夢の守り人 (偕成社ワンダーランド)

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035402305

作品紹介・あらすじ

人の世界とは別の世界で花をつけ実をむすぶその"花"は、人の夢を必要としていた。一方、この世をはかなんでいる者は、花の世界で、永遠に夢を見つづけることを望んだ。いとしい者を花の夢から助けようと、逆に花のために魂を奪われ、人鬼と化すタンダ。タンダを命をかけて助けようとするトロガイとチャグム、そしてバルサ。人を想う心は輪廻のように循環する。

感想・レビュー・書評

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  • 守り人シリーズ第3弾。今回はちょっとイマイチ。花とか夢とかの概念がいまいち飲み込めずムムム???と思いながら読み、やっぱりわからないまま終わってしまったので。私にはファンタジー色が強すぎたようです。

  • 〈花〉のファンタジーランドとして楽しく読了。再読の今回は、強い共感というよりも理解の深まりの紐解きの楽しさだった。

    共感がやや難しい理由は、はやい時点で明確に意識できた。「夢」には、大きく2つのタイプがあって実現への力強い推進になる「夢」と実現不可能で現実からの逃避の妄想のような「夢」があるのではないかと思っていた。「夢の守り人」の「夢」は後者に大きく傾いている。弱い心の逃げ込み、逃避先として描かれている。抗い様のない、そして安らぎや休息の心をとても大事には思うのだけれど、その心に「夢」という言葉を使うことに違和感がある。「夢」は逃避やリラックス、夜の世界のまどろみだけではない、むしろ生きる活力、エネルギーの源であってほしいと。「夢」という素敵な言葉を負に寄った捉え方をして良いのだろうか。この作品で夢を妄想・逃避と変換するならば分かり易かった。が、これでは作品から香る人の心の弱さに思いを寄せる優しさが削がれてしまう。

    実現推進となるつまり前者のタイプの「夢」が、4箇所あった。タンダの「おれの夢のみおれのものなり」とつぶやく、花守りになってしまう時の最後の抗い。シュガが微笑みながら思う「いつ役にたつかわからないものを追い続け、考え続ける」という夢。ユグノの最後の夢「歌いたい」という強烈な思い 。そして、トロガイ師 の夢。タンダ曰く「〈花〉の夢からは帰ってきたけれど、呪術師になっちまったんだからな(夢から帰ってこなかった)」

    このトロガイ師の「夢」でハッとした。妄想の夢から覚め戻り、現実の力に、夢の実現にしていったのだなあと。私の思っていた2つのタイプの夢を行き来したことに気がついたのだ。「行き来する」に思いを至らせれば、ユグノの歌もより広く捉えることができる。励ましの歌、さざ波よりも繊細に大気を揺らす、響きが響きを織る歌、夢のいざないともなる歌。歌風の息吹をのせられる「夢」の様々なありようを軽やかに呼吸のように感じていたら良かったのだ。
    物語では、受粉の時期との結びつきから「夢」という言葉は、強烈な形での人の弱さの現れとなったのであろう。物語に表出しなかった色々な夢の形、歌はそれを励ましたり掻き立てたり、沈めたり、誘ったり、どうかすると追い込んでしまったりしていたのだろう。
    「夢のタイプは大きく2つの意味でわけられるが、その時々の心のありようで実現の活力になるものと逃げや安らぎの温かさとの2つの意味を行ったり来たり、あるいは真ん中でとどまったりする。」と言い換えようと思う。
    「夢の守り人」というタイトルは、「人々の夢を守る人」とまずは感じる、が、一読後は、「現実から逃避し夢に逃げ込んでしまう魂を〈夢〉から救い守る人」と解釈せざるを得なかった、腑に落ちないわだかまりをちょっと抱えながら。事件の解決の足取りをシンプルにみれば、そう感じても無理はない。トロガイ師やタンダの呪術師としての手助けは、やはり人々の迷い逃避からの引き戻しではあろう。
    が、物語を大きく俯瞰すれば、「心を現実に引き寄せて生きる力、夢を実現させようとする力、(欲望や憎しみも含めて)夢を抱き続ける心」を守っている人という言い方で包んで良いように感じられてきた。人は弱さを抱えている、が、共に人々と関わりながら夢を抱いて生きて行くこと、力強く生き得ることができるのだ。そう、人の織りなす普遍的な美しさが綴られた物語であった。

    シリーズ全体の中で、うーんよくわからないと思っていた作品をこのように読み返しができてとても嬉しい。素晴らしい作品は、いく層もの、読み手の数ほどの織物を見せてくれるのかもしれない。

  • タンダが、自分がぎせいになるかもしれないのに、人を助けようとするのが、すごい。やさしくて、お人好しで、明るいタンダは、一直線な感じがして、すごい。
    ぼくは、自分のことを考えちゃうし、先生に止められているような危険なことはできない。タンダみたいに体をのっとられるのがこわい。ただ、家族のためだったら、行きたくないけど、やっぱり行っちゃうかも。でも、タンダは、「行きたくない」気持ちがない。
    今までは、タンダが一番好きだと思っていたし、タンダがそばにいたら心強いけど、自分がタンダの家族だったら心配だなって思うようになった。
    シュガは、かしこいだけじゃなくて、いたずらっ子みたいになっていて、前より好きになった。(小6)

  • 圧巻のシリーズ第三弾。今回はタンダを主軸に、パルサ、そしてチャグムは出るわ、トロガイ師は出演するわの、フルキャストで読み応え十分。

    そしてファンタジーの醍醐味である圧倒的な世界に飲み込まれながら、読者の立ち位置を問うてくるようで。
    消化不良になりながら生きているのが、タンダであり、チャグムであり、パルサも、そしてトロガイ師であり。

    これを若い時に読んだ子は、どう思うのでしょうか?
    中年の僕は、娘に勧められて読んで、なんとも複雑な心境で。きっと生きる過程で読んでいくことで、世界の広がり方が違う一冊、シリーズだと思います。

  •  期待が大きすぎたせいか、前2作に比べてつまらなかった。
     又、この冒険の後、バルサとタンダの2人が結ばれるのかな?って思っていたけど、それがまだまだ先になりそうなのが、残念でした。

  • 割と好きな話です。再読してみると、こんなにつかみどころのない話だったのかと。タンダやチャグムと言った懐かしい面々もたくさん出てきますし、バルサだけだった前作と違って賑やかですが、「夢」の概念や「花」の世界が捉えどころのない世界観を生み出しています。何より、チャグムの見ていた夢が、あの狩穴での暮らしだなんて切なすぎて、もう……!夢の中で再会したタンダの言葉に「親」を感じました。血はつながってなくても擬似家族だなと。かつてはここまでしか出てなくて守り人三部作だと思っていました。そしてこれがベストでした。

  • 守り人シリーズ。1作目の「精霊の守り人」がとても面白かったのでこちらも。2作目を読む前にこの3作目を読んでしまったが、十分楽しめた。
    中盤以降、タンダがどうなってしまうのか気になって、読むスピードが上がった。
    ファンタジーは苦手だと思っていたけど、この作品は好き。
    続きも読みたい。

  • 話の内容が難しかった。 タンダが心配でした。

  • 「〈花〉の夢」
    特別な詩を歌う者と出会い。
    自分が普通でない事に気がついて隠しているのであれば、どんな理由があろうと明かす事なくいるべきだろうに。
    とても簡単に他人に聴かせているようだが、特別な詩に効力がなにもないと思っているのか。

    「〈花守り〉」
    捕らわれてしまった身と心。
    甘い誘惑だけであれば逃げ帰る事もできたかもしれないが、人柄を利用するような誘いをされては無理だろうな。
    嫌な噂であるほど早く解決したいだろうが、簡単でないからこそ必死に策を練っているのに。

    「〈花〉への道」
    偶然出会った者に託す想い。
    全てを乗っ取られないよう自身に呪術を施すのはいいが、意思を持ち移動する姿を見せても大丈夫なのだろうか。
    本当の話をするのは簡単だが、バレないよう脚色し思惑通りに動かすのは中々難しいだろう。

    「〈花の夜〉」
    最後のチャンスを逃さぬ様。
    惑わす者が居ることが分かっていても、相手の弱みに入り込み上手く逃げ隠れするなんて恐ろしい者であったな。
    長年自身の支えとなっていたものが崩れると、ぽっかりと穴が空いたような気分だったろう。

    「夏の日」
    ようやく気づけたこととは。
    幼い頃から振り回され続けた生活をしてきたのだから、全てに納得のいく答えが出たからこそ見つけれたのかも。
    目に見えてわかる報酬が少ないと感じても、心からの感謝があれば十分だと思うのだろうな。

  • 初めて読んだ精霊の守り人シリーズ。どハマりして着々と残りの本も読んでいる。単なるファンタジーものではなく、大人が読んでも面白い。
    子供にも読ませたい。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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