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本 ・本 (238ページ) / ISBN・EAN: 9784036311606
感想・レビュー・書評
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ルーマー・ゴッデンの三作目。
「台所のマリア様」「クリスマス人形のねがい」と続いて、ストーリーの巧みさに酔いしれた。
お話の舞台はスコットランドの田舎町。
そして主人公は8歳のセリーナという少女。
のろまでぶきっちょで何をやってもヘマばかりでちょっとした問題児扱い。
ゴッデンの作品に共通する、そんな子の成長物語だ。
と言っても、周りの大人もセリーナのおかげで共に成長するのだけどね。
タイトルに「魔法」とあっても、魔法使いも魔女も登場しない。
ひとりの少女のけなげな努力によって、魔法のように現実が動き出すお話なので、タイトルで期待した方はガッカリしないでね。
ただ、本場のハロウィンとはこういうものかと、とても参考になる。
今はハロウィンと言えば魔よけ用のカボチャのランタンがトレードマークのようになっているが、元々は「かぶ」だったと言う。
日本人が思い浮かべる白くて小さなかぶではなく、やや大きめで黒っぽい。
ヨーロッパからアメリカに渡った人たちが、あちらではかぶが不作だったため、山のように収穫されたかぼちゃを代替品にしたのが始まりらしい。
その大事な「かぶ」が栽培されている畑にすぐ入り込んでしまう困ったポニーが、セリーナの相棒。「ハギス」と名付けられたこのポニーは、見た目が冴えなくて躾もままならず、しかも村の嫌われ者であるマックじいさんの畑が大のお気に入り。
ところがこのハギスが、セリーナとマックじいさんの仲をとりもつ重要な役目を果たす。
更に、面目躍如の大活躍をする場面もやって来る。
あともうひとり、セリーナよりもっと過酷な状況で生きている、はみ出しっ子のティム少年。
「そんな、まさか」の展開に眼を見張るうち、終盤の大団円へと導かれるゴッデンの筆致はもうさすがで、たぶん皆さんもあっという間に物語の世界に惹きこまれてしまうだろう。
古代ケルト民族の、死者の霊を迎えるお祭りだったというハロウィン。
私がハロウィンというものを認知したのは、米国で起きた日本人留学生の射殺事件だ。
「フリーズ(動くな)」という言葉を無視して近づいてくる相手への恐怖心から発砲したという何とも痛ましい事件を、今もご記憶の方は多いことと思う。
国が違えばこんなところまで違うのかと、強い衝撃を受けたものだ。
「フリーズ」と「ハロウィン」は、あの事件以来私の胸に棲みついた。
元々は、こんなにも心和ませる社会の慣習なのだと、そんな発見も含めて温かい読後感をしるしておきたい。
「みっともなくてぶかっこうで、いつもいうことをきかないって、それだけのことでだめなんて。ハギスがわるいんじゃないもの。」というセリーナの言葉に、作者の小さい者・弱い者への優しい眼差しがあふれている。もう、それがゴッデンの全てだ。
ハロウィンまでに読み終えて、とてもほっとしてる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
85点。超有名作家ゴッデン(ほとんど外れなし)の良作なのに、現在品切。
イラストも素敵で、ハロウィーンの時期にも展示できるかなり使える本なのに!
しかも、内容はおじいさんと子どものハートウォーミングもの。
ゴッデンだから、人物描写も確かでお涙頂戴になっていない。
バレエシリーズほどはぐいぐい読ませないが、いい作品。
残念無念。-
「良作なのに、現在品切」
地味な作品は売れないのかな?
どーでもイイけど、最近ではルーマーじゃなく、ルーマと伸ばさないのが流行りなのかな、、...「良作なのに、現在品切」
地味な作品は売れないのかな?
どーでもイイけど、最近ではルーマーじゃなく、ルーマと伸ばさないのが流行りなのかな、、、2013/01/10
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日本でもハロウィンが浸透しましたが、どうにも私は日本のハロウィン好きになれず…。
でも、この作品のおかげでハロウィン自体の魅力に触れられました!!
日本のハロウィンも、子どもと人を大切にしたものになりますように。 -
10月31日。ハロウィーンですね。
日本でもここ数年、ずいぶんと盛んになってきました。
元々はケルトのお祭りで、新年(11月1日)の前夜にやってくる死者の霊を迎える行事だそうです。仮装でちょっと不気味なものが多いのは、そうした由来から来るのでしょう。
ハロウィーンでお決まりのものといえば、ジャック・オー・ランタン(Jack-o'-Lantern)。かぼちゃを少し怖い顔にくり抜いて、ろうそくなどの火を灯しますね。元々、アイルランドやスコットランドでは蕪を使っていたのだそうです。アメリカに移民として入ってきたケルト系の人たちが、同様のお祭りをしようとしたところ、蕪よりもかぼちゃの方が手に入りやすかったのでこちらが多く使われるようになりました。日本でかぼちゃのイメージが強いのも、アメリカ経由で入ってきたからでしょう。ジャック・オー・ランタンの伝承はいろいろあるようですが、要は、天国へも地獄へも行けず、「境界」の世界を彷徨い続けている魂なのだそうです。ちょっと怖いですね。
さて、前置きが長くなりましたが、ジャック・オー・ランタンが元々はかぼちゃじゃなくて蕪だったというのを私は今年初めて知りました。そんな話をしていたら、教えていただいたのがこの1冊です。
スコットランドの小さな村のハロウィーンを舞台にしたお話です。
セリーナは8歳の女の子。二人姉妹の妹です。
何でもよくできてすらりとした容姿の姉マフェットに比べ、ずんぐりして思い込みの強いセリーナは、失敗も多く、家族にも叱られたり、からかわれたりすることばかりです。
ふとした幸運からポニーを飼えることになった2人。マフェットが選んだのはお利口できれいなポニー。でもセリーナは、見かけも冴えないうえに聞き分けがないポニー、ハギスを選んでしまいます。
あるとき、ハギスはどんどん自分の行きたい方に行ってしまい、セリーナは村で嫌われ者のマックじいさんの蕪畑に踏み入ってしまいます。怖いマックじいさんが出てきてしまいました。さあ、どうなってしまうのでしょう?
セリーナは言うなれば「困ったちゃん」。みんながセリーナは訳が分からないと思っています。でもね、セリーナにはちゃんとそうする理由があるのです。うまく説明できないこともあるけれど、きちんと自分の頭で考え、正しいと思うことは曲げません。それが時には幼い理屈であっても、他の人には理解できないことであっても、一生懸命考えて行動します。場合によっては、大人達の方の眼が曇っていたのだとわかることもあるのです。
等身大のセリーナに共感を覚える子ども達も多いことでしょう。
そのほかの登場人物たちもとてもリアルです。マックじいさんは「アルプスの少女ハイジ」に出てくるアルムおんじを思いださせる偏屈さですが、じいさんが近所の人とまったく交流もしない人になってしまったのはなぜだったのか、徐々にわかっていきます。
セリーナの友だちであるティムはいつも汚い恰好をしてやせ細っています。勉強もできないのでいじめられているのですが、ティムの家庭環境は問題が多いものでした。
セリーナやティムと同じ学校に通ういじめっ子達。その手口は時に荒っぽすぎて冷や冷やしますが、この年代の子ども達は、確かにちょっと盛り上がりすぎるとこのくらいのことをしてしまいそうです。
現実的な問題も絡めた物語を楽しくしているのは、ハロウィーンの風習のあれこれ。
りんご飴のようなタフィーアップル、砂糖菓子のタブレット、ポテトパイに似たシャンパーズといった、ハロウィーンにしか食べられない食べ物があります。子ども達は、仮装し、空のバスケットを手に村の家を回って、歌か詩かなぞなぞを披露します。お返しにお菓子やナッツをもらいます。
もちろん、蕪のランタンも門に飾りますよ。
物語の中では、ハロウィーンで「よい魔女」に扮したセリーナの行動が、嫌われ者だったマックじいさんやかわいそうなティム、そして村全体に、奇跡のようなよい結果をもたらします。
セリーナはその夜、「魔法」を使えたのかもしれませんね。 -
ブログでハロウィーン本を1冊くらい…と考えたときに思い出した本。
でも、再読してみたらちょっとむむむ、なところがあってお蔵入りに★
主人公のやさしさがあまり生かされていなかったり
理不尽な目にあわされているのに“当たり前”とか“よくあること”みたいに放置されるシーンが目について
ゴッデンなのになぁ~と、ちょっとがっかり。
あ、でも、出版されたのが1997年だったかな?
ハロウィンが認知されていない時代にこれを翻訳出版したのは先見の明だと思います。 -
心温まるおはなしです。
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心温まるお話です。
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ハロウィーンにおこった魔法としか思えないすてきな出来事。それは、セリーナが愛馬ハギスと一緒にマックじいさんの農場に迷いこんでしまったことからはじまりました。村で評判のがんこ者マックじいさんとセリーナとのあいだにうまれた目に見えない強いきずなの物語。心の奥まであたたかくなるお話です。
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小学生のときに読んでからずっと大好きな本です。
原書で読んでみたい。 -
がんこなおじいちゃん+おてんばな女の子+落ちぼれた子馬が送る、心温まるストーリー。
著者プロフィール
渡辺南都子の作品





