盆まねき

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035306108

作品紹介・あらすじ

毎年8月がくるとなっちゃんの家族はお盆をむかえにおじいちゃんの家へでかけます。富安陽子が描く日本の夏。

感想・レビュー・書評

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  • 講演と対談 「日本児童文学が宮沢賢治から受け取ったもの」
    一般財団法人大阪国際児童文学振興財団
    http://www.iiclo.or.jp/03_event/02_lecture/index.html

    盆まねき | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784035306108

  • なっちゃんが八月のお盆をおばあちゃんの家で親戚の人たちとともにご先祖さまの供養をする3日間の出来事が描かれている。
    1章おじいちゃんの話、2章フミおばちゃんの話、3章大ばあちゃんの話をなっちゃんが聞くのだか、どの話も不思議でちょっとこわくて、美しく、心に残る。
    4章でなっちゃん自身が体験する不思議な世界。そして最後に書かれたもうひとつの物語。

    子どもの頃のお盆の行事の楽しさや不思議さ、ちょっと怖い気持ちまでもが甦り懐かしくなった。
    大人から昔の話を聞くのは楽しかった。写真でしか知らない昔の人の話を聞いては、みんな繋がっている不思議を感じていた。

    「人間は二回死ぬ。一回目は心臓が止まったとき。二回目はみんなに忘れられたとき・・・」印象的な言葉。
    お盆の行事を通して子どもは生と死、命の繋がりを感じてゆくのでしょう。もうそんな習慣も楽しさも知らない子どもが増えたのでしょうね。

  • 身近なひとの死を、お盆という期にひとりの少女が考える。
    それは、戦争でたたかって命を散らしたひとへのレクイエムでもあった。
    深遠なテーマをやさしく素直な文章で綴った、児童書にしておくのは惜しいほどの作品。
    後半、涙でほとんど文字が見えないほど泣いてしまった。
    外国人にはとうてい理解できない、日本人のお盆の習慣。
    理解できなくて良いのだ。日本人らしいからこそ、麗しいのだもの。
    亡き人との魂の交流など、どうして言葉で説明できるだろう。
    そしてそれが、明日からの生きる原動力になることなど。

    親戚でにぎわう祖父母の家でお盆をすごすなっちゃん。
    そこで、大人たちから聞かされる三つのお話しの楽しさと妖しさ。
    ああ、そう言えば夏をこうして過ごしたなと、懐かしさあふれる場面だ。
    この世の 【ふしぎ】に出会う、お盆はそんな特別な機会でもあった。
    だが、それだけでは終わらない。
    失われたひとと、そのひとを思って生きる家族たちの心の交流があるのだ。
    ひとは二度死ぬと言う。
    二度目がないように、わたしもいつまでも覚えていようと、あらためて思った。
    やや長い、著者によるあとがきも必読。
    フジテレビ賞受賞作品である。

  • 富安陽子の本の中で1,2を争うくらい好きな本です。
    いつもはただ不思議な終わるのですが、作者の戦争で亡くなった特攻隊の伯父様のことがベースにあると知って、最後の章は涙が止まりませんでした。
    私も伯父が戦地で亡くなったいます。
    今のうちに母にきちっと聞いておかないと、伯父の生きていたことを知っている人がいなくなってしまいますね。
    急がなければ。

  • 高安陽子さん、大好きでーす^ ^

    うそつきは、いかんけど、
    ほらふきなら、いいのかもね^ ^

  • 小学3~4年生向け。

    3章くらいから、「死んだ人を思い出すのって、ドーナツの穴みたいだな」と思いながら読んでいた。
    穴だけでは存在できないけど、周りでいろいろ記憶してくれていることで存在する。
    ドーナツ部分が出っ張ったりへこんだりする形をそのまま受けて、穴の形も決まる。

    自分はどんな「穴」になりたいか。
    奥さんや子供が覚えてくれていたら、それで十分だな。
    「いいドーナツの穴だったねぇ」と思い出してもらいながら、「それはドーナツ自体がいいものだからだよ」とうっすら気づいてもらえたらいいな、と思う。
    死んでからは穴づくりできないから、今から作っておかないと。

  • 著者の講演会で、この本のいくつかのエピソードは実体験だと聞いた。本当にこういう家族であったらしい、富安家は。なんでもものになるのに三代かかるというが、ほら吹き三代目で作家が生まれたのだな、と感慨深い。
    富安陽子にしては珍しく戦争についても触れられているが、基本明るく楽しく面白い人なのであんまり暗くはならない。
    しかし、こういう親戚に囲まれて育つとは、なんと幸せな子ども時代であったことか。羨ましい。

  • 小中~:富安陽子さんの本は、ふしぎな世界へいつも招かれる。とても温かみがあって、時にはぞくりとしながらちゃんと安心できる場所に着地させてくれる。「お盆」という年に一度のご先祖さまとの交信をかみしめたい。

    この本は、「野間児童文芸賞」を受賞した作品です。
    富安さんの講話で、この作品の中の一つ「ナメタロウ」の話を朗読してもらいました。とても気持ちがほっくり温まり、語ってもらう楽しさを知りました。
    すぐに4年生の朝読おはなしタイムで子ども達に伝えました。
    富安さんの「身近なふしぎをいっぱい伝えたい」というメッセージがつまった本です。サイン本が私のパワーブックになりました。

  • 毎年8月がくるとなっちゃんの家族はお盆をむかえにおじいちゃんの家へでかけます。おじいちゃんは昔、人間の言葉が分かるナメクジを飼っていたよ。大ばあちゃんは、河童に宝物をもらったよ。それって、ほんとにほんとの話なの?田舎で過ごすお盆の3日間。(『キラキラ子どもブックガイド』玉川大学出版部より)

  • なっちゃんはお盆におじいちゃんの家に行く。お盆には大勢の人がおじいちゃんの家に集まる。なっちゃんはおじいちゃんやおばちゃん、大おばあちゃんたちから嘘か本当かわからないちょっと不思議な話を聞く。「ウソは人をだますこと、ホラは人を楽しませること」だって。なるほど。不思議な話からはじまって戦争で亡くなったおじさんとの交流、最後の章では実際に戦争でなくなった富安さんのおじさんの話へ。小学生にも伝わる優しい語り口調で人の命の尊さや儚さや強さ、故人を想うこと、戦争の悲しさや虚しさまで伝えてくれる本。伝わっていってほしい。

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著者プロフィール

1959年生まれ。1991年『クヌギ林のザワザワ荘』(あかね書房)で第24回日本児童文学者協会賞新人賞、第40回小学館文学賞を受賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズ(偕成社)で第15回新美南吉児童文学賞を受賞、2001年『空へつづく神話』(偕成社)で第48回産経児童出版文化賞を受賞、『盆まねき』(偕成社)により2011年第49回野間児童文芸賞、2012年第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、2021年『さくらの谷』(絵・松成真理子 偕成社)で第52回講談社絵本賞を受賞。絵本に「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズ(絵・降矢なな 福音館書店)、「オニのサラリーマン」シリーズ(絵・大島妙子 福音館書店)などがある。

「2023年 『そらうみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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