サースキの笛がきこえる

  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037268602

感想・レビュー・書評

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  • (No.13-7) ファンタジー児童書です。

    『薬草師のベスは娘アンワラが産んだ女の子、サースキのことを不安に思っていた。アンワラの夫は鍛冶屋のヤノ。二人とも青い目なのにサースキの目は違い、しかも不思議な形をしている。生まれたばかりの頃はこんな赤ん坊だっただろうか。他にもいろいろ不審なことがある。
    手に負えないほど泣き叫ぶサースキを観察していて、ベスはこの子は妖精のとりかえ子ではなかろうかと考える。けれど何度も死産をしたアンワラがやっと授かった子なのだ。
    思い切ってアンワラとヤノに、人間の赤ん坊を取り戻すとして言い伝えられている方法を教えた。しかしその方法とは、今いる赤ん坊を火の中に投げ込んだり井戸に落とすというもの。アンワラに拒絶され、ベスはあきらめる。

    ある理由で妖精の世界から捨てられたサースキは、その時ベスの話を聞いていた。もう自分ではどうにもならない境遇を受け入れるしかない。サースキは理不尽な仕打ちに泣き叫んでいたことをやめ、人間の赤ん坊として生きようとする。そして妖精の世界でのことを忘れてしまった・・・・。』

    サースキは最初のうちは努力して人間らしくしようとしてました。でもまもなく記憶がなくなり、自分はアンワラとヤノの娘だと思い込みます。そして成長していくにしたがって村の人達との軋轢が起こるのです。村人にとっては風変わりな子。サースキは何故か他の子と同じように出来ないし、感じられない。
    救いはアンワラがともかく頑張って他の村人の悪意からサースキをかばうこと。ヤノもあまりに風変わりなわが子にいらだちながらも、結局は何とかサースキのためになるよう工夫してくれるのです。

    おばあちゃんのベスは、本当の孫を取り戻すことを忘れていませんでした。でも絶好の機会がめぐってきたとき、サースキにやはり孤独だった自分を重ねてしまいます。そしてその時からサースキの一番の理解者になったのです。

    何とか村の中で暮らしていこうとしていたサースキですが、村に不幸な出来事が起こると全て彼女のせいにされました。そしてついに緊張の糸が切れるのです。

    自分を育ててくれたアンワラがいちばん喜ぶプレゼントをしようとするサースキがいじらしくて、泣けてきました。
    妖精と人間の感性がまるで違うことがサースキには分かります。分かってもどうしようもないのですが。
    もっと辛いラストになるかと心配しながら読んだのですが、それは大丈夫でした。最後のほうはどうなるのかドキドキでしたが。

    何人かのブログでとても評価が高かったので読みました。
    読んで納得。
    すごく良かったです。

  • 妖精のとしかえ子と言われたサースキ、実は妖精の母と人間の男の間に生まれたハーフ。妖精の記憶を失くして人間のこのとりかえ子となったサースキは、周りから奇異の目で見られながら育つ。その変わった行動から、妖精の子周囲に詰め寄られ、苦悩する両親。心を許せた羊飼いのタムと妖精の世界へもぐりこみ、母さんの本当の子どもを探し出します。

    イギリスの昔話によく出てくる妖精のとりかえ子・チェンジリング。映画の題名になった事もあるくらいで、イギリスではポピュラーな昔話が下敷き。
    サーキスの苦悩と、とりかえ子ではないかと疑いつつも、かばい続ける両親。バグパイプやルーン文字など、イギリスらしさがあふれているけれど、アメリカの作家さんです。

  • 妖精のとりかえ子をテーマに、居場所のないサースキの孤独と、そのなかでかすかにみつける愛情の物語。半分妖精のせいで、愛や憎しみというものが最初はわからないサースキだけど、だんだん家族や村人、友人タムを通してそれを知っていく。

    おばあちゃんのベスが、理解があってほんとすてき(最初はさておき)。前半が少しだらだらとしているような気もするけど、妖精の伝説もうまく使われていて、後半にはしっかり盛り上がりがある。結末はサースキにとっては、必ずしもハッピーエンドではないところがまた切なくていい。タムがいてよかった。タムの名前は、妖精騎士タム・リンからかしら。

    読み終わったあとに、邦題「サースキの笛がきこえる」をみると、また切ない思いがこみあげてくる。原題The Moorchildより上手いと思う。

  • 妖精でもない、人間でもない。サースキはそんな異端の存在。
    人が、自分たちと違うモノを恐れ、排除しようとする、まさに差別や迫害がいかにして起こるかを、妖精というファンタジーの存在で描いた作品。ただ、そう生まれてきたから、という理由だけで迫害される恐ろしさを感じてしまう。
    この物語の救いは、まずサーキス自身が周りからの冷たい仕打ちに対し悲観的すぎず、どこかさらっとしているところ。そしてなにより、サースキを愛してくれる人たちの存在。厳しいが、いざというときはサースキの見方をしてくれる良心、サースキの正体に気がつきながら情を抱き、優しくしてくれる祖母、そしてヤギ飼いの少年。
    彼らの存在があって、サースキはひねくれることなく、まっすぐ自分の道を進む決意をするまでに成長する姿に胸を打たれる。
    サースキの両親の想いが明らかになる場面では、思わず涙…
    きれいな世界と現実世界の怖さが不思議に融合した、心に残る作品。

  • ほかの人とはちがう、と感じたことのあるすべての子どもたちにー作者



    児童文学ポスターでオススメされていたので、読んでみた。


    面白いお話だった♪

  • 哀しく、さみしい、美しい物語だった。

    妖精と人間の子供として生まれたサースキ。妖精の世界でうまくいかずに、“とりかえ子”にされてしまう。
    人間の世界でもおかしな子といじめられ、うまくいかない…

    誰かが悪い訳ではなく、妖精の世界、人間の世界、ただ、少しずつ何かが違っているだけ。
    しかし、その違いのせいでサースキは妖精でもなく人間でもないものとして生きていかなければならない。

    そんな中でも、サースキを理解しようとしたり、ありのままのサースキを好きになる登場人物もいる。

    それが救いで、この物語に美しさを与えている。

    どこかで、サースキはタムと笛を吹き続けているかもと思わせるラストも美しかった。

  • 人間の赤ん坊ととりかえられた、人間と妖精の血をひくサースキ。人間でも妖精でもないサースキは、その容姿や行動からしばしば親を悩ませ、自分自身も苦しむ。結末に深い愛情を感じられる作品。

斎藤倫子の作品

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