地図を広げて

著者 :
  • 偕成社
3.21
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036431809

作品紹介・あらすじ

中学入学前の春、4年前に両親が別れて、父親と2人暮らしの鈴のもとに、母親が倒れたという知らせがとどく。母はそのまま亡くなってしまい、母親のもとにいた弟の圭が、鈴たちといっしょに暮らすことになった。
たがいに離れていた時間のこと、それぞれがもつ母親との思い出。さまざまな思いをかかえて揺れ動く子どもたちの感情をこまやかにとらえ、たがいを思いやりながら、手探りでつくる新しい家族の日々をていねいに描いた感動作。

感想・レビュー・書評

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  • 離婚、死別、兄弟との久々の同居。
    子ども時代にこれだけの環境の変化があったら、順応するのが大変だと思うのだけど、家族それぞれが互いの様子を気遣いながら、少しずつ慣れていく。
    物語全体が静かに最後まで進んでいく感じだった。

  • 離婚した父と暮らす中一の鈴、母の突然死で四年ぶりに小三の圭が家族に加わる。
    揺れるきもちをことさら外に表すことなく、日々を生きる姉弟の繊細な感情がひたひたと伝わる。
    大人は大人の人生を生き、大切に子どもを思うきもちが伝わったり伝わらなかったり、あるいは子どもの重荷になってしまったり。父の友人の巻子さんは言う。「子どもって、なにかと苦労だよ。大人になるまでの荒波を一人で超えるんだもんね。波の大小はあるにしても。子ども時代をよく生きのびたなって、この歳になって思うこともあるの。」

    大きな事件がまったく起きず、何かが解決することもなく、ただ内面の暗い荒波を、それが静まり月の光が差しこむ様子を描くものすごい小説だった。

  • 「おやこ」や「きょうだい」といった枠組みは、一緒に過ごすための理由にはなっても、関係の深さまでは保証してくれません。きょうだい間の空白を埋める日常の些細なやり取りに、幸せの形を見た気がしました。

  • 両親の離婚で鈴は父親と、弟の圭は母親と暮らしていた。鈴が中学校に入学した年、母親が亡くなり、小学2年になった圭が又一緒に暮らすことになった。
    新しい生活におとなしく過ごす圭。自身の過去の環境の変化の時の気持ちを思い出しつつ圭を思いやる鈴。
    一度離ればなれになったとはいえ、家族としての思い出や気持ちを大切に、新しい家族を築き始める。

    静かながら子どもから思春期に入る微妙な時期の心の変化をひっそりと、そして堅実に描く。

  • 母親と弟が家を出て四年、母親が亡くなったため、弟の圭が鈴と父親のもとに来た。
    母親への感情を閉じ込めてきた鈴。圭のよそよそしさを気にしつつ弟を見守り続け、心の中では母親の影を追っていた。

  • 岩瀬さん、好きなんだけど、子どもの心を描くのが上手すぎて本によっては辛すぎて苦しくなることがあり、これもそうだったらどうしようと読みながら心配していたのだが、終わりはちょっとホッとできて良かった。
    両親が離婚して、父と娘、母と息子(弟)で離れて暮らすが、母は若くして亡くなってしまい、弟は父と姉のところで暮らすことになる。母を亡くした上に友達も知り合いもいない土地で、4年ぶり(小学三年生にとっては人生の半分近く)に会った父と姉と暮らす少年が、ぎこちなく遠慮して敬語で話し、仕事のようにゲームしたりしてる姿が辛い。辛すぎる。
    しかし姉だってまだ中一だ。母に会いたいと思いながら、何となく会えずにいるうち、母が亡くなる。思春期の女の子にとっては良くも悪くも大きな影響のある母が遠くにいったままいきなり消える、この喪失感。なのに弟を思いやって精一杯「家族」になれるようがんばる。苦しい。
    何か困ったことや心配事があるとき、ベランダで祈るという行為がリアルで、こういうところは岩瀬さんにしか書けない。「ベランダでは、お母さんや圭のことはお祈りしなかった。それはまたべつのことだと思っていたから。二人が元気でいますように、というお祈りができるほど、心に余裕はできていなかった。二人のことは考えないようにしていた。(p77)」
    「自分がほんとうに考えなきゃいけないことは、自分の外側と内側のあいだの溝にぜんぶこぼれ落ちてしまっているような気がした。みんなとげらげら笑っていると、内側がしぼんでいくような気がした。そして、そんなことを考えるわたしって変だよ、と思うと、溝はもっと広がる気がした。(p87)」
    物語が進むにつれ、お母さんが人間としてどのような人だったのかがわかってきて、それを弟と共有できたとき初めて弟と家族になれた。良かった。巻子さんという女性がさばさばした裏のない人で、お父さんの恋人ではないという点も良かった。

  • 一度別れた家族が再び家族になっていく話。あんまり入り込めず。

  • 、、、、家族かぁ

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    中学入学前の春、4年前に両親が別れて、父親と2人暮らしの鈴のもとに、母親が倒れたという知らせがとどく。母はそのまま亡くなってしまい、母親のもとにいた弟の圭が、鈴たちといっしょに暮らすことになった。
    たがいに離れていた時間のこと、それぞれがもつ母親との思い出。さまざまな思いをかかえて揺れ動く子どもたちの感情をこまやかにとらえ、たがいを思いやりながら、手探りでつくる新しい家族の日々をていねいに描いた感動作。
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784036431809

  • お父さんと二人で暮らす中学1年の鈴

    4年ぶりに弟の圭がいっしょに暮らすことになる
    圭を連れて出て行った母が急死したのだった

    「これからは三人で力をあわせて暮らそうな」
    という父のことばに、“自分”の居場所をさがし、懸命に“家族”を取り戻そうとする3人だが...

    《わたしたち三人は、ばらばらなままなんだ、とわたしは思った。ばらばらじゃいけない、と思っているのに、おたがいがどれくらいばらばらなのかも、わからないでいるのだ。》

    ブラームス、自転車、猫、白雪姫、川、そして、地図
    ちりばめられたモチーフがゆっくりと家族の思いをつなげていく

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著者プロフィール

1950年、山口県生まれ。
『朝はだんだん見えてくる』で日本児童文学者協会新人賞、『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』で小学館文学賞と産経児童出版文化賞、『ステゴザウルス』と『迷い鳥とぶ』の2作で路傍の石文学賞、『そのぬくもりはきえない』で日本児童文学者協会賞、『あたらしい子がきて』で野間児童文芸賞、『きみは知らないほうがいい』で産経児童出版文化賞大賞、『もうひとつの曲がり角』で坪田譲治文学賞を受賞。そのほかの作品に、『まつりちゃん』『ピース・ヴィレッジ』『地図を広げて』『わたしのあのこあのこのわたし』『ひみつの犬』などがある。

「2023年 『真昼のユウレイたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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