死の国からのバトン: 直樹とゆう子の物語 (少年少女創作文学)

著者 :
  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037193706

感想・レビュー・書評

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  • 市立図書館になく、他の図書館から取り寄せてもらうのに2ヶ月ほどかかった。すべてのページを確認し、汚れ等がどこにあるか詳細にメモされている。ものすごい手間がかかっている。直樹6年生。死の国は過去。生きることさえギリギリだった昔、自然には存在しない毒を作り出す現代…30年ほど前は、東京のスモッグや東京湾の汚染などしきりに聞かれたものだが今はどうなんだだろう。直七の苦しみと覚悟を思うと苦しくなる。理不尽なことはいつの時代にもある、と直樹のおとうさんは言った。過去から学ぶ。それができないのなら人間は本当に愚かだ。

  • 小学生の頃に読んで以来、何度も読み返している本だが、久しぶりに読み直してみた。忘れているところが多々あったが、自分の幼い頃の実体験と重なることが多く、あらためて考え込んでしまった。

    当時は理解できていなかったと思うが、ネコのルウが警告しているのは水俣病だろう。ものを食べても、空気を吸っても毒だ、というのは、かつての私の恐れでもあった。
    直樹が出会うコドモセンゾ直七の直訴の経緯も悲しいが、直右衛門じいが命をかけて用水を村に引いて田を作った行為が、気高くて悲しい。
    村人たちに理解されず、それでも信念を貫いた直右衛門。小学生の頃は、自分の体験に近い公害の話のほうが身につまされたので、どうして直右衛門の話が挿入されているのか、今一つ、理解できていなかったが、今回、読み直してみて、あらためて思う。
    直樹に託されたバトン。
    その「毒」となる巨大な権力や企業、人間の富に執着する強烈な欲と闘うには、直右衛門と同じくらい、不撓不屈の闘志が必要だ。どれだけ辛くても、味方がおらず、批判されることがあろうとも、腕をもがれようとも、闘い抜かねばならない。
    その覚悟が、私にはあるだろうか。

  • 某実務的理由あって、中学のとき以来の再読。当時は松山で読んだせいか、これほど怖いとは思ってなかった。阿賀野川の河口の街に住むようになって10数年。土地勘がそこそこある場所の話として読むことになるせいか、本当に怖い。でもそうでなくても、大人になって読むと、自分の懶惰な日常をどうしても想起するので、そのために恐怖感が増すのかもしれない。無能な大人のせいで「直樹とゆう子の物語」は永久に続くのか。

  • ★あらすじ
    小正月の祭を見るために、12歳になった直樹とゆう子とお母さんは、亡くなった父親の実家を訪れる。日本海側の雪深い山村である。
    直樹は家の裏山にある五百羅漢で、不思議な少年に出会う。粗末な着物とかんじきを着けたその少年は、直樹より2,3つ年上なだけに見えたが、自分は直七といい、直樹の遠い先祖だと名乗った。

    ★感想
    シリーズ2作目。
    これもメルマガを書くためにン十年ぶりに再読しました。
    このシリーズでは唯一の戦争以外の史実がテーマになってます。
    餅花の美しさやそりすべりの爽快感など、雪国育ちの自分には親しい描写がたくさん出てくるのが嬉しい。
    しかしこの作品で最も印象的なのは、やっぱあそこでしょう。山のばばさまとねこたちのシーン……
    あそこは大人になって読んでも、ぞくっとするし、悲しい(・_・、)

  • 時代に即した表現で古来からの知恵を伝えゆく人がいる。
    松谷みよ子さんもその一人だ。
    児童文学という領域のやさしい鋭さよ。
    時代を色褪せないものにする言葉を、このものたちは担っている。

  • 「知らない」ままでいてはいけないこと それをこんなかたちで伝えることのできるひとがいる

  • 先祖、というテーマ。ふたりのイーダの続編(?)

  • 「直樹とゆう子の物語」テーマは環境破壊。

  • 兎の肉と縄で縛るほど堅い豆腐がおいしそう、そして歴史の残酷さ。小学生の時、図書館で借りたこの本が初めての読書感動体験でした。ある意味、人生の転機となった本かも。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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