二分間の冒険 (偕成社の創作)

著者 :
  • 偕成社
4.13
  • (98)
  • (67)
  • (58)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 773
感想 : 97
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036352500

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読みたかった本。ファンタジーで数多くある異世界転移ものだけど、黒猫の登場や男の子の名前をさん付けで呼ぶこと、とげぬきがキーアイテムなど細かい所が好みだった。また書かれた当時よりあちらの世界が現実味を帯びてるのも興味深い。

  • 面白い。
    この本を一気読みできた時間は本当に一瞬だった。
    心地よい陶酔感を味わった。本の醍醐味。

    言葉に無駄がなく、展開は予想を越えてくる。

    時間がテーマの作品で、いきなりけっこう怖い部分が来る。
    掛け算知ってる?のところ、なんだかゾッとしてしまった。
    少ないヒントから冷静に切り崩して、竜との戦いと、ダレカの謎に挑んでいく。
    主人公、悟は賢い。

    岡田淳さんの本は初めて読んだけど、すごく面白かった。他の作品も読んでみたい。

  • そんなラストってあり?!
    な衝撃を受けた一冊。
    あの頃やたらと冒険に出たかったのは何故なんだろう。

  • 再再読くらい。
    初めて読んだのは、小学校高学年の時。
    親に連れて行ってもらった図書館で借りた時の風景をぼんやりと覚えている。
    表紙の恐竜が不気味で、当時文字数も多く分厚いと思ったけれど、意外とすんなりと読めた。
    薄暗い少しおどろおどろしい不穏な世界の中で物語が進んでゆき、少し怖いと感じていたように思う。
    四年生頃だろうか。

    再読は割と最近。数年前?
    懐かしさと、やっぱり岡田淳さん面白いよなーと思いつつ読んだ、と思うけれどあまり覚えていない。
    そう、詳細をあまり覚えていなかったため今回再再読したわけだが、記憶が曖昧だった故に、黒猫ダレカが言った『いちばん確かなもの』が何か全く分からず、図らずもネタバレなしで最後まで物語を楽しめてしまった。
    そうか、竜が確かなものなのか、な?と思いながら、そうか、かおりかもしれないな?なんて思いながら、最終的には、あ、そうか、それもそうだよな、と提示された答えに納得して終わった。とても単純な読者である。
    単純ではあるが、結局『いちばん確かなもの』はソレでしかありえないよな、と思う。まぁ、ダレカがソレになっている、という点に少々疑問は残るが…。

    岡田さんの設定する世界のルールは少し独特で、今までにもありそうな設定なのに、それでいて全く違うものになっている。児童書だから優しい世界かと思えば、そうでもなくて時々ひどく残酷だったりするところも、あるいは魅力かもしれない。
    どの話も、主人公たちが巻き込まれた不確定な世界の中で、その世界のルールやしきたりを謎解いて行ったり、自分たちなりのルールや考え方を確立していくところが面白い。
    こちらはそれを読みながら、そうか、そうかもしれないなと納得したり、いやでもよくわからないな、と思ったりする。そして自分がこの世界に巻き込まれたら?と想像することは、それこそがファンタジー世界を楽しむ読書の在り方の一つのような気がする。

    今回読んで思ったのは、岡田さんの話の多くは、「仲間との協力が強い」ということを嫌みなくさらりと盛り込んでいるということだ。
    夢の世界でいばらの蔓が伸びまくる話(タイトル…)も、『びりっかすの神さま』も『ムンジャクンジュ』も、そういうことが話の中に入ってくる。
    やはり、小学校の先生をされていたからかな?
    シンプルで、とても大切なことだと思う。

    でも別世界トリップ小説としては、個人的には『光の石の伝説』の方が面白かったかな。

    自分の価値観を自分でしっかり持つということ、常に考えるということ、仲間と協力するということ、そんなことを考えさせられる読書だった。

  • たった二分間で冒険?信じられないかもしれません。でもこれは、六年生の悟に本当におこったこと。体育館をぬけだして、ふしぎな黒ネコに出会った時から、悟の、長い長い二分間の大冒険が始まります。昭和六十年度うつのみやこども賞受賞。小学上級から。(Amazon紹介より)

    何かの映画で「誰しも自分のことが一番わからないんだ」という台詞を耳にし、それが印象に残っています。最近も、自分自身が精神的に追い詰められていることに気づけていませんでした。一番近いけど、一番見えない存在、それが自分自身だと思います。この物語は、そんな自分自身を確かな存在として自覚する物語です。見えなくても、わからなくても、結局のところ自分が生きていく上で中心なのは自分自身です。自分自身が何者か、自分自身は何をしたくて、何をしたくないのか。それを考え自覚することが生きる上で大切なのだと思いました。

  • 実はとっても文学的なお話しでした。
    思いのほかLoveもあり…

    トゲぬきを拾った悟が、保健室に届けようとすると、先生から2分以内に戻ってこいよ、と言われる。
    その2分間のできごと…

    黒猫から、見えないトゲを抜いてくれと言われ
    知らない森の中へいざなわれる。
    そこは、子どもだけのおかしな世界。
    その世界を支配する竜を退治することになる。

    ここでの時間はたっぷりあるが、もとの世界に戻るには、"一番確かなもの"を探さなくてはならないのだった。

    岡田淳さんの作品って、いつも現実とファンタジーの間がとっても近いというか、ほんの少し足を踏み外しただけのような感覚があります。
    なんというか、結果よりも子どもたちのかかわり合いの方に視点があるので文学的なんですよね。

  • 6年生の悟は、体育館の会場準備の作業をサボりたくて、落ちていたとげぬきを保健室に届けに行くが、その途中出会った黒猫の「見えないとげ」を抜いてやったために、別の世界へ送られてしまう。

    時計で計れる時間と感じる時間とは違う。実際に経った時間は2分でも、その間に何年分の経験を収め込むことができる話。

    正直言って岡田淳は苦手です。表面的にはおもしろおかしいけれど、メッセージがよくわからないから。
    それでも楽しめたらいいのかも知れませんが、よっぽど楽しめないとなんか損した気がしてしまうのです。

  • ★4.0
    「ふたつある時間の、伸びたり縮んだりするほう」
    時間は伸び縮みするらしい。『いちばんたしかなものは?』不思議な問いの答えを探して、少年は冒険する。

    遥か昔子どもの頃読んだ本で、再読したかった本。
    児童書なので2時間もあれば読めてしまう。
    ヒーローズジャーニー理論がぴったりと当てはまる、優秀な児童書だった。要約してしまえば、異世界へ行って剣を手に入れて竜を倒し元の世界に戻る、なのだがそんな単純な話では終わらない。
    "謎かけ"が重要なポイントなのだが、なんだかいちいちおしゃれにみえる。
    「見えているのにけっしてとどかず、生まれてから死ぬ前の日まであるもの。それは何だ。」などなど。
    まさかのデカルトを感じる瞬間もあったりする、大人も楽しめる本だった。

  • 小学生の男の子が別の世界で「たしかなもの」を探す旅。自分、仲間、時間…。結局自分でしかないけど周りに仲間がいてこそ自分が形作られて。思っていたよりもすごく読みやすくてすぐ引き込まれて一気読み。おもしろい。いやあ良質。こういう物語を手渡したい。

  • 初版の1985年にはすでに大人になっていたので、今まで出会うことなく過ぎてきた本。でも本屋の棚で強烈に心惹かれて購入。
    今の私にとって必要な本だったと思う。
    二転三転する展開や、竜、剣、戦い、謎の老人など、ファンタジーの要素が満載で、非常に勉強になる。
    それだけでなく、いつの時代にも通用する、「協力し合う心」とか「自尊心」「自分を大切にする心」を、押し付けがましくない形で読ませてくれる。
    竜の館までの旅や、戦いの様子などは、胸がワクワクするような冒険で、現実の世界へ悟が戻ってきたときには、読んでいる私まで時間を超えたような気がして、めまいがした。
    時計の針が教えてくれる時間だけが時間だけではない。たった二分間でも、遠く深く旅することができるのだ。簡単な答えに満足せず、逃げ出さず、粘り強く思索の森へ入り込むことが成長の一歩でもある。
    竜の出すなぞは、スフィンクスの謎のようだ。

全97件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年兵庫県生まれ。神戸大学教育学部美術科在学中の1966年に「星泥棒」を自費出版。西宮市内で小学校教師をつとめながら1979年に『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』(偕成社)を発表。1981年『放課後の時間割』で「日本児童文学者協会新人賞」を受賞。教壇に立ちながら1年に約1タイトルのペースで作品を発表。数々の賞を受賞する。「こそあどの森」シリーズ(理論社)は国際アンデルセン賞オナーリストとなる。アジア各国では翻訳本も出版されている。岡田淳作品で読書嫌いが治った、本好きになったという人は多い。

「2008年 『人類やりなおし装置』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡田淳の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×