さよなら、スパイダーマン

制作 : 中野 怜奈 
  • 偕成社 (2017年10月18日発売)
3.89
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  • 本棚登録 :39
  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037269005

さよなら、スパイダーマンの感想・レビュー・書評

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  • 5年前イスラム過激派の仕掛けた同時多発テロによる爆発で、双子の姉の一人ローズが犠牲になった。当時5歳だったジェイミーには彼女との記憶がほとんどなかったが、ショックを受けた両親は不仲になり、父親は酒に逃げ、母親は家を出てしまう。彼は姉とともに父親の仕事のために湖水地方に引っ越してきたが、新しい学校で隣の席にいたのはイスラム教徒の少女だった。

    10歳の少年が、喪失から立ち直れない家族を受け入れ、異教徒に対する自他の先入観から抜け出す過程を、彼の目を通して描く。


    テロによる家族の突然の死と、それを引き金にした両親の別れ、仕事もせずに悲しみと酒に浸る父親、転校先の学校でのいじめ……、10歳の少年には重すぎるものを背負いながら、それでも淡々と物語るジェイミーが痛々しすぎます。
    もう一人の姉ジャスが、15歳の誕生日から両親の望むローズっぽい恰好をやめました。彼女は身代わり役から自分自身になることを決意したのですが、両親はそれにも衝撃を受けて、悲しみます。気持ちはわかるけど、自分勝手じゃないかと憤りを感じるのです。

    クラスメートのイスラム教徒スーニャがジェイミーの唯一の友人となりますが、それまで彼女に友達がいなかったのは、彼女がイスラム教徒だから?現実にイギリスの学校ではそんなことは珍しくないのでしょうか?それは、テロがあったから?その前から?移民が増えたから?
    あとがきででも、そういうところに触れて欲しかったと思いました。

    家族を捨てたとはいえ、母親には最後まで子どもたちへの愛を示してほしかった一母親としては、彼女の子どもたちへの無関心さがとても辛い。


    物語の中では、スーニャの言動に突飛で理解しがたいところもあります。いきなり「わたしはスパイーダ―ガールなの」って言ったり、おそろいの指輪を彼にプレゼントしたり、最後には彼の前でヒジャーブを外してしまったり……。

    主人公は10歳。語り口も幼いので、難易度的には高学年からでもいいと思いますが、母親の不倫とか出てくるから中学生以上におススメしたいです。

  • 原題:My sister lives on the mantlelpiece
    mantelpiece=暖炉

    プランフォード・ボウズ賞2012
    Branford Boase Award
    http://www.branfordboaseaward.org.uk/index.html

    Annabel Pitcher
    https://www.annabelpitcher.com/


    中野怜奈
    http://current.ndl.go.jp/ca1887
    http://kouhou.tsuda.ac.jp/gs/ecs/message.html

    ジェイミーは10歳
    5年前のロンドンの同時多発テロの爆発で、双子の姉のうちの一人ローズを失う。

    バラバラになったローズを父は骨壷に入れて海に撒くつもりでできないでいるし、母は小さな白い棺桶に入れ、私の天使と彫った墓石の下に埋めた。でも墓地にはいかれずにいる。

    もう一人の姉ジャス(ジャスミン)はその後ずっとローズの好きだった花柄のワンピースを着せられていたが、15歳になった今では髪を切りピンクに染め、鼻ピアスをあけてる。

    父と母は娘を失くしてから、バラバラになり、母は遺族サポートサークルで出会ったナイジェルというBFができ、とうとう離婚した。
    それで今は、ロンドンから湖水地方に引っ越し、父、ジャス、ジェイミー、猫のロジャーで暮らしている。

    父はいつも暖炉の上にローズの骨壷を置き、仕事へも行かず、子どもの面倒も見ず、酒びたり。

    母はジャスの誕生日の日に出て行ったきり。
    (そのことは後からジャスによって語られる)

    ジェイミーは、記憶にないローズの死をどう扱ってよいのか分からず、家族のローズに対する気持ちもわかるようなわからないような複雑な気持ちのまま。
    新しい学校アンプルサイド英国国教会学校では、ダニエルらにいじめられる。
    クラスでであった少女スーニャ(バングラデシュ)は、ヒジャーブを被るイスラム教徒で、なにかと彼のことを気にかけてくれていた。

    ジェイミーはどうにか母に会いたいと思っているのだが、母からの連絡はこない。
    ジャスにはレオという緑の髪のBFができるが、父親にみつかり、外出禁止を言い渡されてしまう。

    子どもの世話もしない父親なのに、ジャスもジェイミーも最後の一線を越えずに、父親の悲しみを一生懸命彼らなりに受け止めている。

    ジェイミーは母に会う機会を得るため、ジェスとともにタレントショーに出ることにする。
    サッカーの試合にも保護者会にもこなかった母がその日は来てくれたが、ジェイミーはそこで誕生日のプレゼントのスパイダーマンのTシャツが母からのプレゼントでなかったことを知る。

    そしてタレントショーで家を空けていた後、猫のロジャーが帰らず、事故にあって亡くなってしまう。
    初めて死に接するジェイミー

    イギリスの移民とテロを子どもの視点で上手に描いている。ところどころ出てくるおばあちゃんのひとことも効いている

    重いテーマなのに、決して重いだけでなく、ユーモアに富んだ内容になっているが、ジェイミーが父がスーニャの母親に対して吐いた暴言に対して、大人のいうことがすべてじゃない。自分で決めていきていく、と決心したところなど、すがすがしいものがあった

    P142「母さんも、父さんにだけ髪を見せるの。ほかの男の人に見せないほうが、特別な感じがするでしょ」
    「プレゼントをあげるとき、つつむみたいに?」
    「うん、そう」

    そのとき、ヒジャーブって音楽を流しながら輪になってプレゼントをまわして、音楽がとまったときに持ってる人がプレゼントをあけるゲームみたいって思った。

  • ロンドンに住むジェイミーの姉・ローズは、テロによる自爆事件でバラバラになって亡くなった。両親とローズの双子のジャスミン(ジャス)は、なかなかショックから抜け出せないまま5年がたった。でもジェイミーは事件があった時はまだ5歳だったので、あまり実感がない。
    ローズは、半分は母親の希望でお墓に埋葬され、半分は父親の希望で火葬されツボに入れられ居間に置かれている。毎年命日になると海に散骨しようとするが、父親は散骨することができずにいる。父親は酒びたりになり、仕事もあまりしなくなってしまった。母親は、遺族サポートグループで出会った男性と一緒になるために家を出てしまう。父親はジャスとジェイミーを連れて、田舎町へ引っ越すことにする。田舎にはイスラム教徒は住んでいないだろうと思って…。
    ところが、ジェイミーは転校したクラスでヒジャーブを着けたイスラムの少女スーニャの隣の席になってしまった。
    新しい学校になじめないジェイミーは、だんだんとスーニャと仲良くなっていくのだが…。

    テロという現代的な事件をきっかけにしているが、社会にある様々な偏見や差別に子どもの生活の中から向き合っていく。そして、失ったものへの悲しみにどう立ち向かっていくのか、重いテーマながらも、ジェイミーのユニークな視線に引っ張られて読み進められる。
    でも、周りの大人の対処がどうなんだろうと思うところも多々ある。

  • 読みやすかった。
    すごい、わかるわー。
    自分の知らない人の死って、実感し辛いよね。

    「死んだ人よりも、僕を見て」って想いもわかる。
    死んだ人より生きてる人の方が大切でしょ?って。

    でもそれぞれ大切さが違うから。そういう事なんだよね。仕方ないんだよ。

    最後ネコが死んじゃうのは嫌だった…でもそのシーンがあったから、ああそっか そうなのかって思えた。
    初めて自分の大事な存在を亡くすジェイミー。

    物語の大部分で、ローズの死を悼む両親(とくに父親)を小馬鹿にしていたから、余計にキた。
    人の大切なものを悼む気持ちをバカにしていた自分。最低だ。

    スーニャはとてもカッコいい。こんな女の子がいたら、好きにならないはずないよね。

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