少年のはるかな海 (現代の翻訳文学)

  • 偕成社 (1996年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (270ページ) / ISBN・EAN: 9784037265809

みんなの感想まとめ

思春期の少年が抱える不安や葛藤を描いた物語は、北欧特有の寂しさと温かさが交錯しています。犬を探しに行くという一見シンプルなストーリーの中には、父親との関係や仲間との交流が織り込まれ、深い感情が呼び起こ...

感想・レビュー・書評

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  • 菱木晃子さんの日本語が好きなので手に取った一冊。
    スウェーデンの児童文学。北の国らしさ満点だった。
    わりと暗めの内容。
    父子家庭の主人公ヨエルはもうすぐ12歳。
    家庭にも学校にもあまり居場所がなく、船乗りだった父の語る言葉から海への憧れを持ち、普段は海を想像する世界に自分の気持ちをおいて過ごしている。
    母はなぜいないのか。父はなぜ海に戻らないのか。
    鬱屈するヨエルは、謎の犬を見かけてから、自分だけの手帳、自分だけの秘密クラブを作って、夜に街を歩いて遊ぶが、そこで遠方から来た金持ち少年と知り合いになる。
    同時に、街にいるちょっと変わった大人たちとも親交を持ち始める。
    父は酒場の女サラと親しくなり、ヨエルの心はさらに不安定になる。
    そのうえ、ヨエルの新しい友達は、むしろ彼を支配しようとする…。

    うーん、こう書くと、登場人物が多くて、とっ散らかった内容なのだけど、実際は暗くて冷たい小さな地方都市の生活と、11歳の少年の閉鎖的な心と、ストーリーがピタっと揃っていて、冗長にもならず、完成度の高い一冊だと思った。

    (小さなことだが、冒頭でヨエルが団地の一階のおばさん宅で待たせてもらうシーンで、おばさんは刺繍好きで、自宅は宗教くさい手作り布に溢れていた、玄関マットにもイエス・キリストの顔がついていてヨエルは使うのをためらったが、おばさんは、神様はどこにでもいるから(?)と言って使うように勧めた、というシーンで、踏み絵って本当に効くんだな…と、余計なことを思ってしまった私は日本の読者であります。「踏めば助かるのに」ってか。)


    しかしまあ、犬はどうなったの?
    自転車泥棒は気にしなくていいの?
    お父さんは雑貨&食料品店のツケは払えたの?
    と謎でいっぱい。
    てっきり、お母さんか犬を探しに冒険にでる話かと思ったので、主人公がずっと同じ街にいるまま展開することに、ビックリしてしまった。
    途中で仲良くなった金持ち少年がものすごく鼻持ちならないやつで、寂しさもあるのだろうけど、まああ気分が悪かった。


    全体に悪くはないけど、タイトルがちょっとわかりにくいのが勿体無い。(まあ話もややわかりにくいか…。)
    武田百合子「犬が星見た」に寄せた、星を見た犬、少年と星の犬、夜歩く。とか。
    馳星周「少年と犬」にも寄ってきてしまう…。難しい。

    ささめやゆき氏の挿絵がいい味を出していて、雰囲気をかもしつつ、読者の読みやすさにも非常に貢献していると感じた。

  • 著者の警察小説は読んだことあるけど、児童図書は初。
    犬を探しに行く話かと思ったら……
    父親に置いて行かれるのでは?というヨエル少年の不安、真夜中の秘密クラブ、彼に寄り添う人達との交流等。
    どの場面も良かった。話運びも上手だった。北欧の物語特有の「寂しさ」のようなものがあって、派手さはないけれど良い作品だったと思う。もしこれが映画にでもなっていたら、色んなところで自分は泣くと思う。
    シモンの言葉の「なにかきれいなことをすると、さみしさがうすらぐんだ」にグッときた。雪の上に置いたロープを綺麗と思える人。

  • 『北京から来た男』のあと読むと、雪の中を歩く犬(オオカミ)、法律家など著者ならではの道具立てが見えて面白い。

  • ヘニングマンケルだなあ 人間を描いてる

  • ヘニングマンケルの児童書。
    子どもを相手に、とは言っても作者は少しも手を抜かない。北欧の厳しい自然や思春期にさしかかった少年の悩み、親子関係の葛藤、社会にむける覚めた、そして優しい眼差しなど、すべて正直に描き出しくれました。

    ヴランダーシリーズにも似通った、情けない男の味わいも感じられます。

  • 主人公、その父親、それから町にクラスちょっと変わった人達 ー 作者はその人達それぞれの持つ孤独を描くのがうまい。ちょっとした優しさに孤独がにじみ出るよう…

  • 主人公は父親と二人暮らしの少年、ヨエル。
    父親は以前は海の男だったが、今は森で木を切る仕事をしている。
    母親はヨエルが幼い頃、家を出て行ったきり。

    ある冬の夜、目をさましたヨエルは窓の下の通りを走り抜ける犬を見る。
    ありふれた灰色の犬。

    でもなぜ、こんな寒い夜に外を走っていたのか。
    あたりを見回していたのか。
    あの犬はなにかをおそれている。
    ヨエルにはそんな感じがした。
    それからヨエルは夜中に家を抜け出して犬を探すようになる。
    そこで出会った人々。
    起きた様々な出来事。
    それらは少年、ヨエルにどんな影響を与えたのか-。

    これは児童書です。
    確かに文章も子供向けだし、ひらがなの多い文からも児童書だとは思いますが、読んでいて児童書にしては大人っぽいイメージを受けました。
    中には、こんな場面を児童書で描いていいのか?と思うようなのもあったり・・・。
    それは日本の児童書では絶対にないだろうというもので、その辺は海外との感覚の違いだな・・・と感じました。
    また、子供が毎夜、家を抜け出して・・・というのも、ちょっと考えられない。
    以前、北欧を舞台にした映画で、夜中に家を出て遊ぶ子供を見た事があるけど、昼が短いからそうなってしまうのか、向こうではそう珍しい事でもないのか・・・なんて思ったりしました。
    他にも日本人の感覚ではちょっと分かりにくい事がちょこちょこありました。
    それに、児童書の割には作品の全体を通して暗くて重い雰囲気が漂っていて、それは冬の長い国を舞台にした話だからなのか-と思ったりしました。

    そんな訳で私にはあまりこの本の良さが分からなかったんですが、解説を見るとこの本は優れた児童文学作品におくられるニルス・ホルゲション賞というものを受賞しており、ドイツ児童文学賞も受賞しているそうです。
    その解説を見ると、私では理解できなかったこの本の良さが説かれています。
    私がこの本を読んで感じたのはひと冬の間に少年、ヨエルがいつの間にか成長していたということ、大人に一歩近づいていたということ-だけ。

    最近の現代小説を読んでその良さが分からなくても何とも思いませんが、この本の良さが分からなかったというのは何となくちょっと悔しい気がしました。

  • なにかがおこらなければ…。もう、これ以上、待つのはいやだ。窓の外を走っていく犬をみた日から、少年ヨエルの夜の徘徊がはじまる。不信と孤独のなかの少年を救ったのは、子どものような大人、シモンとイェルトルドだった。大人や友人への反感・理解を通して自分をみつめる、思春期の少年の内面をするどく描いた長編小説。スウェーデンのニルス・ホルゲション賞、ドイツ児童文学賞受賞。

  • ミステリで知られる作者のこれは1990年作の児童文学。
    森で木を伐る仕事をしている父親サムエルと二人暮らしの少年ヨエル。
    ジャガイモをふかして父の帰りを待つ生活。かって船乗りだった父が元に戻ればいいと思いつつ、一人で想像を巡らす孤独がちで多感な少年でした。
    夜中に走っている犬を見かけたことから一人で家を抜け出し、変わり者のシモンやイェルトルドなどと知り合いに。新任の判事の息子トゥーレと秘密クラブの活動として夜中に冒険を始めます。
    出て行った母を思い、父が酒場に勤めるサラと付き合いだしたことに悩みますが、しだいに…?
    作者は1948年ストックホルム生まれ、作家・舞台演出家として活躍とのこと。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。父親の仕事の影響で、幼いころよりスウェーデンの文化に親しんで育つ。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学文学部に学士入学。卒業後スウェーデンに渡り、スウェーデン語を学ぶ。スウェーデンの子どもの本の翻訳の第一人者。2009年、その功績を認められ、スウェーデン王国より北極星勲章受章。訳書に『白クマたちのダンス』(偕成社)、「ステフィとネッリの物語」シリーズ(新宿書房)、『ニルスのふしぎな旅』(福音館書店)など多数。

「2022年 『リッランとねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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