- Amazon.co.jp ・本 (109ページ)
- / ISBN・EAN: 9784035283904
感想・レビュー・書評
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「高楼方子」さんは、児童書に於いて、大人も楽しめるような、物事を違った視点から見ることの素晴らしさを教えてくれる、固定観念にとらわれない思考法を持たれる素敵な方なのだが、「たかどのほうこ」と平仮名表記の場合は、小学生向けに、よりテーマを絞った内容となっているようで、本書に於いても、とても大切なことを教えてくれる。
物語は、小学四年生の女の子「つんちゃん」の母のいちばん下の妹、「ルーちゃん」が食べ物を求めて、つんちゃんの家にやって来る知らせを聞くところから始まり、どうやら、それは恒例のことらしい。
大人から見たら、仕事につかないで絵ばっかり描いているルーちゃんのことを、現実を見ていないとか、グータラ娘とか思う中、つんちゃんだけは、彼女の違う一面に気付いており、それは彼女の描く絵の中に感じられた、『やっぱりわかんないけれども、でも、なんだかこう、きもちのよくなるような、とてもきれいな絵』や、彼女がつんちゃんに話してくれる、奇想天外でワクワクしながらも心にすっと残るお話といった、目には見えない部分を感じ取れることの素晴らしさにあるのだと思う。
そして、彼女のお話が教えてくれる最も大切なことは、それが、実際につんちゃんの学校生活で起こったことを聞いた上で創作したものであることから、人の行いを見て、たとえそれがどんなに突拍子もなく奇異なものに思われたとしても、そこには、その人だけの大切な理由があるのかもしれないということであり、それは、人を目に見えるものだけで軽々しく判断してはいけないという、簡単に出来そうで実は案外難しいことを、様々な視点のお話から教えてくれる本書は、きっと小学生の心にも特別なものを残してくれるでしょう(対象年齢の作品としては☆プラス1)。
また、それとは別に、私が本書に興味を持ったのは、ブク友のakikobbさんのレビューを見て、高楼さんの作品『ルチアさん』に近いものを感じたからであり、それは、そこに書かれていた『「ここ」にいながら「どこか」にもいる』という内容とも似通っており、『ルチアさん』が、大人になってからそれを実感したことに対して、本書は、子どもの頃から、それを実感することが出来ることを教えてくれているようで、それは、どのような生活環境に於いても、毎日に自分だけの楽しみや希望を持って生きていける、そんな素敵な人生を送ることを可能にさせる、人間の持つ感受性豊かな心の目の素晴らしさだと思う。
そして本書は、絵も高楼さんが描かれていることから、本編と密接に絡み合った、まとまりのある本の作りも素晴らしく、それは、切手にも見えそうな目次の愛らしい絵もそうだが、なんといっても、表紙と裏表紙が繋がった絵の奥の深さであり、そこには、曜日順に手を繋いでいる女の子たちの絵の並び以上に、その下の草叢に何気なく潜んでいるものたちの存在に加え、キムとつんちゃんがとても似ているように見えるのは、物語を読み終えた後ならば、きっと大きな感動を与えてくれるであろうことから、これは家族の物語でもあったのだ。
akikobbさんのおかげで、高楼さんの素敵な作品と出会うことが出来ました。
改めて、ありがとうございます。 -
ルーちゃんはお母さんの妹で、絵描きさん。食べ物がなくなるとやってきて、お母さんからの頼まれごとをこなしながら数日間滞在し、缶詰やなんかをゲットしてまた帰っていく。滞在中は小学四年生の私の部屋で絵を描いて過ごす。お母さんはルーちゃんのことを、大きな子どもみたいなどと言うけれど、私はルーちゃんとルーちゃんの絵が大好き。学校から帰るとすぐにルーちゃんのところへ飛んでって、その日の出来事を話す。するとルーちゃんは絵を描きながら、それに答えて面白いお話をしてくれるのだ。この本は、ルーちゃんがやってきたある一週間のお話。
ルーちゃんのお話は、想像力を働かせることの素晴らしさを教えてくれる。
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ルーちゃんはおかあさんの妹。ときどきうちに泊まりにきて、わたしの部屋で絵を描く。おはなしもしてくれる。帰るときには、おかあさんから食べ物をいっぱいもらっていくんだよ。
(『キラキラ子どもブックガイド』玉川大学出版部より) -
ルーちゃんみたいなオトナになりたかった……かも。
たかどのほうこさんのお話、すきです。 -
おかあさんの妹のるーちゃんは、
遊びに来るたびにステキなお話をわたしにしてくれる。
るーちゃんのお話は、
わたしをたのしい気持ちにしてくれるから大好きなの。
『ルチアさん』と似てる、と私も感じました。(「ル」ですしね!?)
たださんのレビューを読んで、他者のことを思いやるた...
『ルチアさん』と似てる、と私も感じました。(「ル」ですしね!?)
たださんのレビューを読んで、他者のことを思いやるための想像力/感受性と、自分の楽しみとして夢や空想を広げていく想像力/感受性とが、別の文脈で語られることも多いけれど、元は同じ力なんだなと思いました。本の中でも、最後の日のだけ、それまでの、つんちゃんのお話を元に、似た誰かが出てくるお話をルーちゃんがしてくれるというお決まりのパターンから外れますけど、どちらもひっくるめたルーちゃんを好きだというつんちゃんが、素敵だなあと思います。
そして、そんなつんちゃんとルーちゃんが似ているように見える、というところから家族の物語を読み取られたたださんの鑑賞も、いつものことながら素晴らしいなあと思いました。
コメントありがとうございます(^^)
akikobbさんも、そう感じましたか。
おそらく何度も似たような...
コメントありがとうございます(^^)
akikobbさんも、そう感じましたか。
おそらく何度も似たような形で出てくるのは、高楼さんにとっても、大事な位置付けにあるもので、是非、本書の対象者である小学生たちにも、知ってほしかったのではないかと思うんですよね。
また、他者への思いやりと、自分の楽しみとが、元は同じ力だと思われた、akikobbさんの考えにハッとさせられるものがありまして、だから、人の喜びは自らの喜びでもあるのだと実感することが出来ました。
ありがとうございます。