最後の手紙―黒ねこサンゴロウ旅のつづき〈5〉

著者 :
制作 : 鈴木 まもる 
  • 偕成社
4.16
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本棚登録 : 138
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035283003

感想・レビュー・書評

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  • 本作は、黒ねこサンゴロウシリーズの最後の1冊である。

      おれは日記をつける習慣はない。

      三日まえはどこにた?

      五日まえはなにをしていた?

      ひと月まえは?

      そんなことはおぼえていない。

      ただ、海があって、船がある。

      たいくつなんかしない。

    こんなサンゴロウだが、彼は自身の過去の記憶と向き合うことになる。

    サンゴロウの失った記憶について、友人で医師であるナギヒコはずっと気にかけている。

    ナギヒコは、サンゴロウの記憶について、
    うみねこ島にむかうとちゅうで、なにかおそろしい目にあって、
    それを忘れようとして消してしまったのではないかと考えている。

    記憶は戻らないのではなくて、戻せない。

    自分で封印しているのだと。

    そして、その鍵はサンゴロウ自身の中にあると。

    ナギヒコは、その記憶が戻せないのを、うみねこ島の医学ではどうにもならないのを悔しく思い、
    一方、同じく医者であるクルミは、その封印は解くべきではないと考えている。

    理由は分からないけれども、自分で選んでいるのだから正しいことのはずだと。

    本作は、サンゴロウからナギヒコへの手紙という形式を取っている部分がある。

    そこでサンゴロウは過去を回想するのだ。

      じぶんがだれなのか、それをさがすのに、船がいちばん役にたつとおもった。

      そのとおりだった。

    消えた記憶は自分が閉じ込めたのだとしても、
    なぜ閉じ込めたのか、例え苦しむことになっても、
    それを知らなければならないとサンゴロウは考えた。

    サンゴロウは、過去を知るために、ウミガメ号の船長を引退し、今は病床にあるカジキじいさんを訪ねる。

      キララの海とハナミサキ海岸のあいだには、ブロックがある。

      おれがあそこで難破したときに、ウミガメ号は<ブロックぬけ>をやった。

      そうですね?

    サンゴロウは、マリン号でブロックぬけをやれないかと考えていたのだ。

      おれがこの島にやってきた、その道すじを逆にたどる。

      そうすれば、すべての記憶がもどる。

      ばらばらのかけらが、きちんとつながる。

      いや、そんな保障はどこにもない。

      反対に、もういちどすべてをうしなうことになるかもしれない。

    サンゴロウは悩む。

    そんなとき、北の海でヨットクラブのヨットが転覆し、
    カジキ船長の娘のミサキが行方不明になってしまう。

    それを聞いたカジキじいさんが病身を押して救出に出てしまうのだ。

    サンゴロウは、カジキじいさんを追って、そして、ミサキを助けるために北の海に出る。

    そこでサンゴロウが見たものは・・・。

    私にはこれ以上を語ることはできない。

    ただ、サンゴロウは黒ねこでなければならなかったのだということは言える。

    そして、彼の抱える過去―彼は誰なのか、どこから来たのか―とその過去が象徴するもの。

    それらを思い出さずとも自然と身に纏って生きてきたサンゴロウは、
    この物語の主人公として生きるふさわしい存在だったのだ。

    本シリーズは、全体としての文字数はそれほど多くはない。

    だが、その余白は物足りなさを感じさせない。

    そのまま読んでもおもしろいのだが、余白が深読みを許容する度量のように見える。

    本作は、サンゴロウがうみねこ島に来てから3年後と書かれていた。

    ケンとミリとサンゴロウの時間的には5年後である『ケンとミリ』が一番最後の話になるようだ。

    サンゴロウが誰でどこから来たのかが、シリーズの一番最後に語られ、
    それが全体の物語に見事な説得力を与えてくれた。

  • サンゴロウシリーズ最終巻。
    足掛け10年、やっと最後まで読むことが出来ました…!!
    三回くらい途中で断念したんですよね(^^;;

    サンゴロウらしい終わり方だったと思います。

    サンゴロウが記憶と向き合う話。
    とにかく記憶が戻ってよかった…ケンが報われなすぎて可哀想だったからね!!

    ナギヒコに手紙を出すって言うのがいいぬ(`・ω・´)


    サンゴロウさん、お疲れさまでした。
    これからもマリン号と共に自由気ままに旅してください。

  • 「サンゴロウの旅、終わっちゃった!」
    ・・・と思っている方!違いますよ!?
    サンゴロウの旅は、永遠です。一生終わりません・・・!!
    「オレはな、あんたがきらいなんだよ。がまんならないんだ。
    あんたの自信と、つよさと、こわいもの知らずの度胸がさ。
    いつも冷静でおちついていられるところがさ」
    って文章。あれ、ドキドキしませんか?
    この本、ハラハラさせてくれるから、めっちゃ気に入ってます!!

  •  静かなピアノ曲。
     短調の調べ。
     ノクターン?

     病院の待合室でページをめくりながら、ふと耳にしたBGM。
     手にしていた物語にとても、よく合っていた。


     過去の記憶を持たぬサンゴロウ。
     その封じ込めた記憶の箱は、
     開けた方がいいのか。
     開けぬ方がいいのか。

     新しく積み重ねた記憶が増えるにつれ、葛藤が増していく。



     恩のある猫の病気。死の匂い。
     記憶を探る旅への出発に、踏み切れぬ思いに迷いながら友人に書く「最後の手紙」


     いつの間にか
     曲は変わり、静かではあるが少し明るいヴァイオリンに。

     サンゴロウの帰る港が見えるかのような偶然のBGM。

  • サンゴロウは自分の記憶を取り戻すべきかそうしない方がいいのか迷っていた。
    迷いつつしだいに近づいているのだった。
    そしてヤツとふたたび出会う。

    こども向けかもしれないけど高い年齢層のためでもあるでしょう。
    その点ではムーミンのお話に近いかもしれません。

  • サンゴロウの旅終わっちゃった~。

  • 過去に何があろうとも、サンゴロウの帰る港は決まっている。

  • 衝撃の結末!

  • 「なにがだいじで,なにがそうじゃないか,とっさに判断するくせがついている。ときには,ほんとうに必要なものだって,ほうりださなきゃならないこともあるんだ。」…この10冊のシリーズにおけるサンゴロウというキャラクタの魅力はこの文章に集約されています。

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著者プロフィール

1957年、福岡県生まれ。作家。おもな作品に『ちいさなおはなしやさんのおはなし』(小峰書店)、「クッキーのおうさま」シリーズ(あかね書房)、「おてつだいねこ」シリーズ(金の星社)など。画家の鈴木まもるさんとの共作絵本に、『せんろはつづく』『おすしのせかいりょこう』『すすめ! きゅうじょたい』(金の星社)、『ちいさいいすのはなし』『りんごのおじさん』(ハッピーオウル社)、『ならんでるならんでる』『でんしゃがきた』(偕成社)などがある。『月売りの話』で「日本童話会賞」、『星とトランペット』で「野間児童文芸推奨作品賞」、「黒ねこサンゴロウ」シリーズで「路傍の石幼少年文学賞」を受賞。

「2016年 『すすめ! うみの きゅうじょたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹下文子の作品

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