流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)

著者 :
制作 : 二木 真希子 
  • 偕成社
4.09
  • (203)
  • (160)
  • (150)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 1062
レビュー : 147
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035403609

作品紹介・あらすじ

父を王に殺された少女バルサ。親友の娘を助けるためにすべてを捨てたジグロ。ふたりは追手をのがれ、流れあるく。二度ともどらぬ故郷を背に。守り人シリーズ「番外編」にあたる短編集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ちくしょー、また泣いてしまった。「くやしー」って感情は「好きだ!!」って気持ちに「等しい」って学界に発表したいよ。

  • タンダやバルサの幼い頃のお話。守り人シリーズ短編。

    行き倒れて死んだ「おんちゃん」が、山犬に乗り移り村人を襲うという。心無い噂に悲しんだタンダは―――『浮き籾』

    まるで歴史物語を紡ぐような奥深いゲーム「ラフラ」。酒場で働くバルサは、とある名勝負に立ち会うことになり―――『ラフラ』

    ジグロとバルサは商隊の護衛をしながらロタへ向かうが、雇い主と雇われた者の間には溝があって―――『流れ行く者』

    タンダは焚き火をしながら峠で待ち続ける。ただただ、「彼ら」の帰還を―――『寒のふるまい』

    切ない話が多く、厳しい「冬」を思いました。ただ最後の瞬間に、パッと華やぐような気持ちになれる。タンダいいなあ。大好きです。

  • 守り人シリーズの外伝とも言える短編集。
    タンダやバルサの幼いころの日々が綴られている。

    本編を読んでからだいぶ時間が経ってしまっていたけれど、
    1ページも読み進まないうちにふたたび、バルサやタンダ、トロガイ師の暮らすあの世界へ心は戻っていく。
    独自の言葉には「カッル(マント)」というようにカッコ書きで注釈がつけてあり、違和感なくこの世界の暮らしに想いを馳せられる。
    相変わらず、食事に関しての描写は特に秀逸。
    「汁気の多い鳥肉をこんがりと焼いたもの」とか、
    「無醗酵のパンを焼いたもの」ですら、
    特別な言葉なんて使っていないのに、すごくおいしそうで。
    あぁ、空腹のときに読むものではありません!!

    死地を何度も潜り抜けて。
    自分の命は自分で守らなくては、誰も守ってくれない。
    バルサの毅さは、そうして育まれたんだろう。

    タンダの優しさは、生まれついてのもの。
    彼の健気さは、大人になっても変わることなく、私はタンダのそういうところがすごく好きだ。

  • 守り人短編集です。
    浮き籾、ラフラ<賭事師>、流れ行く者、寒のふるまいを収録。
    バルサとタンダの子ども時代のことが書かれています。
    久々に守り人の世界を堪能できました。

    ラフラは雑誌ユリイカで掲載されたものを加筆したそう。
    だいぶ前に読んで記憶が薄れかけていたので、今回改めて読むことができて懐かしかったです。

    バルサが過酷な暮らしをしていることは簡単に想像できたけれど、タンダもなかなか生きにくい子ども時代だったことを感じられたのは大きな収穫でした。

    二人が魚釣りをする場面がとても印象に残っています。

    流れ行く者の結末は壮絶で読みながら震えてしまいました。
    バルサの気持ちはもちろん、ジグロの気持ちも痛いほど伝わってきて涙が出そうになりました。

    『炎路を行く者』の発売も近々のようで読めるのが楽しみです。

  • ●浮き籾ほか
    十三のころのバルサの獣っぷりと、実は年下だったタンダの泣き虫っぷりが微笑ましい

    ●ラフラ
    この話はすごくいい
    私の理解力では一読しても足りなかった
    感想サイト2カ所程読んでから再読して、理解し直した
    (人によってずいぶん解釈違うもんだ)

    守り人シリーズ読んでなくても問題ないので、この話はぜひ。感動というのとは違うが、「解夏」と並べてオススメしてもいい、心理のこまやかさ。

    以下、少し本文を抜き書きとメモ。

    ------------------------------------------------------------
    バルサが、ラフラ(賭博師)の老女アズノに気にいられて、ススット(スゴロクとチェスを組みあわせたようなものと思われる。タイ・ススットという2時間くらいで終わる賭博場向きのと、ロトイ・ススットという、記録をつけて何十年でも、相手と再会したときに続きを始められるものがある。こちらは武人や貴族が好む)

    アズノのお供として、バルサがターカヌ(氏族の偉い人)の屋敷に行く。

    ターカヌ「顔をしっかりと見せよ」
    アズノは恥じらうように小声で笑った。


    ターカヌ「公開とし、金を賭けた勝負にしようではないか」
    アズノの、燃えさかっていた火に、冷水をふりかけられたような、唖然とした表情


    ターカヌ「サロームに勝って、勝利の栄光と賞金を受けとってくれ」

    アズノ「(ターカヌ様は私に)贈り物をくださりたいのさ。五十年の長い楽しみの、褒美にね」

    公開賭け話を持ちかけられたあと、アズノは今世話になっている酒場の主人の部屋に入って話をする。


    ラフラの賭金は賭博場の主人からの預り金
    買っても負けても主人の金になる。

    ラフラは賭博場と、上がりの上納金を得ている連中の持ち物

    公開賭け試合では、ターカヌとのススットで見せた果敢な攻撃とは打ってかわって、守りか、脇からの攻め
    ターカヌの孫であるサロームに領土を与えて、アズノは負けたが、領土を取られるたびに銀貨を得る狡猾な手で、逃げ切った。

    試合に負けたアズノ。
    ターカヌはアズノをちらちらと見たが、試合場を去るアズノはターカヌに視線を向けることはなかった

    ------------------------------------------------------------

    大事と思われる部分が、以上。
    これっくらいしか書いていない。ものすごく簡潔で、行間を読まないといけない。
    私がわからなかったのは、サローム以上の技量があるアズノが、何故わざと負けたのか。

    アズノがターカヌに思いを寄せていたことは間違いない。五十年の長い間、ともにススットをしてきた間柄、ということは、出会った当初はふたりともまだ二、三十代。
    ススットの記録は、長い長い戦いの記録であり、アズノにとっては、ターカヌとのときを過ごした記録、恋文のようなものではなかろうか。
    様々な戦いの分岐が見てとれるとあるから、決して現実では見られない夢を、ススットの盤上に、アズノはぶつけてきたのだと思う。

    氏族の長と、流れ者の賭博師では、本来は口もきけないような間柄。おそらく独り身のアズノは、盤上では対等にターカヌと渡り合うことで、ひとりの人間どうしとして、そのときだけはあれた。もしかしたら、ターカヌとともに過ごす人生を空想した分岐もあったのかも知れない。

    そのターカヌが、自分の孫をススットのゲームにくわえた。
    ここまではいいが、最後の勝負を老い先短い自分とではなく、孫とやってくれと言う。
    そして孫を負かしてくれと。負かして、かわりに賞金を受け取ってくれと。


    ”ターカヌ「公開とし、金を賭けた勝負にしようではないか」
    アズノの、燃えさかっていた火に、冷水をふりかけられたような、唖然とした表情


    ターカヌ「サロームに勝って、勝利の栄光と賞金を受けとってくれ」

    アズノ「(ターカヌ様は私に)贈り物をくださりたいのさ。五十年の長い楽しみの、褒美にね」”

    金がかかっていないからこそ、ラフラのアズノは、賭博師ではなくススットで戦う自分としてターカヌと勝負してこられた。
    それが、突然、自分はしょせんひとりのラフラだと思い知らされるような仕打ちだ。
    お互いがお互いを認めてきたから五十年も戦ってきた筈なのに、ターカヌは、アズノを賭博師に戻した。腕がよく、礼儀もわきまえていて、自分の孫の(つまりはラフラでは夢見ても得られないもの)教師のようなものに出来るもの、としてしか見られていなかったと、アズノは自覚する。

    長い楽しみを与えた、褒美。
    褒美をくだされるのは、対等な相手ではなく臣下だ。


    ターカヌが賭けるのは自分の金だが、アズノが賭けるのは、酒場の主人の金。
    もしラフラが負ければ、酒場の主人の金が失われる。ラフラは役立たないものとして捨てられ、どこの賭場にも出入りできなくなる。老女のラフラがやり直せる時間はない。

    アズノは自分で賭ける金も持てない。
    負けて、自分を預かっているナカズや酒場の主人の面子、金を潰すわけにもいかない。
    そしていかにターカヌが「孫を負かしてくれ」と言っても、それはあたり一帯をおさめる時代の領主のようなもの。
    そんな相手を負かしてしまえば、もしかしたらサロームは気にしないかも知れないが、周囲の臣下らは主人の体面を気にする。睨まれたラフラ、ひいてはそのラフラを預かったり雇っている人々は、圧力を加えられるかも知れない。

    アズノは、勝つわけにはいかない。
    公開の場で、自分とターカヌの間でだけ続けてきた戦い方、自分の望む生き方を、さらすわけにもいかない。それは彼女の矜持だろうから。

    バルサに「逃げ切ること」も大事なことだと教えたラフラは、決別することにしたのだろう。
    もう、ターカヌの前に出ることはない。
    大事な思い出もターカヌによって、本人は好意のつもりであっても、潰された。
    自分がこれからも生きていかなければいけない以上、勝ってはいけない。しかし損害をこうむってもいけない。

    だから、ラフラとして身につけている、もっともラフラらしい「金を稼ぐ」という面を、全面に出した。
    領土という名誉は、氏族に。
    流れ者のラフラは、金を。

    自分で、対等でいられた過去の自分を切り捨てたアズノは、ターカヌに見せる顔はない。
    彼女は、ラフラではなく、対等に向きあう自分でいたかったから。
    すべてを捨てて堂々と戦うことも出来ない自分を悔やみ、けれどラフラとして生きるなりの誇りもあったに違いなく、彼女は、自分の思いを捨てたんだろう。



    感想サイトで読んだところの
    「ターカヌの金を酒場の主人に渡したくなかった」
    「バルサに「逃げきること」の技術を伝えたかった」
    は、私にはしっくりこなかったけれど、同じものでも、読む人によってこうも違うのか。と思ったものでした。
    私には金と恋も大事だが、彼女の矜持の部分なのかと思えた。

  • ジグロ、バルサのサイドストーリー

  • 守り人シリーズ番外編。
    短編集で読みやすく、また一部を除いてはシリーズ本流ほど悲壮感がなく穏やかに読める。

  • 再読。
    バルサが13歳の頃の短編は覚えていました。

  • バルサとタンダの子供時代を描いた短編集。といっても、話に繋がりがあるので、連作集というべきか。これを読むと、一巻目の「精霊の守り人」から読み返したくなる、とても恐ろしい(笑)本です。

  • 11歳のタンダ、13歳のバルサの
    少年少女時代を描く短編集。
    ・浮き籾・・・タンダの眼に映った亡き老人の姿。
    髭のおんちゃんは本当に山犬に乗りうつったのか?
    タンダの村の生活や風習、バルサとの関わりが鮮明。
    ラストでバルサはジグロと旅立つ。
    ・ラフラ・・・バルサとジグロが働くロタの酒場にいたのは、
    年老いた女賭事師のアズノ。「天と地の守り人」に
    数行だけ紹介された彼女が主人公。
    親しい者との勝負が公開の金を賭けた勝負になったとき、
    アズノは何を思い、どう行動したのか。
    ・流れ行く者・・・ジグロの病、ヨゴへ戻るために得た
    隊商の護衛士の仕事。バルサの体験は一生忘れられない
    ものとなるだろう、たぶん。
    ・寒のふるまい・・・そして1年、タンダの待ち人が!

    様々な職業・・・農民、ラフラ(賭事師)、酒場の給仕、
    護衛士等の生活感、息遣いまでが伝わってくる秀作です。

全147件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
1962年、東京都生まれの児童文学作家、SF作家。
1992年『月の森に、カミよ眠れ』で日本児童文学者協会新人賞、2000年『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年『神の守人 来訪編、帰還編』で 第52回小学館児童出版文化賞、2004年『狐笛のかなた』で 第42回野間児童文芸賞受賞他、2015年『鹿の王』で第12回本屋大賞など、多数の受賞歴がある。
2014年には「小さなノーベル賞」とも呼ばれる世界的な賞、国際アンデルセン賞作家賞を受賞している。

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)のその他の作品

上橋菜穂子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)に関連する談話室の質問

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)を本棚に登録しているひと

ツイートする