雨やどりはすべり台の下で (偕成社文庫)

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感想 : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784035508502

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  • スカイハイツマンションにすんでいる雨森さんは、60歳くらいで黒い服を着ていて、他の人と関わろうとしない。
    でも子供たちは雨森さんに関わる不思議な体験をしているんだ。

     引っ越してきたばかりの頃、ぼくはもとの横丁のことばかり考えていたんだ。すると遠くにいた雨森さんが、滑り台を示したんだ。夜にぼくが滑り台にいくとそこには指揮棒があった。目の前はちょうどマンションの窓。ぼくがマンションの窓に向かって指揮棒を振ると…/『スカイハイツ・オーケストラ』
     いけなくなった海水浴のことを考えていたおれは、雨森さんに「きみはボートがこげるかい?」って聞かれたんだ。雨森さんに言われたマンションの空き部屋に行ってみたんだ。その扉を開けるとそこは海だったんだ。/『青みどりのかぎと麦わらぼうし』
     わたしが前に住んでたとこには海があったん。引っ越して来る前に最後に一人で海に行ったんよ。すると黒い服を着たおじさんに「あそこにボートをこげる男の子がいるよ」って言われたんよ。/『白いボートと麦わらぼうし』
     すごい雨の日があったじゃない。わたしがマンションの廊下にいると雨森さんが「公園の池はどうなっているかな」って言ったのよ。だから私長靴を履いて公園へ行ってみたの。すると池にはナマズがいてね、わたしたち友だちになることになったの。/『ナマズの恩がえし』
     その日はぼくひとりで留守番だったんだ。廊下から雨森さんの声がしたと思ったんだけど、そこにいたのは女の子だったんだ。そしてぼくの部屋に友達が入って出られなくなってるなんていうんだ。/『水玉もようの…』
     ええっとね、ぼくチョークを持って公園に行ったんだ。そうしたらベンチに雨森さんがいて、鳩たちにパンくずをまいてたの。雨森さんはぼくが落としたチョークを持って鳩たちに言ったんだ。「このチョークはもっともっとひろいところで、まあっすぐな線をひきたいって思っているんだ」そうしたら、鳩がチョークを加えて飛び立っていってね…/『まあっすぐな線』
     私のお母さんはデザイナーなんだけど、夜は遅いしお酒飲んでるし、デザイナーって変わった人たちよね。ある夜私はお母さんと喧嘩して部屋に閉じこもったの。どうしても気持ちが晴れなくてベランダに出たら私の影が公園に写っていたわ。そして同じようにベランダに居る人の影が公園に写っていたのよ。/『真夜中のコンニチワ』
     わたし、雨森さんにもらった紙飛行機を作ったの。それはそれはとても高く飛んだのよ。そしてわたし、その黄色い紙飛行機に乗って…/『黄色の紙ひこうき』
     みんなの話を聞いていると、雨森さんはみんなに不思議なことをしているのに、そので会うと、自分じゃないって顔してるよね。わたしは雨森さんが「おじさんはね、お礼を言われたり、褒めたり褒められたりするのが苦手なんだ」って言うのを聞いたことがあるの。/『迷子のお礼のチョコレート』
     不思議だなあ。今日こうしてみんなで滑り台のトンネルで雨宿りしなければ、みんなが雨森さんが出てくる不思議な夢を見ていたなんてお互いに知らないままだったね。そんな雨森さんはむかしは…/『雨森さんのこと』

     おやおや、人間の子供たちが面白いはなしをしていたねえ。あっしらヤモリだってその飛行機とやらに乗ってみたいもんだねえ/おまけ『下の景色』

    そしてその夜、マンションから引っ越しをする雨森さんは、自分を送り出すマンションの子供たちの心遣いを感じることになった。
    人と関わらない、お礼や褒め言葉が苦手な雨森さんは、ついに「ありがとう」の言葉を口にするのだった。

    ===

    一つ一つのお話が本当に素敵なファンタジー。
    子供たちに不思議な経験、それは夢だったのかもしれない、でも子供たちの寂しい気持ちやつまらない気持ちを読み取って、素敵な夢だったと思える経験をさせてくれるなぞのおじさん。なにより謎なのはその雨森さん自身。
    子供たちはたまたま同じマンションではあったけれど、いままで知らなかった雨森さんのお話を通して、お互いのこともよく知るようになっていきます。そして子供たちの変化は、最大の謎である雨森さんの心も変えます。

    一つ一つのお話で、子供たちの生活や、仲良くなっていく様子が見えてとても素敵なお話です。

  • ぶっきらぼうで、不愛想で、人間嫌いな雨森さんの本質を、子供たちこそが見抜いていた。
    褒められるのも感謝されるのも嫌いな雨森さんがトランクを落としていることにも気づかず「ありがとう!」と叫ぶラストには感動。団地に浮かび上がる窓の光のメッセージ。

    ファンタジーの部分には入りきれなかった寂しいオトナな自分だけれど、幼いころ住んでいた団地の、ノスタルジックな光景が瞼に浮かんで懐かしい気持ちで読み進めた。

  • 子どもの頃から大好きな、岡田淳さんを久々に。
    今でもやっぱり胸に染み込む。
    子どもは楽しい、けれどしばしば苦しい。
    岡田さんはそれをよくわかっていて、明るい物語の中にもいたわりや呼びかけを込めてくれている。
    子どもの頃の私は、それを感じ取っていたのだと思う。
    この作品のラストは、大人の方が泣く気もするけどね…!泣いた!

  • 小2の息子は「(おすすめの)星無限大。いちばん良かった。友だちと別れるときに歌と、電気と、字でありがとうを伝えたのが良かった。」と言ってました。「放課後の時間割」にも似て、少し不思議で心暖まる短編をつないでいくスタイルです。僕は海の話が好きです。

  • 構成が素晴らしい。子どもたちが雨宿り中に、同じアパートに住むおじさんについてぽつぽつと話し出すというストーリーなのだが、異なる子どもたちの語り口が重なりあうことで、おじさんの人物像が少しずつ浮き彫りになっていく。

    ファンタジー要素がうまい具合に現実と溶け合っていて、読者が「もしかしたら、ありえるかも」と思えるような作りになっている。
    身近なファンタジーを描いた作品の中で、これほど良い作品はないのではないだろうか。

  • 雨宿りに入り込んだ滑り台の下で、子どもたちが語るちょっと不思議な雨森さんのお話。
    子どもたちの描き方が巧いです。ごく普通の子たちって書きにくいと思うんです。いい子いい子にするなり、変に斜に構えたりするのは判り易い書き方なんでしょうが、ちょっと寂しい気持ちやちょっとのイタズラ心などの微妙な心の揺れを何気なく描かれ、それがちょっとした不思議な出来事で消化されていく様がよかったです。雨森さんの人嫌いな雰囲気が却って、子どもたちの心の中にズカズカ入っていかない距離の取り方に見えて、素敵なんですね。まあ、ちょっと無愛想ですが。
    また、異年齢の子らが語り合うことによって相手の今まで知らなかった顔を知るようになるのも面白いです。ちょっとしたイロイロが詰まった素敵な本でした。

  • 評判がよかったので娘に買い与え、娘におすすめされたので私も読みました。おもしろいです。大人には物足りないかもしれないし、オチも児童文学らしいものですが、とにかく文章が綺麗。きちんとこどもにわかる程度の、けれど文学というものの導入にとても良い美しい文章だと思いました。比喩も想像させる情景も。とある人物に関するそれぞれの話が最後には集束するような短編集なんですが、ひとつひとつのお話も、浮かびあがってくるキャラクターや関係性のゆるやかな変化も、読後感も鮮やかですごく良い。子供に読ませてあげられてよかったな~。早ければ7、8歳とかでもひとりで読めるかな?高学年くらいの子にも十分オススメできます。

  • 雨森さんはどこに行くのかな。これからの雨森さんに幸あれ。

  • 夏休み、滑り台の下で雨宿りを始めた10人の子どもたち。現実とも空想ともとれるお互いの意見を重ねる内に、10人はある結論に至ります。「誰にもむかしとこれからがある」、あとがきの言葉がまた印象的でした。

  • その場にいない「雨森さん」の話題を一人一人がつなぐ事により、謎だった老人の姿がありありと浮かんでくるのが、楽しかった。年代の違うそれぞれの子どもたちが個性豊かに描かれていて、今の子どもたちにも読んでほしい本だと思った。

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著者プロフィール

岡田淳:1947年、兵庫県生まれ。38年間小学校の図工教師を務め、その間から児童文学作家として、また、絵本、マンガ、翻訳などさまざまな分野でも活躍。『放課後の時間割』で日本児童文学者協会新人賞、『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞、『願いのかなうまがり角』(いずれも偕成社)で同賞フジテレビ賞、『扉のむこうの物語』で赤い鳥文学賞、「こそあどの森」シリーズ(ともに理論社)で野間児童文芸賞など、受賞作多数。ほかの作品に『図書館からの冒険』(偕成社)、マンガ『プロフェッサーPの研究室』(17出版)、絵本『ヤマダさんの庭』(BL出版)、エッセイ『図工準備室の窓から』(偕成社)など。

「2021年 『チョコレートのおみやげ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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