多毛留,おとなになれなかった弟たちに (偕成社文庫 3159)

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036515905

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  • おとなになれなかった弟たちに

    第二次世界大戦の末期、末の弟が栄養失調でなくなる。
    赤ちゃんが、おとなしく死んでいく。
    極限状態では弱い者から亡くなっていく。
    戦争をすることで、戦場でなくても、人はなくなっていく。
    弟のことを大好きな兄ですら、弟のミルクを飲んでしまう。

    亡くなった弟を棺にいれようとしてはいらない時初めて母が泣く。
    ___
    母が、大きくなっていたんだね、とヒロユキのひざをまげて棺に入れました。そのときはじめて泣きました。
    ___

    多毛留

    神話のような詩と、絵。
    国と国の争い、その間の恋愛、家族愛。

    子どもには難しいですね。


    筆者の米倉さん、俳優としては存じ上げてましたが、絵も文章もプロ。多芸な方だったんですね。

  • 心がギュッとなる。
    こんなことがあったなんて、今でも世界のどこかで起こっているなんて。。
    短い文章にギュッと詰まって伝わってくる。

  • 今日、米倉さんの講演を拝聴しました。「戦争は、戦場じゃなくても見境なく人を殺す」ということ。愚かな戦争のせいで、男たちは戦場で死に、女と子供と老人たちは、飢えや貧しさで死んでいったのです。途中で、声を詰まらせて彼は言いました。「61年前の今日、弟は死んだのです。昨日のことのように覚えています。」

  • 素朴で厳しくてそして優しい。

  • 短い物語で、心の深い柔らかい部分をギュッと握られたような哀しみと美しさに包まれる2作。
    そして、単純化されているのに細密という矛盾を統合した美しい挿絵。

  • 小さな子どもたちは、声を上げることもできずに、静かに死んでいった。それが「戦争」だ。
    どんなにか弟がかわいくて、大事で、愛していても、育ち盛りの兄は、その弟の唯一の食べ物と知っていても、あまいミルクを飲んでしまった。何度も、何度も。それが、弟を死に追いやったのだと、深い後悔とともに兄の心に傷を残す。
    でも、そういうことじゃない。
    日本は豊かな緑と水と土を持つ国であり、温暖な気候から、平和に暮らしていれば、そこまで飢えることはなかったのだ。でも、戦争に明け暮れ、飢えた。飢えて弱り、弱いものから死んだ。
    また戦地では、何十万もの兵士が、戦いではなく、飢えと病気で死んだ。
    あまりにも愚かなことだったと思う。
    これを、繰り返してはならない。

    ー 多毛留
    「百済人!」と叫んだ時、燃え上がるようなものを身の内に抱え、悲劇が起こる。
    九州と朝鮮は近く、つながりがあったろう。時に、人が流れ着くこともあったかもしれない。
    ととさんは、何を考えていたのか。かかさんは、なぜ、日本に残ったのか。
    子ども向きには、ちと難しい話。
    あとがきに「たくさんの朝鮮人の友だちがいます」と書かれているが、その背景に、激しいバッシングにあった焼き肉のタレのCMがあったのかもしれないと思うと、また深い感慨を抱かざるを得ない。
    「米倉斉加年さんとモランボンの「ジャン」」
    http://vergil.hateblo.jp/entry/2014/08/30/220034

  • (メモ:中等部3年のときに読了。)

  • 中学時代あまりにも印象が強烈でしたが、内容が分かってなかったので再読です。
    うーん、ひっそり悲しく、しかし激しい。ととさん、かかさんという言葉の響きが好き。

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