二分間の冒険 (偕成社文庫 3188)

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 1809
感想 : 159
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036518807

作品紹介・あらすじ

たった二分間で冒険?信じられないかもしれません。でもこれは、六年生の悟に本当におこったこと。体育館をぬけだして、ふしぎな黒ネコに出会った時から、悟の、長い長い二分間の大冒険が始まります。昭和六十年度うつのみやこども賞受賞。小学上級から。

感想・レビュー・書評

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  • R4.3.20 読了。

     久しぶりに面白い冒険ファンタジー小説に出会いました。黒猫のダレカと出会った悟君は、異世界に導かれ姿の分からないダレカを探す旅に出ます。知らない村にいる小学校の同級生に似た人達。竜の館に集められた同級生たちと何でも知っていて、硬いウロコを持つ竜と知恵と力の闘いに巻き込まれていく。始めは孤独な戦いだったが、徐々に変化していく。
     竜との戦い、ダレカは誰なのか?など最後まで気が抜けない展開にワクワクドキドキした。楽しかった。
     そして冒険を通して、悟君の成長とかけがえのないものを手に入れた姿に勇気をもらった。

  • 悟にあった時間は、体育館から保健室に行って戻ってくる二分間だけのはずだった。
    だが悟は校庭で黒猫ダレカに出会った。
    そして魔法の時間、魔法の場所に入り込んだのだ。
    黒猫ダレカは悟の頭に語りかける。「ちょっと遊んでくれよ。おれを捕まえたらお前の勝ち。もとの世界に戻してやるよ。時間はたっぷりある。この世界でお前が老人になるかならないかというころに、元の世界ではやっと二分間がすぎるくらいさ。おれの探し方?おれは『この世界で一番確かなもの』の姿をしている。じゃあがんばれよ」

    悟が迷い込んだのは深い森だった。出会ったのはクラスメイトと同じ顔と名前を持つ少年少女たち。
    この世界では子供だけで暮らしていて、毎年それぞれの村から選ばれた二人が竜と知恵と力の戦いに出かけるという。竜に負けたら老人にされる。勝ったなら世界は竜から開放される。

    悟はかおりのペアとして一緒に竜退治に行くことになった。
    この世界の子供たちは、自分たちが選ばれたら竜との対決にゆくというルールを教えられるわけでもなく、大人という存在を知ることもなく、ただ『知って』いる。だがそれ以外のことは何も知らない。自分たちの食べ物はどうして出てくるのか?どうやって生活をすればいいのか?

    悟とかおりが進んでゆくと竜退治に失敗して老人となった者たちに出会う。自分たちもこうなるのか?今後ずっとこれが続くのか?
    しかしある村で、二人は秘密の竜退治の剣を手に入れたのだ。「これから向かう竜の館には多くの少年少女たちが集められている。だがこの剣を持った者だけが竜を倒せるのだ」
    その言葉に励まされた悟とかおりは、竜の館に辿り着いた。
    そこには他の村々から来た二人組の少年少女が集められている。
    奇妙な沈黙、奇妙なよそよそしさ。
    竜退治の順番が決められる。
    だが、自分たちこそ本当に竜を倒せる武器を持っている悟とかおりは、そんな順番を守るより、竜を早く倒して他の人たちを助けようと考えるのだった。

    ===
    日常からいきなりファンタジー世界の冒険へ。
    この冒険は現実世界では二分間だとわかっているのですが、子供たちでの竜退治や、この世で一番確かなものとは?という問とか、竜がいる事が前提の世界で竜を退治したらどうやって生活してゆくのだ、など本格的な冒険になります。
    この世界は「子供」「大人・老人」がきっぱり別れていて、子供は「生活のことは考えなくて良い。ただ竜退治に選ばれたら出発する」というだけだし、老人は「負けたもの」「ズルいもの」となっています。
    しかし悟が「ぼくの世界の老人はちゃんと生きている。この世界の老人は死ぬのを待つだけ。こんなの生きていない」と言い、最初はお互いによそよそしく、この生活を当然だと思っていた子供たち同士が、協力して竜退治のからくりを探り、協力して倒す、もし負けたとしても次の者に繋がる負け方をする、そして倒した後はどうしようと考えるようになります。
    しかしこの竜システムの根本の大人がズルい〜。お話としてはよくできているなーと思いました。

    二分間であっても大冒険。
    悟少年にとっては、「確かなもの」がわかる時間であり、ちょっぴり恋もありましたね。

  •  これはどこか児童文学として反則なんじゃないかという気がしてしまうぐらい面白かったです。91年に書かれた本書は時代に依存する部分が一切ないファンタジーなので児童文学のスタンダードとしてこれからもいつまでも読みつがれていくことと思います。そして別世界で剣と竜が登場するファンタジーではありますが、いくつかの仕掛けによりまるで小学校が舞台のような雰囲気が全編を包んでいます。そのため、面白いことに違いはないのですが、ハリー・ポッターやナルニア国物語のようなファンタジー物語よりも、いかにも小学校の推薦図書にしたいような身近さが感じられます。本当に推薦したい推薦図書と言えます。
     この物語で扱っているテーマは時間であると言えるでしょう。「モモ」と違うのは特に「若さ」が扱われていることです。物語の中途で、若者たちが一般に持つ、老人や他の若者に対する根拠ない優越感や、選ばれた特別な存在としての自己意識が、登場人物たちに投影されて描かれます。しかしおそらくこの本を読む小学生たちは自分たちのことを述べられているとは気づかないでしょう。それが皮肉で面白いと、おじさんである僕は傍観者として思いました。
     子供たち(小3と小1)は竜との対決に息を呑んで興奮していました。自分だったらこんな謎をかける、こんな方法で竜に剣でいどむと想像が膨らんで、叱るまでなかなか寝ません。物語の意外な展開にも見事にやられ、そこが面白かったと言っていました。主人公の男の子とヒロインの女の子の間の、少し大人びたそれでいて小学生らしい距離感の恋愛感情(?)にも、身をよじって喜んでいました。

  • お話の最後で、みんなの絆を感じた。
    すごくファンタジーで、何回も読み返したくなる話だった。

  • 自分が子供の時は通らなかった岡田淳さん。
    素晴らしい〜ドキドキするファンタジー、前置きもコンパクトに、世界が壮大すぎず。真の敵が竜じゃないってところのなんか気持ち悪さみたいなものも30年経っても古くない、納得できる、刺さる展開だと思う。異世界に紛れ込んでしまうドラえもん映画っていつも面白くてちょっと怖くてドキドキするんだけど、これがアニメーションじゃなくても描かれる世界のルールや怖いところを読んで理解できるようになってほしい。面白い!って少年少女がまだまだこのお話と出会ってくれることを願います。

  • 小学生であった、悟が子供の世界にいって、竜と戦う所から、もとの自分の世界に帰るまでがドキドキしました。
    また、面白いと思ったシーンは竜と戦っているところです。

  • 読み始めて序盤から最後まで純粋に
    あったかい楽しいお話だったぁ〜(*^^*)
    こういう一昔前の文体?話し言葉好きだなぁ♡
    最後の終わり方も良かった♡好き♡

  • そういえば読んだことなかったかも?と思って!
    読み継がれる名作はやっぱり面白い。
    二分間の冒険、の二分間ってなんだろう?と
    思わせるタイトルもさすが。


    別世界に飛ばされた悟は、
    もとの世界に帰るために、
    猫を探したり竜を退治しようとしたり…
    さあ、果たして二分間のうちに帰って来れるのか?

  • いい大人が夢中になって読んでしまった…笑
    ドキドキ、ハラハラしました。
    物語に出てくるなぞかけが全く解らず、情けないない…(☉。☉)
    歳をとっても柔軟な頭と心でありたいと切実に思いました。
    子供はもちろん、大人にもオススメな1冊です!

  • これまで読んでみた児童文学書の中で、一番感動した本のひとつ。

    表紙の絵の通り冒険物の物語なのですが、面白い設定ではじめから物語の世界に引き込まれます。
    大人でも答えを出せない根本的な問いに、少年達の会話の一つ一つ、主人公の心のなかで行われる葛藤の一つ一つが答えを導いていく過程に感動。

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著者プロフィール

1947年兵庫県生まれ。神戸大学教育学部美術科在学中の1966年に「星泥棒」を自費出版。西宮市内で小学校教師をつとめながら1979年に『ムンジャクンジュは毛虫じゃない』(偕成社)を発表。1981年『放課後の時間割』で「日本児童文学者協会新人賞」を受賞。教壇に立ちながら1年に約1タイトルのペースで作品を発表。数々の賞を受賞する。「こそあどの森」シリーズ(理論社)は国際アンデルセン賞オナーリストとなる。アジア各国では翻訳本も出版されている。岡田淳作品で読書嫌いが治った、本好きになったという人は多い。

「2008年 『人類やりなおし装置』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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