サースキの笛がきこえる

制作 : 丹地 陽子  斎藤 倫子 
  • 偕成社 (2012年6月5日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037268602

作品紹介

あたしは何者?妖精の国を追放され、ひとの子として育てられた少女サースキがたどる運命とは-?ニューベリー賞オナーブック。小学校高学年から。

サースキの笛がきこえるの感想・レビュー・書評

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  • とりかえ子の少女の話。
    自分は何者なのか、まわりとの違和感を覚えたことは誰しもあるでしょう。
    胸に響く物語です。

    とりかえ子とは、妖精が人間の赤ちゃんを気に入って連れ去り、妖精の子供をおいていくことがあるという、西洋とくにイギリスではよく知られた伝説。

    サースキは変わった子供だった。
    鍛冶屋をしている父親のヤノも、その妻のアンワラも青い目だったが、どちらにも似ていない。
    ふわふわのまとまらない髪の毛、つりあがった大きな目は色が定まらない。
    アンワラの母べスは薬草師で、一人暮らしをしていた。
    最初にサースキをとりかえ子ではと思ったのはベスだったが、両親は激しく否定する。

    じつは、サースキは妖精と人間との間に生まれた子。
    姿を消す能力がないとわかったため、人間の家においていかれたのだ。
    サースキは記憶をなくし、人間と思って育つのだが、しだいに違和感が目立ってくる。
    村の子供達にいじめられるようになったが、何とかかわしていた。

    バグパイプを見つけたサースキは、すぐに吹きこなすことが出来て、誰も知らない不思議な曲を次々に演奏する。
    人は魅了されつつも気味悪がり、父には取り上げられそうになるが、アンワラとベスがかばってくれた。
    サースキは、覚えのない気持ちでいっぱいになる。
    アンワラとベスに何かしてあげたい‥

    サースキは荒野で、山羊を連れたタムという少年に出会う。
    旅回りの鋳かけ屋の下働きをしているタムは、サースキに出来た初めての友達。
    荒野は危険な場所だからと行くのを禁じられるが、どうしても我慢が出来ないサースキ。
    荒野で妖精の姿を見ることが出来るようになったサースキは、しだいに自分のことがわかってくる。
    アンワラのために、妖精の暮らす塚の奥へ入ろうとし‥

    妖精にはなりきれないけれど、普通の人の気持ちにも判らない部分があるサースキ。
    たとえば、憎しみという感情とか。
    村人の憎しみがサースキを追い詰めようとするときの醜さは、人間の側にいたくないと思うほど。

    アンワラはひたすら娘を守ろうとし、ベスは途中からよき理解者となり、ヤノも本心は娘を大事にしているのが救い。
    哀切なものがありますが、おだやかなハッピーエンド。
    サースキの旅の行く末を祈りたくなります。

    作者は1915年アメリカのテキサス州生まれ。1950年に作家活動を始め、三度、ニューベリー賞の次席に選出された。この本もその一つ。

  • ほかの人とちがう、と感じたことのある 
    すべての子どもたちにーーーーー

    The Moorchild by Eloise McGraw

    Saaski

    妖精の「とりかえっ子」の話をベースにしているが、主人公サースキの場合はもっと複雑な関係がある。
    自身が妖精と人間のダブルだからだ。

    そんなサースキが妖精界から追放されるために、取り替え子された先が鍛冶屋のヤノとアンワラ、祖母ベス。

    最初からサースキを取り替えられた子だと疑うベス、そんなベスの言葉を否定しながらもやはり人とはちがうサースキをもてあますヤノとアンワラ。
    村の人々も子どもたちもサースキを排除しようとする。

    サースキの辛いところは、両方の能力を中途半端に持ち合わせていること。
    妖精のように姿を消すことはできないが、人間にはできないほど敏捷に動き回ることができ、バグパイプを教わることなく吹くことができる。
    一方、人間の感情を半分理解するもののの、半分は理解しきれない。
    ex「憎い」ってどういうこと?
    また、人間の子どもになれば忘れるよ、と言われたのに、記憶が残っていること。忘れられないことは辛い。

    そんななか荒れ地で、タムという山羊飼いの少年と出会う。
    タムはブルーマンという飲んだくれと暮らす孤独な少年。
    二人はどこか気が合い、話をする。
    タムはサースキがどこか人と違っていることを気付きながらも、一緒にいることを楽しみ、多くを語らない。

    サースキは成長とともに、妖精時代の記憶を失くし、違和感だけを抱きながら一生懸命ヤノとアンワラに好かれようと生きていくが、とうとう村人たちの憎しみがサースキに向かう。

    一番辛いと思うところは、彼女にとって居場所がないという前の段階の自分がなにものが自分でわからないところ。
    思い出すのは、幼少時におなかが痛いということを説明できなかったこと。
    どんなふうにおなかが痛いのか?と聞かれ…???
    自分が今どんな状態なのか、自分自身でしっかり理解してそれを人と共有する言葉で説明できること、ができるまで、本当に辛かった。
    そんな時期が人より長かったのだろうか?
    あの時のぼんやりとしたよくわからない状態は本当に嫌だった。

    そして、自分が人と違うと自覚してからも居場所がなくて辛いと思う。
    また愛されていないのでは?と感じることも辛い。
    子どもは取り巻く世界とつながっていると感じることができ、そのままでいいと肯定されることが大事だということがわかる。


    P166文字をつかって書くということは、心のなかに絵を描くことなんだよ。ルーンのようにね。



    取り替え子
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%96%E3%82%8A%E6%9B%BF%E3%81%88%E5%AD%90

    http://faculty.salisbury.edu/~elbond/moor.htm

  • (No.13-7) ファンタジー児童書です。

    『薬草師のベスは娘アンワラが産んだ女の子、サースキのことを不安に思っていた。アンワラの夫は鍛冶屋のヤノ。二人とも青い目なのにサースキの目は違い、しかも不思議な形をしている。生まれたばかりの頃はこんな赤ん坊だっただろうか。他にもいろいろ不審なことがある。
    手に負えないほど泣き叫ぶサースキを観察していて、ベスはこの子は妖精のとりかえ子ではなかろうかと考える。けれど何度も死産をしたアンワラがやっと授かった子なのだ。
    思い切ってアンワラとヤノに、人間の赤ん坊を取り戻すとして言い伝えられている方法を教えた。しかしその方法とは、今いる赤ん坊を火の中に投げ込んだり井戸に落とすというもの。アンワラに拒絶され、ベスはあきらめる。

    ある理由で妖精の世界から捨てられたサースキは、その時ベスの話を聞いていた。もう自分ではどうにもならない境遇を受け入れるしかない。サースキは理不尽な仕打ちに泣き叫んでいたことをやめ、人間の赤ん坊として生きようとする。そして妖精の世界でのことを忘れてしまった・・・・。』

    サースキは最初のうちは努力して人間らしくしようとしてました。でもまもなく記憶がなくなり、自分はアンワラとヤノの娘だと思い込みます。そして成長していくにしたがって村の人達との軋轢が起こるのです。村人にとっては風変わりな子。サースキは何故か他の子と同じように出来ないし、感じられない。
    救いはアンワラがともかく頑張って他の村人の悪意からサースキをかばうこと。ヤノもあまりに風変わりなわが子にいらだちながらも、結局は何とかサースキのためになるよう工夫してくれるのです。

    おばあちゃんのベスは、本当の孫を取り戻すことを忘れていませんでした。でも絶好の機会がめぐってきたとき、サースキにやはり孤独だった自分を重ねてしまいます。そしてその時からサースキの一番の理解者になったのです。

    何とか村の中で暮らしていこうとしていたサースキですが、村に不幸な出来事が起こると全て彼女のせいにされました。そしてついに緊張の糸が切れるのです。

    自分を育ててくれたアンワラがいちばん喜ぶプレゼントをしようとするサースキがいじらしくて、泣けてきました。
    妖精と人間の感性がまるで違うことがサースキには分かります。分かってもどうしようもないのですが。
    もっと辛いラストになるかと心配しながら読んだのですが、それは大丈夫でした。最後のほうはどうなるのかドキドキでしたが。

    何人かのブログでとても評価が高かったので読みました。
    読んで納得。
    すごく良かったです。

  • サースキは妖精と人間のあいだに生まれた子。妖精界で一人前になれず、「とりかえ子」として人間界に送りこまれた。けれどもちろん人間のなかでも特異な存在。小さな村で赤んぼうのころから「とりかえ子にちがいない」と後ろ指をさされながら育ってきた。そんな中でもサースキにはどこかたくましさがあり、気にかけてくれる家族もいる。やがて、たったひとりの親友と出会い、またバグパイプを手にして、体の中からわきあがる音楽を知る。だからどんなにつらくても絶望はしない。

    居場所がないつらさ、さびしさにさいなまれてはいるが、けっしていじめっ子にやられるばかりではないサースキ。心の奥に妖精本来のしたたかさや、抑えがたく荒々しい衝動がひそんでいるのがいい。運命に翻弄されるだけじゃない力強さを感じさせてくれる。

    原著は "The Moor Child"(1997)。あとがきによれば作者は『オズの魔法使い』をヒントにしたとのこと。いきなり異世界に連れてこられる話だからだろうか。どこまでも明るいオズの世界に比べると、透明な哀切さに満ちた本書はずいぶんトーンがちがうけれど、希望に満ちた結末にはどこか共通点があるのかもしれない。温かくすばらしい訳文、美しい装画も相まって、本としても完成度の高い1冊。

  • 妖精のとしかえ子と言われたサースキ、実は妖精の母と人間の男の間に生まれたハーフ。妖精の記憶を失くして人間のこのとりかえ子となったサースキは、周りから奇異の目で見られながら育つ。その変わった行動から、妖精の子周囲に詰め寄られ、苦悩する両親。心を許せた羊飼いのタムと妖精の世界へもぐりこみ、母さんの本当の子どもを探し出します。

    イギリスの昔話によく出てくる妖精のとりかえ子・チェンジリング。映画の題名になった事もあるくらいで、イギリスではポピュラーな昔話が下敷き。
    サーキスの苦悩と、とりかえ子ではないかと疑いつつも、かばい続ける両親。バグパイプやルーン文字など、イギリスらしさがあふれているけれど、アメリカの作家さんです。

  • 妖精と人間の赤ちゃんの「とりかえっ子」で,
    人間社会で違和感をもちながら…

    広い意味で「障害」タグをつけておきます.

  • 「外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック」の「3. ファンタジー・冒険」で紹介されていた10冊のうちの1冊。

  • 妖精のとりかえ子をテーマに、居場所のないサースキの孤独と、そのなかでかすかにみつける愛情の物語。半分妖精のせいで、愛や憎しみというものが最初はわからないサースキだけど、だんだん家族や村人、友人タムを通してそれを知っていく。

    おばあちゃんのベスが、理解があってほんとすてき(最初はさておき)。前半が少しだらだらとしているような気もするけど、妖精の伝説もうまく使われていて、後半にはしっかり盛り上がりがある。結末はサースキにとっては、必ずしもハッピーエンドではないところがまた切なくていい。タムがいてよかった。タムの名前は、妖精騎士タム・リンからかしら。

    読み終わったあとに、邦題「サースキの笛がきこえる」をみると、また切ない思いがこみあげてくる。原題The Moorchildより上手いと思う。

  • 妖精でもない、人間でもない。サースキはそんな異端の存在。
    人が、自分たちと違うモノを恐れ、排除しようとする、まさに差別や迫害がいかにして起こるかを、妖精というファンタジーの存在で描いた作品。ただ、そう生まれてきたから、という理由だけで迫害される恐ろしさを感じてしまう。
    この物語の救いは、まずサーキス自身が周りからの冷たい仕打ちに対し悲観的すぎず、どこかさらっとしているところ。そしてなにより、サースキを愛してくれる人たちの存在。厳しいが、いざというときはサースキの見方をしてくれる良心、サースキの正体に気がつきながら情を抱き、優しくしてくれる祖母、そしてヤギ飼いの少年。
    彼らの存在があって、サースキはひねくれることなく、まっすぐ自分の道を進む決意をするまでに成長する姿に胸を打たれる。
    サースキの両親の想いが明らかになる場面では、思わず涙…
    きれいな世界と現実世界の怖さが不思議に融合した、心に残る作品。

  • ほかの人とはちがう、と感じたことのあるすべての子どもたちにー作者



    児童文学ポスターでオススメされていたので、読んでみた。


    面白いお話だった♪

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