石のねずみストーン・マウス (ほんやく童話)

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  • Amazon.co.jp ・本 (109ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784034313602

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  • 4-03-431360-9
    C8397¥1000E.

    石のねずみ ストーン・マウス

    発効1997年7月初版1刷
    作者:ジェニー・ニモ
    画家:ヘレン・クレイグ
    訳者:安藤紀子(あんどう のりこ)
    発行所:株式会社 偕成社

    NDC933.
    -------------
    カバー袖より
    石のねずみ ストーン・マウスは、海辺のマリアおばさんの家で暮らしています。
    夏休み、家族でやってきた エリーと、マウスはすぐに仲良くなりました。でも、兄のテッドは、なぜかマウスをいじめるのでです。海に投げ込んだり、土に埋めてしまったり…。
    マウスは思います このまま、石ころに戻るのは嫌だ、生きていたい!と。
    --------------------------
    ふるい児童書
    表紙の画が好き、中の装画も同じ画家さん。ぬくもりのある絵で、マリアおばさんの家での出来事なので、室内の様子が描かれていますが、電話が家庭用固定電話で玄関先にあって、形は電電公社時代の黒電話みたい。(イギリスの作家さんと画家さんの絵本ですが、あちらの国でもこの形だったのかしら?)この絵を見て、電話だって今どきの子どもならわからないかも。家の壁紙も賑やかな柄です。
    28ページには家の鳥観図みたいな画があって、家の裏側は庭とその先に階段、それを下ると浜辺と海。海から1軒目、道を挟んで住宅はあるけど、お隣はなく断崖絶壁が続き、添えられた樹木は強風で斜めになっていそうな感じ、ユリシーズムーアの舞台はもう少し辺鄙な感じかしら?二階には海側に窓が3つ、そのうちの一つがエリーの部屋。この絵もとっても好き。

    物語は
    マリアおばさんが留守にして、その間お父さんとお母さんとテッド兄さんとエリーのお話。
    おばさんの家にはストーン・マウスという石のふしぎなネズミと猫が2匹モス・とミニー。庭にはバラもある。
    到着してすぐに、エリーはストーン・マウスに気が付くけど、機嫌の悪いテッドはとにかく危険w
    加えて、お父さんがかまどの使い方を知らなかったりで、最初の食事に手間取る。ストーンマウスはかまどの使い方を教えて(煙突の排気バルブを開きかた)事なきを得る。テッドのご機嫌はなかなか難しく、マウスにやったたりする。気が付くと、海へ捨てたり、庭のバラの根元に埋めたりする。猫たちが掘り返しても届かないほど深く。
    ストーン・マウスはテッドが掘り起こしたときに「死んじゃうかと思った」という、テッドは「僕だって、友達がいなくなっちゃうのに…。」という。
    テッドの友達ジョンは居なくなってしまう、「どこに行くかも知らせてもらえない。最後に一緒に遊ぶ約束をしていたのに、ここへ来ることになってしまった」と話す。親たちは知らなかったことを謝り、ジョンをよぶことにした。エリーはマウスに「ありがとう」と言い、マウスは片方の目をぎゅっとつぶった。
    --------------------------
    前半はテッドはほんとに嫌な奴で、マウスがどうなってしまうのかハラハラする。石のネズミなのに豊かな感情と知性を感じ好感を持つ。それだけにテッドが一層悪者になる。
    猫たちの働きで、テッドが嫌な奴になったのが、親(大人たち)が子どもを振り回した事にも、要因があることがわかる。(もちろん、普段素行が悪くなければ、テッドが荒れたら不思議に思うはずだけどね)マウスはそんなテッドに同情する。テッドの機嫌の悪い原因を知った親たちはテッドの親友のジョンのことを取りなす。エリーは猫やマウスと一安心する。
    エリーもマウスも良かったね~って一安心して本を閉じれる。王道だけどやっぱりいいなぁって展開になっていた。
    くたびれたとき、また開きたい本です。

    このシリーズは全部で15作あるみたい(続巻があるかは不明)だけど、この作者さんの作品は見当たらない。他の本も和訳があるかしら?・・。


    著者さんについて
    作者●ジェニー・ニモ
    1944年イギリス南部ウィンザーに生まれる。
    様々な仕事を経験したのち、74年に結婚、ウェールズに移る。
    75年に処女作を発表 その後、約十年のブランクを経て、84年から幅広い年齢の読者に向けてファンタジーを中心とした作品を書き続けている。
    本書「医師の眠三」でカーネギー賞次席「雪グモThe Snow Spoder)で須磨―ティーズ賞を受賞
    画家●ヘレン・クレイグ
    1934年ロンドンに生まれる。写真・陶芸などを手掛けた後、69年に子どもの本の世界に入る。ネズミをはじめ、動物尾えに定評がある。代表作に絵本ネズミのアンジェリーナシリーズ 町のネズミと田舎のネズミセーラー出版などがある。イギリス南部在住。
    訳者●安藤紀子(あんどう のりこ)
    1943年東京生まれ津田塾大学英文科卒。
    桜草をのせた汽車(ぬぷん児童図書出版)
    テレビの好きなきょう竜くん
    お疲れネズミ西部へ行く
    ペニーの日記読んじゃダメ(偕成社)などがある

  • あたたかい気もちにさせてくれる本です。

    石のねずみが、決して万能なヒーローなんかじゃないのが、いいんだよなぁ。
    自分自身があやうく、よわく、悩みをかかえていて。
    しゃべれるけど、とても小さな声だし。
    みんながみんな聞きとってくれるわけでもないし。
    もちろん、動けないし。
    だれかの助けがないと、だれかが見ていてくれないと、だれかが存在を信じてくれないと、もとの硬くて冷たくて無口な石に戻ってしまう……

    でも。だからこそ、かな。
    お兄ちゃんの「だ〜れも、わかってくれない!」「みんな敵!」という、とんがりまくった心を、ゆっくり、ゆっくりほぐしてくれたのだと思います。

    ひとりじゃない。って、元気になれるイチバンの呪文なのかも。

    (3年生に紹介したら、早速かりてくれました。
    本を閉じたとき、あったかい気もちになってくれてるといいな。
    そっと願ってますが、はたして……。)

  • 訳者つながりで巡り会い、お友達の感想をみて読もうと思った本。タイトルや作者、表紙絵をみて手に取ることはなかったと思う。会えてよかった、ストーンマウス!悩みや不満をうまく表現できず当たり散らすしかないお兄ちゃんが石のマウスを通して自分の気持ちを吐き出していく様子が表情豊かに描かれている。ストーンマウスも人も同じ。相手にうまく伝わらないもどかしさを感じたり、心が通じ合わず冷たい石ころに戻ってしまう怖さを抱えたり。もっと読まれていい傑作だと思う。

  • 味わい深い佳作。些細なことながら、大人の都合に振り回される子どもの怒りがよくとらえられていると思う。子どもにとっては、“今”が何より大事なのだから・・・

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