選ばなかった冒険―光の石の伝説 (偕成社ワンダーランド 17)

著者 :
  • 偕成社
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035401704

感想・レビュー・書評

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  • テレビゲームを模した殺伐とした異世界へ転移させられ、眠るたびに、異世界と現実世界とを行き来することとなった小学6年生の子どもたちの物語。
    1997年発刊。現在は「異世界転移系」ライトノベルが氾濫し、中にはあっけらかんとしたものも多いけれど、本作が表現しているように、ふたつの世界それぞれが持つリアルさの板挟みになり、思い悩む人間としての姿がないと、物語は説得力を持たないのだと改めて思う。
    現実があるからこそ虚構に喜びと悲しみを覚えることができ、虚構があるからこそ現実がはっきりとした輪郭を持つという、ファンタジーの持つ力を強く感じる作品。

  • とってもとっても好きな作品。
    とっても考えさせられる内容で、何度も何度も読んだ。
    この偕成社ワンダーランドシリーズはお気に入り。

  •  保健室へ向かう途中、校舎がダンジョンのように変わってしまった。そこは、学が昨夜遊んだゲーム『光の石の伝説』の世界だった。暗いダンジョンをさ迷う学とあかりは、ハリー、勇太、バトルなど頼もしい仲間と出会い、ゲームそっくりのこの世界に疑問を抱きながらも“光の石”を探し求める。


     図書館本。
     正直、消化不良な話だった。
     まず、作者の主張がどこにあるのか不明。一見、敵を殺してばかりのゲームに批判的なようにも見えるが、結局はガンジー的な非暴力主義ではやっていけない事態になる。

     また、ゲームとリアルを混同しすぎて、登場人物たち(主にあかりと学)の言い分や思いがグダグダ。都合の良い時だけゲーム内の理屈を持ち出したり、現実の倫理を適用してみたり。

    『これはやっぱりゲームではない。いや、テレビゲームのほうが不自然なのかもしれない。』

     当たり前。コンピューターゲームというのは不自然に決まっている。ただのプログラムなんだから。

     一頃、ゲームと現実の区別がつかないということが少年犯罪において取り沙汰されたが、この小説はその裏返しのように見える。
     現実ではリセットしたら死んだ人が生き返るなんてことは無いし、データセーブもあるわけがない。
     反対に、敵だって生きるために必死、それを殺すなんて非道な人非人!なんてファンタジーRPGの中で主張されても困るわけで。
     花を踏むなんてひどい!なんてマリオに言う人、いないっしょ?(いるかもな……)
     現実とゲームの線引きが出来ていないという点ではどっちもどっちだと思う。


     んで、結局このゲーム世界は何だったんですかね? 闇の王の正体は? 学とあかりの通う学校が舞台なのはなぜ? 光の石って結局何やねん?
     そのへん、み~んな放置でおしまい。読んでも得られるものはあまり無いかな。
     いきなりこの作品で初・岡田淳というのはオススメしない。「二分間の冒険」とかの方が良い。

  • 子どもが主人公の童話。変に説教くさくないのがよい。大人が読んでも十分面白けど、子ども時代にぜひとも読みたかった。

    テレビゲームの中に迷い込んでしまった少年少女の物語なのだけど、何通りにも解釈ができるというか、何について書かれていたかと問われたら、読者それぞれに違うことを答えるだろうという物語である。
    一方で、あれこれ解釈を加える前に、圧倒的に没入してしまうような、どきどきわくわくが盛り込まれた冒険譚でもある。子どものときに読んだら、一生ものの読書体験になったのではないかな。「はてしない物語」を読んだ少年のように。

    生きることの辛さも知った大人としては、ゲームの中に入るのも、この世にオギャーと生まれるのも理不尽なところは似ていますね、という雑な解釈を1つ与えて満足してしまった感がある。その解釈で読み進めても、最後は爽快であり切なくもあった。

    他にも色々な読み方ができるので、読書会のテーマによいと思った。

  • 面白い。そして、戸惑いや足手まとい感がリアルで深い。昨今の異世界トリップものの全能感やお気楽モードに不快感を覚えていたので、嬉しい。

  • 実は読むの2度目。 
    岡田淳作品を読み始めたきっかけの本。

    自分が通っている学校が、急にゲームの中のダンジョンのようになっちゃうってのがドキドキ。
    しかもそっちの世界と現実世界を夢の中で行き来しちゃう。
    学校通ってたら、もしかしたらこの学校も急に・・・って想像してビビったりしてたかも。

    高学年向けだから、撃たれたりしたら死ぬんだよねぇ。
    向こうの世界で死んでも、向こうの記憶を無くして、
    元の世界に戻るだけなんだけど、それでもはっきりと死ぬって事を書いてるのは低学年向けとは違うなと。

    中盤から徐々に向こうの世界の秘密がわかり始めるんだけど、いろいろ考えさせられる。
    最初のちょっと浮かれてた感じはどんどんなくなって、
    厳しい現実と向き合わなきゃいけなくなってきて・・・

    おススメの児童書の1冊。

  •  「二分間の冒険」と似たようなファンタジーを期待して読んだところ、ハードさにびっくりでした。拳銃、ナイフ、血、死体、別の世界で子供たちが殺し合い...。もしあらすじをきちんと読んでいたら小1男児と小3女児(ただし年度末)への読み聞かせには使わなかったかもしれません。しかし結果的には、子供たちも受け止めて楽しめる範囲でした。「今まで読んだ中では出てこなかったような戦いで、怖かったけど面白かった」と口々に言っていました。こうなんじゃないかな、こうすればいいのに、と、それこそ登場人物と一緒に冒険しているようになって頭を使って楽しんでいました。そうして子供たちも楽しみましたが私にとっても文句なしの面白さでした。きっと映画化したら大人も楽しめる、というか大人向けに面白い映画になると思います。謎があって、テンポのいい冒険、アクション、驚愕の事実があって、友情とか愛情とか献身とかみたいなものがあって、メッセージもある。これらが実にうまく配分されていて大成功をあげています。
     メッセージは、必ずしも明確にひとつのメッセージが主張されているわけではなさそうですが、子供の心にうまくひっかかるような形でいろいろと考える材料が提示されていて、きっと小学校で子供たちに感想文を書かせたらそれぞれの子が違うところについて感想文を書いてくると思います。子供たちがテレビゲームの中で何気なく体験している殺し合いがもし本当にあったとしたらどんなことか、そういった普段想像していないことを想像してみること、記憶が人にとってどんなに大切か、役割でしか人を捉えない人間関係の寂しさとその逆の接し方の温かみ、とか。
     これは読んで良かった。お勧めです。

  • 本嫌い&ゲーム大好きの次男があっという間に読み終わり、「ママも読んで!」というので、読んでみた。

    表面的にはゲームの世界がそのまま小説になったものなのだけど、「ゲームの中での死」は「忘れられてしまうこと」を意味しているなど、とても奥が深い。

    3年生の息子は、どこまで理解できたのかな。
    大きくなってまた読み直してくれるといいなあ。

  • 小学生の頃大好きだった岡田淳先生の小説。
    俺は普段作家のことを先生付けで呼ぶことはないけど、岡田淳先生だけは別。ってのも、岡田淳先生は、西宮市の小学校で図工の教員をやっているのだ。岡田淳先生の本を読み漁っていた小学低学年の俺は、母親を利用して実際に岡田淳先生に会いサインをもらうなどしていた(自慢)。

    でまぁ、この『選ばなかった冒険』ですよ。
    ひさしぶりに読んだけど、面白い。

    小学六年生のあかりと学は、ひょんなことから異世界へと入り込んでしまう。そこは、RPGを模したゲームの世界だった。

    小学校の廊下がそのままRPG(おそらくウィザードリィをモチーフにしている)のダンジョンになり、銃を持ってモンスターと戦うという小学生男子にとってはこの上なく興奮させられる設定。銃の扱いや忍び足の特訓など、要所要所のトピックスがリアリティを演出する。また、セガールみたいなプロの傭兵、美人な女戦士などのnpcに加え、学たちを手助けしてくれるモンスター、フクロハリネズミのハリーなど多様なキャラクターが表情豊かに登場する。
    ヴァーチャルな世界を現実として生きざるをえなくなった主人公たちの心情を通して、生の実感というテーマを描く。

    あわよくば、もう少し敵側(闇の王)についても書いてほしかったところ。

  • 小学生の頃に恐いもの見たさと言うか、何だか不気味だと思いつつのめり込んだ本で、読みながらイメージした映像を今でも思い出せるくらい何故だか印象に残ってる話。これを読んだときに、忘れられるってやるせないなぁと初めてしみじみ思ったかもしれない。

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著者プロフィール

1947年兵庫県生まれ。神戸大学教育学部美術科在学中の1966年に「星泥棒」を自費出版。西宮市内で小学校教師をつとめながら1979年に『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』(偕成社)を発表。1981年『放課後の時間割』で「日本児童文学者協会新人賞」を受賞。教壇に立ちながら1年に約1タイトルのペースで作品を発表。数々の賞を受賞する。「こそあどの森」シリーズ(理論社)は国際アンデルセン賞オナーリストとなる。アジア各国では翻訳本も出版されている。岡田淳作品で読書嫌いが治った、本好きになったという人は多い。

「2008年 『人類やりなおし装置』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡田淳の作品

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