黒い海賊船 (黒ねこサンゴロウ 4)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035282402

感想・レビュー・書評

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  • 海賊船にあう

  •  サンゴロウシリーズ四作目!今回の語り手はサンゴロウと、彼に憧れる若者イカマル!絢爛たる娯楽都市三日月島へと出航だ!年少の若者の視点からサンゴロウのカッコよさや自由さが生き生きと描かれている。楽しげながらも危うい匂いのする三日月島の住民達と恐ろしい海賊達というゲストキャラの性格も相まって、何もかもが新鮮に見える若い視点が映えるお話だった。

  • イカマルが憧れるのもわかる。サンゴロウ、巻を重ねるにつれカッコよさ増量。

  • サンゴロウが超好み。カッコいい。子どもの頃読みたかった。

  • きちんと、文学

  • イカマルのサンゴロウへのあこがれ、感じやすかった!
    そりゃ、鳥のように優雅に港に入ってきた、うみねこ船を見て、その船を操縦している人が、こっちに挨拶してくれたら、だれでもすきになっちゃうよね。分かるな~、その気持ち!!
    スリル感も面白かった。さすが、竹下文子さん。
    あまりにもリアルで、全部信じちゃってますもん。
    絶対に、三日月島や、うみねこ島はあるんだ、って。

  • 『黒ねこサンゴロウ』シリーズ第4巻。

    今回は見習い船員イカマル視点です。
    イカマル視点ですので、本当にサンゴロウが格好良く描けています。
    “憧れ”が入っていますからね。

  •  サンゴロウに憧れる若者の視点を交えることによって、サンゴロウの心のヒダを少し覗かせてもらっています。

     覚えていない過去。あまり人に心を開かない性格。
     それも多少強引なイカマルのアプローチで溶けていくようです。

     船とサンゴロウの関係がやはり、いい。

     イカマルが子供の頃見かけた、マリン号とサンゴロウのシルエット。
     心に残ります。

  • サンゴロウを「親分」と慕うイカマルがついにマリン号に密航。
    いつもの航路で待ち構える不吉な予言。

  • 今回の話の中心は、サンゴロウとサンゴロウにあこがれているイカマル。

    前編5巻の中では、もっとも冒険物の要素が強い。

    三日月島ではサンゴ屋からあずかった細工物がいい値で売れる。

    サンゴロウは、ちょっとべつの島に寄り道したあと、三日月島に行く
    いつものコースを向かっていた。

    最近、三日月島の近くで海賊がでるといううわさがたっていた。

    黒い船で、マストがないその船は、うみねこ船ではなく、
    海賊はうみねこ族ではないということだけはわかっていた。

    帆に風をうけて、すべるようにはしっているマリン号。

    ところが、床下から物音が聞こえて・・・。

    いつもひとりで航海するサンゴロウにあこがれいたイカマルが
    こっそりマリン号に忍び込んだのだった。

    サンゴロウシリーズは、ずっとサンゴロウが語り手というわけではなく、
    その物語の相手役が語ることもある。

    本書では、サンゴロウが「おれ」で語る章と
    イカマルが「ぼく」で語る章が
    縄を編むように交互に紡がれていく。

    サンゴロウとイカマルの関係も、
    『キララの海へ』や『やまねこの島』の
    サンゴロウとナギヒコに負けず劣らずおもしろい。

    サンゴロウのイカマルへの接し方を見ていると、
    サンゴロウは自分では気づいていないのだろうが、
    結構な育て上手である。

    サンゴロウ自身は、自分は教えるのは下手だと思っているところがまたおもしろい。

    かえって教えるのが下手だからとか、
    自分のまねをしたらいけないと思っているくらいの方が
    よい指導者になれるのかもしれない。

    サンゴロウは、マリン号の操舵をイカマルに任せて、
    やらせたら口うるさいことは言わない。

    でも、大切なことはしっかりと伝えているのだ。

    サンゴロウとイカマルのやり取りの中で、
    サンゴロウがどういうねこなのか、
    どうやって今のサンゴロウになったのか、
    さりげなく浮かび上がってくる。

    これはサンゴロウが一匹で航海していたのでは、見えてこない。

    陸にいるよりも船や海に話す時の方が饒舌なサンゴロウに語らせるには、
    船乗りとしてはまだまだ見習いのイカマルは最高の相手役なのである。

    自分が何者なのかは、結局、相手に自分を映すことでしかわからないのかもしれない。

    イカマルを見て、サンゴロウは、だれかを思い出すような気がする。

    だが、サンゴロウには思い出せない。(読者には、だれだか分かるのだが。)

    サンゴロウの過去やルーツについてもこのように行間に見え隠れする。

    イカマルがなぜマリン号を好きなのかもイカマルの内省で明らかになる。

      夕やけで、波がすっかり金色になっててさ、もうじき暗くなるっていうころに、
      一そうの小さい船が、防波堤をまわって、港にはいってきた。

      むかい風に、ななめにむけた白い帆が、鳥のつばさみたいで、
      あとはほとんど黒いかげになって、
      その船は、ゆっくり、ぼくのいるさんばしにちかづいてきた。

      ぜんぜん音もたてなかった。

      のっている船乗りが、夕やけをバックにして、
      きれいにきりぬいたかげ絵みたいにみえた。

      かっこよかった!

      もう、なんていうか、ぞくっとするぐらいに。

      これだ、っておもった。

      磁石にすいよせられちゃうみたいに、その船から目がはなせなくなった。

    イカマルと一緒にひとめぼれを体感し、
    マリン号にもサンゴロウにも惚れ直し、さらに好きになるような気持ちになる。

    ついでに、自分が何かに吸い寄せられた瞬間を、
    自分の言葉で残してきたいと思っている自分の気持ちを再認識させられた。

    どんなに他の感覚で記憶していても、
    自分にとって大切なことは自分の言葉でそれを描写する必要があって、
    そうするのはとても幸せなことなのだと、イカマルが教えてくれた。

    三日月島に上陸した以降から、物語は新しい展開を見せていく。

    月ねこ族が多い三日月島は、異国情緒に溢れている。

    そして、黒い海賊船の出現。

    この危機がやってきたときのサンゴロウとイカマルの会話がまたおもしろい。

    サンゴロウは、海賊船から逃げながら、どうやってイカマルを逃がすかしか考えていなかった。

    そして、対話の中で、相手の気持ちが読める・・・。

    最高のコンビである。

    笑いたくなるような泣きたくなるような素敵な関係だった。

    イカマルの言葉を借りるとこうなる。

      ぼくは、この船がすきだ。

      それから、親分のことも。

      すごく自由で、すごくたのしく、すごくこわい。

    イカマルは饒舌で、親分大好き節は、さらにさらに続くのだが、この辺で。

    サンゴロウにますます惚れてしまう1冊である。

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著者プロフィール

1957年、福岡県に生まれる。東京学芸大学在学中に童話集『星とトランペット』でデビュー。「黒ねこサンゴロウ」シリーズで路傍の石幼少年文学賞を、『ひらけ! なんきんまめ』で産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。『なまえのないねこ』で講談社絵本賞など6つの賞を受賞。主な作品に「のりものえほん」シリーズ、『まじょのむすめワンナ・ビー』『トリケラトプスのなんでもないいちにち』『しゃっくりくーちゃん』『ねえだっこして』『にげろ! どろねこちゃん』『なんでもモッテルさん』などがある。静岡県在住。

「2022年 『三日月島のテール 行くぜっ! 海の宅配便(全5巻)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹下文子の作品

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