マルベリーボーイズ

制作 : Donna Jo Napoli  相山 夏奏 
  • 偕成社 (2009年10月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037267704

作品紹介

ある朝、ぼくはイタリアのナポリから新天地アメリカへ旅立った。たどりついたのは、イタリア移民がくらすマルベリーストリート。ひとりぼっちのぼくが持っていたのは、ぴかぴかの靴だけだった。19世紀末、ニューヨーク最大のスラム街を舞台にみずからの知恵と勇気で未来をきりひらく、ユダヤ人少年の物語。シドニー・テイラー賞オナーペアレンツ・チョイス銀賞受賞作品。小学校高学年から。

マルベリーボーイズの感想・レビュー・書評

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  • これまで、ヘンゼルとグレーテル、ラップンツェル、美女と野獣といった昔話を下敷きに、新たな物語を紡いでみせてくれたナポリだが、本書『マルベリーボーイズ』は少し趣きが違う。今回もとになったのはお伽噺ではなく、自らの祖父に関する、家族内に伝わるエピソードである。

    ナポリの父方の祖父が、わずか5歳の時にたった一人でイタリアからアメリカへ密航してきたこと、サンドイッチの切り売りをして、商売を成功させたというエピソードが本書の骨子となっているが、ナポリはさらに文献や実地調査を加え、1892年のニューヨークに、イタリアからたった一人で降り立った9歳の少年ベニアミーノの、生きるための奮闘を細やかに描き出している。

    エリス島での移民審査、ちょっとした隙に物が盗まれてしまうような油断ならない状況、言葉の問題、ユダヤ人であることを隠さねばならないこと、そして何より無一文であること。そうした状況下で、同じような境遇の少年たちと友情を培い、商売のめどを立てていく。
    この、サンドイッチ売りの商売のやり方が、商売成功の秘訣を示しているようで面白い。
    すなわち、誰も気づかないところに目をつけ、新商売を始める。客のニーズをつかむ。失敗から学ぶ。敵対者の取り込み。一緒に働く者に責任をもたせ、やる気を引き出す。といったような。

    目端のきく、へこたれない少年の成功譚という側面もあるが、同時に、大人にくいものにされている子どもたちの存在とその悲惨な境遇について語られてもいる。

    ただベノミアーノ(アメリカではドムと名乗っている)の姿だけを追っていれば、感動的な物語といえるのだが、冒頭で、イタリアで大家族とともに暮らす彼が描かれていただけに、彼の母親のとった行動―何のつても当てもない異国に我が子を放り出す―の不可解さに、最後までとらわれてしまった。

    作者後書きでナポリは、祖父の生前には、その生涯にほとんど興味をいだいていなかったこと、その話にもっと耳をかたむけていればよかったという後悔の念を語っている。
    個の歴史というものは、語る意志と傾ける耳がなければ、たやすく消え去ってしまう。

      The King of Mulberry Street by Donna Jo Napoli

  • 19世紀末、イタリア ナポリから一人でニューヨークに渡った、9歳のイタリア系ユダヤ人の少年の物語。
    多くの苦難や孤独を乗り越えて生き抜いていく彼の逞しさ、賢さ、健気さが心に残る。生きる術を見つけ、自分の居場所を見つけて、人生を切り拓いていく少年に胸が熱くなる。
    当時のニューヨークに生きる移民達の悲惨な状況は、現在からは想像もできない。この時代を経て今のニューヨーク…アメリカ…があるのだと思うと、感慨深い。

  • マンハッタンの南にリトル・イタリーと呼ばれる地区があり、マルベリーストリートの名前も、クリスマス時期の飾りが美しかったことと一緒に覚えています。
    通りひとつ違っただけで、住んでいる人も雰囲気もがらりと変わってしまうのがマンハッタンのおもしろいところだなあと思っていますが、そこには移民としてやってきた人たちの歴史が刻まれているのだということを、この本を読んで再確認させられました。

    主人公の少年ドム。わずか9歳で、何も知らずに貨物船で密航者としてマンハッタンにやってきます。母から贈られた靴と、「生き延びて」という言葉と、それまで家族から教えられてきた「知恵」だけで、マルベリーストリートで生きて行くのです‥

    たった1年で、こんなにも成長するのだなと思う反面、10歳にも満たない子どもが一日一日を必死で生き抜いていく様に、胸が痛くなりました。

  • イタリアのナポリで暮らしていたユダヤ人の9歳の少年ベニアミーノ。母親によそいきの服を着せられ、新しい靴と靴下をはかされ、喜んでいたら、アメリカ行きの船に乗せられた。母も乗ってると思ったらひとりぼっち。船の中でドムと呼ばれるようになる。
    イタリアへ帰りたいと思っているが船に乗るお金がない。ウォール街で働く連中は高給取りだからお金のありがたみを知らない。サンドイッチに50セント払う。なので、イタリア移民が暮らすマルベリーストリートで知り合った少年たちとともに、25セントで長いサンドイッチを買って、それを1/4にして売ることにした。

    ニューヨーク最大のスラム街、犯罪や争いに巻き込まれたり虐待を受けたり、命を失う子供もいた。そんな中で、懸命に立ち向かっていく姿が描かれている。

  • 9月の読書会の課題図書。
    あの方のオススメなら間違いない、という人の選出図書なので楽しみ。
    最近YAといえば偕成社に偏っているので、他の出版元からのヤングアダルトも読みたいです。
    それ以前に上質なミステリ読みたい。誰か私の中の『容疑者Xの献身』『虚無への供物』『Yの悲劇』『巷説百物語』を超えてくれないか。

  • イタリア人の男の子が、たった一人、ニューヨークで生きていく。
    ドナ・ジョー・ナポリが、自らの祖父をモデルに描いた小説。

    イタリアのナポリに住むユダヤ人の少年ベニアミーノは9歳。
    ある日、母が新しい靴を買ってくれた。
    港に連れて行かれ、理由もわからずに貨物船に密航して、たった一人でアメリカに渡ることに。
    母は「生きのびること、それがお前の仕事よ」と‥
    職に困っていた母は思い詰めて、アメリカでの未来に賭けたのだ。

    船の中でドムと名を変え、子どもの出来る仕事をして、精いっぱい役に立つようになる。
    そのまま密航して、ナポリに帰るつもりだったのだ。
    そうはいかずに、一人で港近くをさまよい、樽の中で寝ることに。
    1892年のマンハッタンは、アメリカに渡ってきた移民で溢れていた。
    イタリア人の集まっているマルベリー・ストリートへ行くが、そこでもユダヤ人とは名乗れない。

    ドムは、ちょっとだけ年上の二人の少年と知り合う。
    道端で口笛を吹いている痩せこけた男の子ティン・パン・アレイは、道行く人にカップに硬貨を入れて貰っていた。
    もう一人知り合ったガエターノは、ティン・パン・アレイを物乞いといい、悪どいパドローネに使われているという。
    パドローネとは、貧しい子ども達に物乞いをさせている元締めだった。
    ドムはどちらも友達だと思うのだが。

    目端の利くガエターノに色々なことを教わりつつ、ドムは自分でも次第に世の中のことを知っていく。
    祖母に教わったことを思い出して、青物屋のグランディネッティの店を手伝ってみせる。
    場所によって値段が違うことに気づいて、サンドイッチを売ることを思いつき、ガエターノと商売を始めるのだ。
    失敗も重ねつつ、だんだんと街に溶け込んで、大きくなっていく。

    はらはらの冒険物語として読めます。
    こんな子どもがと思うと胸が痛むが、生きていくコツを心得ていくたくましさには脱帽。
    明るい未来だけの話ではないけれど、仲間や世話をしてくれる人もちゃんと出来ていくんです。

    ファンタジックで味わい深い童話の再話に才能を発揮してきた著者ならではの語り口。
    これは母たちから聞いた祖父の話をもとに、当時の資料を調べて書き上げた物語です。
    直接、祖父に詳しい話を聞くことはなかったので、後悔したそう。
    母方の祖父は、グランディネッティというペンキ塗り職人で、青果商のモデルに。

    ジョー・ナポリというのは変わった名前で、どこから来たのだろうと思っていました。
    父の出生証明にある祖父の名は、ドメニコ・ナポリーロ。
    祖父はダン・J・ナポリと名乗っていたが、このJが何なのか本当ははっきりしないそう。祖父についての書類は他に何もないのだそうです。
    2005年の作品。

  •  「生きのびること、それがおまえの仕事よ。」 19世紀末、ナポリ生まれのユダヤ人の9歳の少年ベニアミーノ(ニューヨークでは“ドム”と名乗っている)は、母に貨物船に乗せられ、アメリカに渡る。ニューヨークで、イタリア移民が多く暮らすマルベリーストリートで、ティン・パン・アレイやガエターノと出会い、サンドイッチを売る商売を思いつき…。

  • 朝日夕刊

  • 1892年,イタリアのナポリからたった一人で9歳の少年がアメリカへ向かう。主人公の少年はアメリカに行きたくて密航したのではない。彼の母親が密航させたのだった。なぜ?彼の母親は,貧乏な暮らしをしていたが,とても頭のよい人だったみたいだ。たった一人で密航した少年には,考えられないような苦労の日々がまっていた。19世紀末,ニューヨーク最大のスラム街を舞台にみずからの知恵と勇気で未来をきりひらく,ユダヤ人少年の物語。

  • 頭を使うとはこういうこと。学校で学ぶことはできない知恵と勇気と友情。そしてなにより商売と生き延びること。おとなより同世代のこどもたちに読んでほしい。

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