完司さんの戦争

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 76
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036451104

作品紹介・あらすじ

1922年に新潟で生まれた完司少年は、外国へのあこがれから満州で働くことを選びます。しかし、楽しかった満州でのくらしは、召集令状によって終わりをつげました。釜山から出発し、戦地であるグアムへ行くことになったのです。到着直後の攻撃で左足を失ったあと、米軍の上陸により、完司さんはジャングルの中でひとり生きていかなければなりませんでした。
食料をなんとかして手に入れ、切りっぱなしの足を川や海で洗い、這いずるようにして移動する生活がはじまりました。持ち前のポジティブさと聡明さを生かし、ジャングルの中で生き抜いていく姿は、まるで冒険記のようです。

そんなサバイバル生活やその後の捕虜生活のことを、楽しかったこともあったと、ひょうひょうと語る完司さん。でも、戦争に行って帰ってくるまでの時間は自分にとって「この世にない時代」だったといい、最後にふと、こうもらします。
「戦争は、あの若い、いちばんいい時期を奪ってしまったのですよ。今ほしいものがあるとしたら、若さです。あの体力と機敏さがあったら、あれもこれもするのに、と思いますよ。」
好むと好まざるとにかかわらず、不条理にみながまきこまれる。そんな戦争の時代を生き抜いた、ひとりの青年のお話です。

感想・レビュー・書評

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  • とてもよかった!
    図書館で借りたのだが、本を買おうか悩んでいる。
    もう一度読みたい!

    漫画を時折はさんでおり、その画がまたよい。かわいい感じ。
    戦争に行った人はあまたいるが、それぞれその人なりの考え方、心持ち、色々だなと思った。

    完司さんは飄々としてるというか、片足無くなっても深刻にならず、みんなに助けられたり、楽しい時期もあったり…

    子供の本のところにあったが、大人も十分楽しめる。

    ああ、もう一度読みたい。

  • #完司さんの戦争
    #越智典子
    #偕成社
    #読了
    著者が聞いた完司さんの戦争体験。淡々と話す口調とポップなイラストで受ける印象はマイルドになるが、壮絶な日々をグアム島のジャングルで生き抜いた完司さん。有名な横井庄一さんもグアム島。こんな風に一人で生き、また死んでいった人はたくさんいたのだ。

  • これ、すごく変わってるけど、めちゃめちゃいい本です。
    戦争もんです。
    戦火の島で片足失くして九死に一生を得て生還した一人の兵士からの聞き書きなんですが、なんと言ったらいいかわかりません。
    いやあ、この人凄い人だわ。
    インタビューした人が惚れ込んだ理由、わかるわ。

    いま、戦争ものは、なんというか第三期に入ったといえるのかもしれません。
    あっけらかんと明るくて、でもずばっと容赦なく本当のこと、に切り込んでくるんです。
    学校は、買い!!!
    でしょう。
    てか、司書は必読でしょう。

    2020/11/09 更新

  • 船乗りになって世界中を見て回りたかった少年は、大人になり満州で働いていました。

    鉄道会社で働くものの面白くなくなって友人と飛び出し、拾ってくれる人があって通信を学び、一度故郷に帰って農学校を卒業した後は、満州の大平原を越えて穀物の検査官になっていました。

    料理店の店主と仲良くなってはつまみ食いをして、豊かな川で魚を釣る夢のような日々。

    1枚の召集令状が届き、完司さんの「記憶から抜け落ちた満州」「この世にない時代」が始まりました。

    渡辺完司さんに聴いたお話をもとに、越智典子さんが後日調べたことを補足して構成された本です。
    イラストの完治さんが、本を読んでイメージする完治さんと重なります。

    本文中でも著者が述べていますが、完治さんのお話は冒険物語を聞くようなところがある。
    ずっと従軍中の夢ににうなされていた完治さんを、夜の砂浜で見た月の美しさや、時折手に入れた食べ物のおいしさなどの小さな思い出が救ってくれたのだろうなと思う。


    著者や完司さんと同じく、長い間、私も戦争のことは、読むことも見ることも聞くことも避けてきました。今の仕事についてから、学校卒業以来に恐る恐る手に取るようになりました。

    辛い気持ちを押して語ってくださる方々のお話を読んでいかなければと思います。


    越智典子さんのコケの絵本好きです。
    あの絵本を製作されていた前後に、このようなお話を聞いてはったんだなあと。

  • ゆるっとした語り口長にだまされそうになるが、話しているのは戦争のこと。片足を失いグアム島で這って生き延びた完司さん。壮絶な体験だっただろうに辛いとか悲しいとかネガティブな言葉が出てこない。若さを戦争で失い、片足を失い、生命をおびやかされた。グアム島には至るところに死体が転がっていた。戦争を始めた人と現地へ行く人は別。やはり戦争はしてはいけない。人生もなにもかも失うのは戦争をやれ、と決めた人ではなく下っ端なのだから。

  • 悲惨な話なのだが、完司さんのあっけらかんとした前向きさに救われる。
    一兵卒の兵隊さんたちは義務だから兵隊になったので、お勤めがすんだら、さっさと元の生活に戻る、という、
    戦争は若い一番いい時期を奪っていった!と。
    淡々と、と言っていいくらいの語り口にかえって様々な思いが込められているのだろう。

  • 完治さんの戦争のお話の聞き書き

    新潟の村生まれ、次男の完治さんが、農学校を中退して、満州庭たり、戦争に行苦ことになり、グアムで片足をなくして、アメリカの捕虜となり、ようやく日本へ戻ってきた話。

    辛すぎる戦争の部分は、多分本人の記憶が曖昧になっているのかもしれない。
    ある意味、明るい戦争の話。
    完治さんの一貫している生き方のせいなのか。
    イラストレーションも、今までの戦争ものとは一線を画しているポップなもの。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。東京大学理学部生物学科卒業。在学中にエジンバラ大学動物学科に留学。出版社勤務を経て、作家となる。おもな作品に『ピリカ、おかあさんへの旅』『ほら、きのこが…』「ラビントットと空の魚 全5巻」(以上、福音館書店)『いのちのなぞ 上・下』(朔北社)『完司さんの戦争』(偕成社)などがある。

「2021年 『デイビス&サットンの科学絵本 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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