって、なみをうち、うずをまいて、くだけていた。
    「おまえは、川のように話しているのだ」

    僕は、泣いてしまいそうなときは、この言葉を思い出そう。
    ーーーぼくは川のように話す。
    そして、だまりこんでしまいそうなときも。
    ーーーぼくは川のように話す。
    思いどうりに、言葉が出てこない時は、どうどうとした、この川を思いうかべよう。
    あわだって、なみをうち、くだけている川を。
    そして、急流の先でゆっくりと流れ。
    なめらかに光る川のことを思いうかべよう。
    ぼくの口も、この川の流れとおなじ。
    これがぼくの話し方。
    川だってどもっている。
    ぼくとおなじように。

    【読後】
    言葉が上手に喋れないことによる、学校での過酷な生活環境に憤りを覚えます(怒り)
    障害があり、どもるジョーダン・スコットさんが、お父さんのアドバイスで、自分を取り戻します。
    私には、どもった経験はありませんが、時々言葉が出てこなくなることがあります。
    そんな時に、すらすらと言葉が出てきたらと思うときがあります。

    ぼくは川のように話す
    2021.07発行。字の大きさは…大。2021.09.25読了。★★★★☆
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【バックナンバー】
    ジョーダン・スコットさんのバックナンバーは、私の本棚より「タグ」→「タグの一覧を絞り込む」に「ジョーダン・スコット」と入力。または、その中からジョーダン・スコットを探してください。そうすると著者ジョーダン・スコットさんの本が一覧表示されます。
    私は、本を登録するときには、著者名と登録した年(2021)で登録しています。たまにシリーズ名でも登録もします。例えば「風烈廻り与力・青柳剣一郎」などです。

  • 養老孟司さんがテレビ番組でこのようなことを仰っていた。
    「言葉は、なかなか出てこないのが普通なの。ぼくみたいに、スラスラと出てくるほうが異常なの」
    吃音のことを言ったのではないだろうが、この言葉に、言葉がなかなか出てこないときもあり、言い間違いも多い自分がどんなに救われたか。

    この絵本の主人公のジョーダンは吃音で、言葉がなかなか出てこない。
    たぶん、頭の中ではスラスラと言葉を喋れているんだろう。
    それなのに、言葉が脳から出て、喉を通り、口に出すと、全然うまくいかない。
    その絶望を、朝起きたときの瞳のアップの絵からひしひしと感じる。
    学校では、話すと笑われ、馬鹿にされるから、必要なとき以外はいつもだんまり。
    そんなジョーダンの絶望を希望に変えたのは、父親の「言葉」だった―――。

    ジョーダンは「言葉」によって苦しめられ、「言葉」によって希望を見出だし、詩人という「言葉」を使う人になった。

    お父さんの『ほら、川を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ』という「言葉」で、目の前で広がる大自然の川の風景と、自分のありのままの姿が一体となって、「自然がこのままで美しいんだから、ぼくもこのままの喋り方でも美しいのだ」と、「受容」ができたんだと思う。

    コンプレックスを抱えるすべての人に読んでほしい一冊。

    ご紹介くださったやまさんはじめフォロワーの皆さん、ありがとうございました。

  • ぼくには、うまく言えない音がある。
    「ま」はぼくの舌に絡みつき、「カ」は、喉の奥に引っかかって出てこないし、「つ」でつっかえたぼくは、魔法にかけられたようにうめくしかない。
    ぼくの口は動かない。朝からいろんな言葉がつっかえたままだから。
    そんなぼくを迎えに来てくれたお父さんは、「うまくしゃべれない日もあるさ。どこかしずかなところへいこう」と川へ連れて行った。
    うまくしゃべれないことで、笑われたことで、胸の中に嵐が起こり、目が涙でいっぱいになったとき、お父さんがぼくの肩を抱き寄せていった。
    「ほら、川の水を見てみろ。
    あれがお前の話し方だ」
    見ると川は……
    あわだって、
    なみをうち、
    うずをまいて、
    くだけていた。
    「おまえは、川のように話してるんだ」

    吃音に苦しむぼくが、父親の言葉によってそれを受け入れることができたようすを感動的に描いた絵本。








    ******* ここからはネタバレ

    吃音に苦労する著者が、その吃音を「怖いくらいに美しい」と思えるまでになったきっかけを綴った物語です。

    これは本当にドラマチック。

    まず、絵が素晴らしい。
    コマ割り(っていうんですか?)にも工夫がされていて、文章をとっても助けています。
    「ぼく」が川のように話していると気づく場面は特に感動的です。

    吃音であること自体は変わらないけれど、受け入れることで、それが自分自信を表すものになっていく過程がすばらしい。

    この気持ちの変化は、すべての人のコンプレックスに活用できますよね。
    そうしたら、ありのままの自分を受け入れ愛すことができることができる人が増えていくのではないかと思うんです。

    難しいことは描いていないので、読める子なら、中学年からいけると思います。
    でも、この本は、ぜひぜひ"全人類に”読んでもらいたいです!!!

  • カナダの詩人、ジョーダン・スコットの実話に基づいた絵本で、吃音に悩む少年へ投げかけた、お父さんの言葉が身に沁みる。

    『ほら、あの水の流れを見てみろ。おまえの話し方にそっくりじゃないか』

    その言葉が浸透するにつれて、少年は川と一体化し
    、無心に泳ぐ姿はとても美しく、これを見て、最初私は、遙か昔から存在する偉大なる大自然と、同等に見做されたことが、少年にとって喜ばしく励みになったのだと思ったら、そうではなかった。

    これもまた、お父さんの心遣いに胸を打たれると共に、私も共感できるような思いを抱いたのだが、要するに、『おまえは独りじゃないんだよ』と言ってくれていたこと。

    目の前で、急流になったり、ゆったりとしたりしている、この川も、どもってるんだよ、と。

    このお父さんの考え方には、とても私の心に響くものがあり、それは吃音を治すとか以前に、まずは、『ひとりぼっちにさせないこと』を考えてくれていたこと。
    それが、自分事のように嬉しかった。

    それから、シドニー・スミスの絵について、「このまちのどこかに」も印象的だったが、本書では、人間の心理状況の生々しい表現が素晴らしく、授業中に先生に指名されたときの、クラスの皆が振り返った時の歪んだ絵は、主人公の心の映像であり、それらの顔に目や鼻や口が無くても、主人公の辛い状況が痛々しいほど感じられて、私も辛かった。

    また、それとは対照的に、お父さんに肩を抱かれて川を眺める姿には、後ろ姿であっても、二人の表情が想像できるようで、とても感動的だった。

    話を元に戻すと、ひとりぼっちでないことを実感することは、改めて、本当にひとりだということも実感する。

    どもる人は、ひとりひとり、皆違うということは、その苦労も人それぞれ違うということで、時には、なめらかに話したいと思うのも分かるような気はするが、それはぼくではない、と作者は言う。

    『ぼくは、川のように話すのです』

    そう、その思いは、おそらく本人にしか分からないだろうし、その揺るぎの無さを感じさせる様には、これからの生きる希望も、ありありと感じさせられる。

    ちなみに、上記の作者の談は、あとがきにあたる、「ぼくの話し方」に詳しく書かれてあり、人との結びつきと、ひとりについて考えさせてくれる、大人にも読んで欲しい内容だと思いました。

    そういえば、タイトル文字、荒井良二さんが書いてるのですね。すごい。

  •  カナダ人絵本作家で、吃音のある詩人をささえた少年の日のできごと。
    「ぼく」の心をすくった美しい川の光景が、心情あふれる言葉とみずみずしい絵によって胸にせまる絵本。

     『朝、目を覚ますといつも、僕のまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、言えない音がある』本書より一部抜粋

     「どもり」は差別用語となっているようです。吃音症の人は日本では約120万人、世界では約7千万人いるといわれ、2歳から5歳の間に発症することが多いそうです。

     あれはダメ、これもダメと言い出すと切りがありませんが、それぞれの人には触れてほしくないことがあるかもしれません。

     僕にもダメなことがあり、耳が赤くなり赤面して、眼から大粒の涙が流れてランドセルを放置して小学校から自宅に逃げて帰ったことがあります。これは秘密です
    この絵本が、子どもたちの教育に活かされることを願います。

     読書は楽しい。

  • 吃音症を抱えたぼくは、世界を構成するたくさんの音の中に発するのが苦手な音がある。
    ある日、学校の発表でうまく発することができないことを恐れて、身のすくむ思いをしてしまう。
    そんな日の父親との帰り道、父親が寄せる「そんな日もあるさ」という励ましに始まる、自信欠如克服のための物語。

    圧倒的な父性。

    正直、「お前は川のように話すんだ」がどれだけ的を得た表現、発想転換となる言葉なのかぴんとこないところもあったのだが、父親が息子に寄り添う優しい雰囲気が溢れんばかりに伝わってくる。
    また、見開き4ページ分に渡る、つきものが落ちた僕の姿を描く場面の神々しさは圧巻。

    こんな風に共に困難を乗り越えていける父子関係を築いていきたいものだ。

  • 『ぼくは川のように話す』みやこしあきこさんの先行レビュー! - 翻訳者の部屋から
    https://haradamasaru.hatenablog.com/entry/2021/06/25/120459

    ぼくは川のように話す | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784034253700

  • 最近疲れ気味で、でも本が読みたいときは絵本を取り寄せている。
    何名かのブク友さんの本棚で見かけたので、気になって読んでみました。
    ゆっくり読むと、美味しい水のように染み入る文章で、ほろりとする。
    主人公の心の機微を繊細に表現されたコマ割りと色彩の美しい挿絵。
    おとうさんとのお散歩、川のあわと、なみと、うずに不安が溶けていく。
    何度か音読して、心のわだかまりが浄化された夜でした。
    ブク友さんのおかげで素敵な本に出会うことができました。
    ありがとうございます。

  • 静かな色彩で描かれた絵がとてもすばらしい。男の子の胸の内で、世界はこんなにも美しく見えている。それを表現するのにぴったりな話し方だと思った。

    岸にぶつかり、しぶきをあげるたび、川面にはきらきら、光のつぶ。

  • みんなと違う喋り方のせいで、
    いつもびくびくしている様子が伝わってくる。
    色んな言葉がつっかえたまま、
    喉の奥に松の木が生えたみたいに苦しい。
    お父さんが優しい。
    川に連れて行ってくれるが、
    学校の様子を思い出してしまう。
    みんながクスクスゲラゲラ笑った。
    涙が出る。悲しい。
    川がキラキラしていてきれい。
    心が静かになる。
    川も流れるだけではなく、泡だったり、渦を巻いたり、どもる。
    例えば、有名な、みんなの前で話す人だって、
    誰だって噛んじゃうことあると思う。
    それを笑ってはいけないと、思った。
    うちの息子は、高校生の時に生徒会長だったのだが、壇上に上がって話をする時に、緊張して噛んでしまうことが多かった。
    友達に「今日は3回も噛んだ」とよくからかわれていた。
    その頃は笑って話していたが、心の傷ってどうだったのか?
    落ち込んだ?
    思い出してしまう。
    流れるように話すこと。
    川のように話すこと。
    からかわれた時には、川を思い出そう。

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著者プロフィール

ジョーダン・スコット Jordan Scott
1978年生まれ。カナダの詩人。2018年、これまでの業績に対してThe Latner Writers’ Trust Poetry Prizeを受賞。初めて絵本のテキストを手がけた本書により、シドニー・スミスとともに、障害をもつ体験を芸術的な表現としてあらわした児童書を対象に選ばれるシュナイダー・ファミリーブック賞を受賞。

「2021年 『ぼくは川のように話す』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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